2020年5月12日 ichiro

Hasselblad X1D II 50cでポートレートを撮ってみた

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/90, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.

いつもお世話になっているライカの先輩方と共に、ちょっとだけ息抜きに近所に出かけてみた。モデルに協力してくれたのは以前、Leica Sでポートレートを撮らせて頂いたハーモニカ奏者のReiさんだ。ついでにLeica M10モノクローム+Apo Summicron 50Mとの比較実験もやってみた。

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/1500, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.

NDフィルターを入れて、わざとISOを1600以上に上げてみたり、いろいろテストしながら撮っているが、意外とISO100もISO1600もそれほど印象が変わらないのは、流石最新デジタルだ。先日まで先輩にLeica M240をお借りしていたが、M240ではそうはいかない。

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/640, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 200) ©2020 Saw Ichiro.

 

以前、上野のフェルメール展で最も感動した事は、人肌の「白」が恐ろしく美しい事だった。これはフェルメール本人や、同時代の画家達の作品に共通して言える事だ。想像するに彼らが一番描きたかったものは、肌の「美」そのものであり、それ以外はみんな肌色を彩る装飾とすら思った。残念な事に実物を転写した美術書ではその感動を伝える事は出来ない。

その時の感動と似たものを、僕はハッセルに感じた。もちろんモデルのReiちゃんの白い肌が絹のように美しいのはもちろんだが、X1D IIはその美を完璧なホワイトバランスで再現してくれる。これはLeicaに対しX1Dの最大のアドバンテージかもしれない。

ただし、これはHasselblad付属のPhocusアプリ上でRawファイルを見た時限定であり、PhocusからJPGなりTIFFなりで書き出すと、その発色が興ざめなほどに退色してしまう。つまり、オリジナルのRawファイルをPhocus上で展開した時しか楽しむ事が出来ないw。

ちなみに上の写真は左がRawストレート現像で書き出したJPG、右がPhocus画面のRawを並べてMacでスクショを撮り、そのスクショPNGをJPG変換したものだ。もちろんこの状態も根本的な画質劣化は避けられないが、それでも左右の差は見て取れる。つまり、Phocusのエクスポート機能に問題があるという事だ。発色だけでなくコントラスト低下もはっきり分かる。ここがハッセルのWEB上の作例の多くが、どうも眠い感じになってしまう原因だろう。これは勿体無い!

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/500, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/350, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.

ちなみに今回は、ようやく米国から届いたTiffen ブラックプロミスト1/8フィルターを使用している。わずかにコントラストを低下させ、微細な肌のテクスチャーを和らげるとともに、ほのかなフレア感で人物を美しく見せてくれる。解像し過ぎるXCDレンズにピッタリで、全てのショットで付けっぱなしだ。

ハリウッド映画ではこちらが多く使われている様だが、驚くほど高価だ。

両者を比較したサイトがいくつかあるが、個人的にはTiffenで全然OKと思った。

ケンコーからもブラックミストフィルターは販売されているが、こちらも買ってみたが効果が大き過ぎて、あらかさまにソフトフィルター然としてしまう。なんで1/4、1/8を作ってくれないのだろう。日本では効果が分かりやすくないと売れないのかな?

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 400) ©2020 Saw Ichiro.

この辺りから、写真からもらったインスピレーションに任せて、好きにいじってる(^^)

ここで少しX1D II + XCD90とM10M + Apo Summicron 50の比較を載せてみる。ハッセルはPhocusにてモノクロモードをオンにしただけのRawストレート現像。ライカはCapture OneにてRawストレート現像だ。

まずは絞り開放同士、XCD90はf3.2、アポズミはf2.0だ。ISOは全てベース感度を使用。左がX1D II、右がM10Mだ。

左:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/30, ISO 100)

右:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/125, ISO 160)

同じ位置からの撮影だが、開放がf3.2のハッセルの方が被写界深度がずっと薄い事が分かる。

ちなみによりXCD90に画角の近いSummilux 75mm f1.4の描写。

LEICA M10 Monochrom, Summilux 75mm/f1.4 (ƒ/1.4, 1/180, ISO 160)

75mm f1.4となると、中判90mm f3.5よりもボケ量がほんのわずかに多いか?

