2019年12月11日 ichiro

LEICA NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.のテスト

ライカプロフェッショナルストア東京にて、Noctilux 75を触らせて頂いた。店内で軽く試写させて頂いただけだが、気になっていた事がいろいろ分かったので、あくまで個人の勝手な偏見と妄想と共にシェアしてみる。

Noctilux 75は高価なライカレンズ・ファミリーの中でも最高級品にあたる定価165万円というプライスが付き、重要も1055gとこちらも最も重いレンズとなる。にも関わらず、これを見なかった事に出来なくなっているのは、単にf値が明るいよね、ボケるよねとか言うずっと上位に、次の時代をリードする”何か”をこのレンズに感じずにはいられないからだ。

M9+ノクチ75の作例は世界的にも珍しいので良い機会だったが、ノクチ75の凄さが発揮される良例は撮れなかった^_^。Leica M9-P, NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.  (ƒ/1.25, 1/60, ISO 200) ©2019 Saw Ichiro.

このレンズが気になるもう一つの理由は、Leica M9だけでなくこれをHasselblad X1D IIのメインの標準レンズとして使えないか、という僕の悪巧みがあっての事だ^_^。中判のX1Dで、複数の35mm判ライカMレンズが蹴られずに使用出来る報告があちこちから上がっている。

店長の大上さん。いつも快く僕のワガママに答えて下さり、感謝の言葉しかない。ちなみにいつものズミルックスの感覚で1/60sで気楽に撮ったら、ちょっと手ブレが発生してしまっていた。Leica M9-P, NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.  (ƒ/1.25, 1/60, ISO 160) ©2019 Saw Ichiro.

Hasselblad X1D IIの最も明るいレンズ、XCD 1,9/80ももちろん僕は意識しているのだが、こちらも重量級の1044g、70万円もする高級レンズだ。僕はスペック表は参考程度にしか見ないのだが、気になるのはNoctiluxの6群9枚の構成に対し、XCD 1,9/80はなんと9群14枚!そりゃ重い訳だ。

何かを補正しようとこねくり回すほど、別の何かを失うのは録音技師の世界では当たり前で、光学系は少ない程良いというNoctilux設計者のピーター・カルベ氏に強い共感を覚える。望遠鏡の世界でも、実際ヌケの良さが格段に違ってくる。

かと言ってより軽量なXCD 3.2/90もスタジオフォトなら良いが、ストロボ無しの日常でf3.2というのは室内や夜間の撮影は絶望的だ^_^。Hシステムまで視野を広げればHC 2,8/80がもしかしたら僕のニーズに合うが、Hマウントアダプタは結構デカくて長いのでコンパクトなX1Dの魅力が若干スポイルされてしまう。ちなみにHC 2.8/80はフジノン・レンズだ。

今のハッセルは意外とレンズ選びが難しい、、、

考えてみれば、レンズ製造をカール・ツァイスに委託してきた歴史を持つハッセルに対し、黎明期より設計からガラス研磨まで自社で行ってきたLeicaに、光学系に関しては一日の長があると考える方が自然だ。

Leica M9-P, NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.  (ƒ/1.25, 1/60, ISO 160) ©2019 Saw Ichiro.

ノクチ75の作例を一見しても、一般的にはノクチ50と何が違うの?くらいの感想が多数かもしれないが、普段からライカで撮りまくって悩みまくっている側からすると、そこは確かに何かが違う。なんというか、絵に雑味が無くなったというか、ディストーションから開放されたというか、レンズが持つ独特の味付け、着色がキレイさっぱり消えた様な、そんな感覚を持つレンズに僕は初めて出会った。ほんのちょっとの違いかもしれないが、凄く正常で新鮮な成熟を感じるのだ。

Mボディよりもデカい?豪華な箱に入っている。Leica M9-P, NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.  (ƒ/1.25, 1/60, ISO 160) ©2019 Saw Ichiro.

物事のクオリティを突き詰めて行くと、スゲー解像度!など我々素人を驚かす臨界点を超えた所から、ごくごく自然な「普通」に帰結していく。硬いとか柔らかいとかそんな人為的な不完全さを超越したリアル。この「普通」が如何に到達し難い高みであるかなんて事は、技術畑で切磋琢磨した者だけの超マニアックな喜びで、一般ユーザーには関係ないと言う人もいるかもしれない。

そんな話をしながらこんな作例しか撮れず、本当に申し訳ないと思ってますw。Leica M9-P, NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.  (ƒ/1.25, 1/60, ISO 160) ©2019 Saw Ichiro.

NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.の最大の関心事は、f1.25の75mmをレンジファインダーで正確にピントが合わせられるのか?だろう。世間のレビューではレンジファインダーでは厳しいので、EVFを使いましょうとか、SL2の方が使いやすいという意見が見られるが、僕の結論はMのレンジファインダーで、全く問題無かった。

そりゃ、ズミクロンほどラフには使えないかもしれないが、普段からズミルックス開放が手に馴染んでる人なら、両者の難易度の違いはほとんど感じないと思った。同じ距離感なら物理的に被写界深度はより浅いはずで、外す確率は理論的には当然高まる。ただ50mmよりも長焦点の分、撮りたい構図的に自然と距離が離れるのでやはり言うほど難しく感じない。

むしろEVFの方が、確実にピントが合っているかどうしても拡大して確認したくなってしまうので、こういうレンズこそ僕はレンジ・ファインダーで使う方がずっと楽なのだ。

実際、視力に全く自信の無い僕が30枚ほど試写させて頂いたが、まともに外したショットは無かった。ただし、僕は1.25xのマグニファイアー付きの状態での試写だったので、これ無しだと75mmのブライトフレームの小ささにもうちょっと難儀するかもしれない。75mmを常用するなら1.4xマグニファイアーがベストマッチだろう。ところで、M10専用のマグニファイアはいい加減出たのかな?(笑)

とは言え、最短付近では被写界深度は1cm以下かも。困ったらちょっと絞ればいいだけ。今、最も旬なLeica SL2を被写体に。Leica M9-P, NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.  (ƒ/1.25, 1/125, ISO 500) ©2019 Saw Ichiro.

同じ構図で手持ちのズミルックス50 2ndで撮り比べてみた。

レンズが最短1mなのでだいぶ遠い。同じボディなのにホワイトバランスがレンズに影響を受けていたり、テーブルのラインでズミルックス特有の湾曲が分かる。Leica M9-P, Summilux-M F1.4/50mm 2nd (ƒ/1.4, 1/60, ISO 160) ©2019 Saw Ichiro.

僕の場合、ピント合わせよりもむしろ手ブレの方が難しかった。撮っている時は背面液晶では気づけなかったが、1/60では半分くらいわずかな手ブレが発生している事が後で判明。等倍で見ないとほとんど分からないが、1/90sか1/125sで使う方が安全かもしれない。それはノクチに限らず焦点距離に寄るものと思われ、Sの70mmも1/125sでも手ブレが問題になり当初は結構難儀した

カメラのフロント部だけが妙に重くなってバランスを崩した事で、手がプルプルしていたのも原因か?^_^

Leica M9-P, NOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.  (ƒ/1.25, 1/60, ISO 160) ©2019 Saw Ichiro.

ヘビー級の重量に耐えられるかどうかも大きな問題だ。Mボディ+レンズで1.7kg前後ともなると、2kgオーバーのSと比べれば気楽だが、実際首にぶら下げて半日歩くのはちょっとシンドイだろう。よしモデルを撮るぞ!という用途の方が適するのは確かだ。後でズミルックスに付け替えた瞬間、軽っ!!と驚いたw

そもそもM9にはNOCTILUX M75mm F1.25 ASPH.はオーバースペックなのは確かだが、M9でもこの新しい6ビットコードを認識している様だ。(Firmware: 1.216)このレンズの真価を発揮させるには、同様な脱個性的な成熟、進化を遂げたM10シリーズの方が相応しい気もしてきた。十分なコントラストが得られる環境でじっくり撮ってみたいなあ。

ちなみに只今ライカストアでは、24回まで無金利のキャンペーンを年末までやっている^_^頭金無しだと毎月68,000円の支払いでこの夢のレンズが手に入る。是非お気軽に立ち寄って頂きたい。

 

暗かったのでf2に留めたが、お二人共ピンが来るにはf4にすべきだった^_^ Leica M9-P, Summilux-M F1.4/50mm 2nd (ƒ/2.0, 1/60, ISO 320) ©2019 Saw Ichiro.

ごく短時間でライカを後にしたのは、その後銀座で重要なイベントがあったから。Japan Leica User Group代表の福井さんと、長年ウェッツラー本社でLeicaの技術開発に携わられてきた東さんの会食に同席させて頂いた。お二人の造詣の深さにはいつも感服するばかりだ。

Leica M9-P, Summilux-M F1.4/50mm 2nd (ƒ/2.0, 1/60, ISO 640) ©2019 Saw Ichiro.

僕の様な下民にはそれこそオーバースペックな^_^、猛烈に素敵な隠れ家的なお店だった。指紋ならぬ牛の鼻紋の血統書付きの松坂牛を楽しみながら、誠に興味深い貴重なお話をたっぷり聞かせて頂いた。望外に光栄な体験をさせて頂き、心より感謝申し上げます!

Leica M9-P, Summilux-M F1.4/50mm 2nd (ƒ/1.4, 1/60, ISO 250) ©2019 Saw Ichiro.