水際。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/350, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.
「クセ玉」の代表選手として誉れ高い^_^、この古いズミルックス35mmに以前から興味はあったが、進んで買うまでに至らなかった。それは僕は元々50mm画角を自分のフィールドにしていた事に依る。
ご縁でM9-Pとセットで譲って頂く事にした訳だが、新たなフィールドに腰を据えてチャレンジする気持ちもあったし、何より今は超高解像のSからの反動で^_^、とにかく柔らかい写真を求めていた。それには癖玉がうってつけだった。
新しい相棒はシリアルNo. 3434096、1987年産まれのドイツ製という事らしい。前オーナーの言葉からそのまま2ndと書いているが、場合によっては第一世代にカテゴライズされるかもしれない。
ほぼCG^_^(無加工)。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/30, ISO 400) ©2018 Saw Ichiro.
変態レンズには多少耐性を持っているつもりだったし、何が来ても怖くないと思っていた僕でも、特に光源が前ボケに入ってきた時のコマ収差、非点収差には度肝を抜かれた。
開放で逆光気味に撮ると見たことも無いほどのゴーストが写真を支配する。なるほどこれは手強い(笑)
逆光と絞りの実験中。夜間でもちょっとした街頭の明かりでゴーストがガッツリ出る。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/2000, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.
この程度の光源でもはっきりとゴーストが出てしまう。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/30, ISO 500) ©2018 Saw Ichiro.
しばらくf2.5のSレンズだけで頑張っていたので、f1.4が如何に有り難い事か改めて思い知らされた。よほど暗くない限り、夜でもISO400程度でほとんど問題ない。以前から所有しているf3.5のズマロン35mmは同じ環境でISO3200が必要になる。
ただこれほどゴーストが出やすいと、開放f1.4、1.7が使えるのは事実上、向かって90度以内に強い光源が一つも無いという様な、非常に限られた条件下のみとなってしまう。
一方、ハマると何とも言えない感傷的な美を写真に加えてくれる。そのメカニズムは、現代レンズのシャープネスが被写体をガン見している様な表現になるのに対して、このじゃじゃ馬は視点が定まらない感じ、眼の前の景色を見ては居るが、心の中では別の事を考えている様な描写。この偶然めいた特性により、何を撮ってもあたかも心の内面を表現したかの様な、先輩の言葉を借りれば、ある種の「詩情感」を連想させる写真に成り得る。
開放時の周辺減光も半端ではなく、僕にとっては大変ドラマチックな見え方だ。僕は主題を際立たせるために、現像時にわざと周辺減光させる事をよくやるが、このブルージーなレンズにはその必要は全く無い。^_^
熱海の車窓から。(無加工)Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/250, ISO 400) ©2018 Saw Ichiro.
ライカに限らず世の写真家は、超高解像の現行レンズで、まるで子供の頃の完璧な視力に戻った様な喜びを写真に求めるタイプと(ライカはその手の感動は手軽に得られる)、現行レンズは写り過ぎるとして、オールドに突き進むタイプと真っ二つに別れる。僕はどちらにも強い興味があるので一番タチが悪い(笑)恐らく前者の方は、ほとんど無価値な壊れたレンズと思うかもしれないこのSummilux 35 2ndが^_^、後者にとっては宝物に見えるほど、人によりモノの捉え方が多様化していて面白い。
f1.4、1.7で盛大に出現するフレア・ゴーストも、f2.0まで絞ると嘘の様に消え去る。昼間はズミクロンと思って使えば結構しっかりした描写も得られる。
絞って撮って、かつコントラスト、明瞭度をおもくそ上げた。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/4.0, 1/4000, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.
僕にとってズミルックス35 2ndは、現行レンズには見られない「ソフトフィルター」つまみがついていて、いつでも好きなだけファジー度合いをコントロール出来る、最先端の機能が搭載されているスペシャルなレンズだ(笑)
とは言え現在中古市場で20〜30万円ほどするこのレンズを求めるというのは、相当思いつめない限り敷居が高いのも事実。だって現行のズミルックス35mm ASPH.は、僕の感覚で言えば世界一の描写力を誇る35mmなのだ。(価格も世界一だが。)
これほど柔らかく撮れる35mmレンズは、現代において珍しい。電光看板をソフトボックスに利用した。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/60, ISO 400) ©2018 Saw Ichiro.
現行のSummilux 35mm f1.4 ASPH.は王道として、シリアスなライカユーザーの多くは当然の様にこれを持っていたりして、Leica MeetやJLUGの投稿写真でも最頻出レンズの一つだ。それだけレンズとしてのポテンシャルが突出している現れでもあるのだが、そこはなるべくマイノリティ側で居たい、へそ曲がりな僕と、明るいf値を欲しているM9との折り合い地点としては、2ndはちょうどよい落とし所と思った。(使いこなせるなら^_^)
レンズフード(12504)
オールド・ズミルックスのレンズ先端にはネジが切られていないため、専用のフードが必要になる。ライカ純正は例によって高価だが、幸い焦点工房の12504で作りも機構もほとんど遜色無い。使うための道具として僕はライカを所有している。フードなど乱暴に置いたりぶつけて凹ませたり、落として無くしたりするためのモノであり、銘柄が刻印された貴重なオリジナルフードなどに執着は無い。
オリジナルも焦点工房も、フードが途中で分割できる様になっていて、必要なら「シリーズ7(S7)」と呼ばれるフィルターを挟み込むことが出来る。シリーズ7とは何の事か調べてみたが詳細がよく分からず、手元のフィルターをいろいろ試したら49mmフィルターで全く問題ない事が分かった。これで保護フィルターもNDフィルターでも何でも市販品が使える。
昼間は激しいゴーストが出まくって、いくら何でもNGな感じになってしまう事が多いため、NDフィルター併用でとにかく開放!というレンズでは無い。素直に絞ればいいのだが、後述するSonnetar 73mmも偶然、同径の49mmだったので同じNDフィルターが使い回せる。
ズミルックス35mmに問題なくサングラスを装着出来た。ただしNDフィルターを装着してもゴーストが消える訳では無い。実際に運用するかどうかはガッツリ実験するまで分からない。
フードを装着すると、絞りの操作が細い隙間で行う感じになり、絞りを変える時には目視が必要になる。それでも慣れればチャカっと速攻で操作出来るのかもしれないが、ズミルックス50mm ASPH.の時と同じ作戦で行けるか微妙だ。
葉山の散歩道。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/90, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.
このレンズは上手く使いこなせないからと言って手放してしまうと、後からもう一度書い直すハメになる系の、奥の深いレンズと思った。こんな強烈な個性のあるレンズは少ないし、このレンズにしか出来ない素敵な表現がきっとある。
Summilux 35mm 2ndだけを装着して散歩した日がまだ2日くらいしか無く、慣れない35mmの画角も含め当分暗中模索が続きそうだ。たまーに使っていたズマロン35mm f3.5と、同じ絞り同士で表現がどの様に違うかも比較してみたい。
葉山 一色海岸より。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/250, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.