今度はf8.0同士。

左:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/8.0, 1/6, ISO 100)

右:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/8.0, 1/12, ISO 160)

今度は人物比較。ライカ判68mm相当のXCD90の方が被写体が大きく映る分、アポズミは同じ程度になる様に近づいてみた。

 

左:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 100)

右:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/2000, ISO 160)※若干露出をプラス補正した。

これらの実験では、X1D IIからNDフィルターもブラックミストも外している(はずw)。ライカ判とは縦横比が異なるため、画面半分を均等に配置するとこうなる。

そして同じ距離からのアポズミ50mmはこんな感じ。

LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/1500, ISO 160)

こちらも若干、Capture Oneで露出をプラス補正している。

ちなみに上のハッセルと近づいたライカの拡大イメージ。

まあ、解像度対決はもはや違いが分からないし、どうでもいっか(笑)ほんのちょっとした事なのだが、ライカ・レンズの方が描写に優しさや潤いを感じさせる辺りが、ライカレンズの美徳だ。解像度的にはもちろんどちらも必要十分で、むしろほんのわずかな手ブレやピンズレの影響の方がずっと大きい。しかしこの比較実験、それぞれ書き出して管理するのが結構大変。

今度はクルマ比較。モデルさんも居たし結構テキトーだが(^^)、一応三脚を立てて同じ場所から撮ってみた。

 

上:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/4, ISO 100)

下:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/12, ISO 160)

と、こんな結果になった。僕が日頃感じていたライカ判&50mmのパース感は若干感じるものの、これはとてもオタクな意見。なんで中判でクルマを撮るとカッコよく見えるのか、いくら眺めても明確な表現が思いつかない。まあライカでも75mm以上のレンズで同じカタチで撮れるはず。

結論。どっちも最高、どっちでもいい。(笑)それぞれのユーザーは、敢えてもう一方を入手する必要はあまり無いんじゃないかな。カラー派には、M10Mと同じセンサーを搭載するであろう次期カラー機、M11も期待大だ。

XCD90は、Apo Summicron50の半額以下というコスパを考慮に入れなくても、やっぱりとても優秀という事がよく分かった。100万円のライカの究極のレンズに全然引けをとらないのは、凄い事だ。逆にこんなにデカイ中判センサーを搭載するX1D IIに、一歩も譲らない35mm判のM10Mにも拍手を送らなければならない。

貴重な実験をさせて頂き、ありがとうございました!

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/500, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.

 

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/60, ISO 400) ©2020 Saw Ichiro.

 

X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/125, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.

LEICA M10 Monochrom vs Hasselblad X1D II 50c
Hasselblad X1D II 50cがようやくムービーに対応!

Leicaのススメ

ライカを買いたくない人は、読まない方がいいやつ

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Leicaオーナーになるということ

このブログに訪れて下さっている方の中には、まだLeicaを所有していないが、実際ライカってどうなの?と興味がある方も多いと思う。もしも今日、貴方は念願のLeicaを手に入れたとする。その日は恐らく、何ヶ月経っても、何年経ったとしても、貴方にとって忘れられない一日になるに違いない。

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Leica Mの機種別・メリットとデメリットまとめ

最初は誰しも「ライカ+自分」の実験段階から始まる。もう少し発展すると、次第に「自分+ライカ」つまり道具の恩恵にあやかりつつも、主体は人間である事を意識する様になるし、またそうあるべきだ。最後は「自分+カメラ」、もはやライカであるかどうかは重要では無い段階に、至らなければならないと僕は思っている。

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世界で最も愛されるカメラ(改定)

世界で最も投稿されているカメラをFlickrのカメラファインダーで見てみると、本日付けでダントツでiPhoneだ。2位がキャノン、3位ニコン、4位SAMSUNGのギャラクシー、5位のソニーと続く。フジは7位でライカは15位だった。

Leicaレンズの話

レンズ選びの参考になるかも

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今度はSummilux 50mm F1.4 を考え直してみる

ズミクロンを押した直後に恐縮だが^_^、先日のJLUGの集まりで先輩方のレンズを触らせて頂いた勢いで、久しぶりにズミルックス50を購入してしまった。初代と現行第4世代を経て、今回は第2世代を選んだ。そして悟った。やっぱズミルックス50はむちゃくちゃ面白い!

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「ライカを買いたいが何がオススメか」と問われたら、ほとんどのライカ・ユーザーは、待ってましたとばかりに、うざいくらいにウンチクを披露しながら懇切丁寧に教えてくれるはずだ(笑)僕も含め、普段からそんな事ばかり考えてる連中だ。

ピーチ先生の構図の添削

ピーチ先生にichiroの構図のダメさをボコボコに指摘されまくるシリーズ。電子書籍も販売中(^^)

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ご報告:ピーチ先生の「構図の添削」が電子書籍になりました^_^

皆様、お元気ですか?実に5ヶ月ぶりに記事を書いてみている。この間、写真遊びを若干控え、ちょっと仕事なんかしていたが^_^、その中でもいろんな事があった。愛機のLeica S-Eに小さなCCDトラブルがあり、ドイツ行きになり3ヶ月間フジXで頑張っていた事、仕事の関係で久しぶりに渡米し、NYで少し写真を撮った事、そしてマッハ新書から、ピーチ先生の「構図の添削」を出版させて頂いた事だ。

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構図の添削3

JLUGで普段からお世話になっている小山 裕之さんが、ピーチ先生の構図の添削を受けてみたいと謙虚に仰って下さった^_^。3枚の素敵なお写真をお預かりしたので、御本人の許可を頂きこちらで一緒に考えてみたい。

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構図の添削2

前回のピーチ先生の構図の添削が思いのほか好評で^_^、むしろベテラン勢の面々が面白がって下さる様だ。敬愛する先輩諸氏から続編をやれと仰せつかったので、今日は一枚に絞って書いてみる。この一枚を改善するとしたら、貴方ならどう処理してOKとするだろうか。

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構図の添削

先日、構図改善大作戦でちょっと紹介したが、最近の僕の写真が現役デザイナーにどの様に指摘されたか、いくつか例題を出してみる^_^。まずは写真を貼って、その次に構図の添削付きを順番に並べるので、答えを見る前にどこを改善すべきか、是非貴方も僕の駄作を添削してみて欲しい。

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オーナーは教えてくれない、ライカは実は超カンタンな件

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いよいよ仕事が忙しくなってきたので、またこのブログに現実逃避することにする(笑)この秋に手放したHASSELBLAD 50周年記念 500C & Makro Planar CF 120mm F4 T*で撮った最後のフィルムの現像が上がって来た。現像に出そうと思いながら数ヶ月間、使用済みフィルムをバックに入れたまますっかり忘れて持ち歩いていたら、カビが生えてしまった(笑)。それだけM10が面白かったとも言える。汚らしいのでアンダーにして誤魔化す。

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写真に向き合う人のための登竜門

いろんな人からイイこと聞いたり実験したりしたのでシェア

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写真は「滅びの美学」

以前、友人が教えてくれた「貴方は何のために写真を撮るのか」の中に多くのヒントがあったのだが、それでも僕の足りない頭では未だモヤモヤしていた。ところがある日、美輪明宏さんの美しいお言葉の中に、僕の知りたかった答えの全てがあったので是非ここでご紹介したい。

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世界に羽ばたけ!LFI、Leica Meet(最終回)

何かのセレクションに入選したり、いいねを頂いたりするのはとても嬉しいし、光栄な事だ。しかしいいねを獲得する事自体が、写真を撮る目的になってはならないと僕は思っている。クライアントが喜ぶ作品が求められる商業写真家と違って、我々写真愛好家は、自分のためだけに写真を楽しんでいい特権がある。

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貴方は何のために写真を撮るのか

「何のために写真を撮るのか?」「何を撮りたいのか?」
貴方はこの問いに、なんと答えるだろうか。
今日は僕にとって、また写真愛好家にとってとても大事な事を教わったので、是非ともここで共有したい。

カメラ機種別・記事まとめ

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Sigma fpL

L1020739

Hasselblad X1D II

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Leica S

M9-P

Leica M9

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Leica M Typ240

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Leica M10

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道具編

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天体観測

LEICA M10 Monochrom vs Hasselblad X1D II 50c
Hasselblad X1D II 50cがようやくムービーに対応!