2021年9月14日 イチロー

双眼望遠鏡APM120の奮闘改造記

去年注文した90度対空双眼望遠鏡、APM120がドイツと日本を二往復して、ようやく手元に届いた。その間、10cm口径のAPM100まで送って頂いたり手厚くフォローして下さった国際光器さんを始め、イチローのわがままのせいで、多くの方に大変なお手数とご迷惑をおかけしてしまった。お陰様で最高のBINOになった。改めて感謝申し上げます!!

なので今日は、人様には全く推奨出来ない話を書く(笑)

問題の発端は、超広角アイピース、テレビュー社のイーソス13mmを意地でもAPM120で使いたいとイチローが言い出した事から始まるw。(前回の記事で詳しくご紹介している。)

イーソスの2インチスリーブが邪魔をしてピントが来ないだけで、ここさえ切断すれば夢の組み合わせが実現すると、イチローのいい加減な計算の元、最初は簡単に考えていた。しかしイーソスは一本9万円もする高級アイピースだ。失敗したら半年は深い悲しみから立ち直れない(笑)

そこで困った時はいつも救いの手を差し伸べて下さる双眼望遠鏡のレジェンド、松本さんにご相談し、様々アドバイスを頂いた。ノギスの使い方がなってないとか、有り難いお叱りを受けながらw長時間お付き合い頂き、なんとか切断に成功!切断自体は金鋸で、相手はアルミなので覚悟していたよりはスムーズに終わった。

そして切断完了してみて、無事スリーブに挿入出来たものの、なんとまだ無限遠にはピントが届かない事が発覚するお決まりのパターンw。この時点でイチローは絶望の淵に立たされている(笑)

松本さんも途中まで相談に乗ってしまった手前、引くに引けずに最後まで付き合わされる羽目になってしまった(^^)。本当にゴメンナサイ、、、

松本さんの次のアイディアは、底面も限界まで削り、さらになんとイーソス中間部を短縮すると、光路長そのものも短縮出来るとの事!2〜3mm程度までなら像質に影響しない事は分かっていると言われる。流石過ぎる!!

早速イーソス一式を鳥取のメガネの松本にお送りして、工作をお願いさせて頂いた。

この件が何度か松本さんのブログの記事にもなっていた(^^) この辺りの数枚は松本EMSサイトからの借用。

なんと6mmの短縮!こんな事が出来るお方は、世界中探してもこの方しかいないだろう(^^)

しかしここまでやって頂いても、なんとまだわずかに無限遠に届かなかった。イチローの計算はどんだけテキトーなのだ(笑)いや問題は、松本さん所有のAPM120では十分に合焦するのに、イチローの個体がNGなのだ。

アイピースのこれ以上の掘削は危険という事で、今度は対物レンズを内側に寄せる作戦に切り替えた。ネットで代理店用のアプリケーションマニュアルをみつけ出し、カニ目レンチまで買ってきて試行錯誤するも、どうやらボンドの様なモノで接着までしてあるらしく、押しても引いても対物レンズはびくともしない様だった。この作業も松本さんにかなりご尽力頂いてしまった。

ここに来て完全にお手上げとなり、国内代理店の国際光器さんにお願いして、ドイツの工場まで掘削したイーソスとBINO本体を送る事になった。本国APMの頑固オヤジ、いや社長は絶対に応じてくれないがw、幸い、APMの製造工場の方はユーザーフレンドリーで救われた。

待つこと数ヶ月を経て、無事にイチローの元に帰ってきたのであった。注文したのが昨年10月、修正版が届いたのが今年の6月末の事だった。

帰ってきたAPM120は、何事も無かった様に物凄い光路長のゆとりを持って、イーソスを使う事が出来た。APMの対物レンズの装着位置は元々かなり遊びがあって、実際、今回3台のAPM120でテストしたが、光路長が各個体により3mm以上も違っていた。よりによって、僕のが一番対物が遠かったのだ。そりゃ計算が合わない訳だ。

でもお陰でイーソス単体だけでなく、イーソスのバレルの先端に月面用NDフィルターやネビュラフィルターをつけても全然OK、2倍エクステンダー、3倍エクステンダーも全て余裕で合焦する完璧なマッチングとなっていた。

APM120とイーソス13の組み合わせで倍率50.8倍、実視界1.97°、射出瞳径2.4mmと、ディーブ・ギャラクシー散策BINOとしてまさに理想のセットだ。この場合、付属の18mmアイピースの倍率36倍よりも視界が広く、より拡大率が高く、さらにコントラストも高い。見かけ視界100°のイーソスは見渡す限り視界全部が宇宙になるため、まるで宇宙船の窓から覗いている様な素敵な体験が出来る。望遠鏡の価値の半分はアイピースで決まる。

2027年開業予定の宇宙ホテルは、ひとり一泊2,700万円らしい(笑)家族4人で一億円か。双眼望遠鏡とイーソスで地上で同じ体験が出来るなら激安じゃないか。

今回はたまたまイチローがイーソス13を所有していたので大変な騒ぎになってしまったが、APMからイーソスのコピーアイピースが販売されている。スペック的には近いので、覗いてみた事はないが最初からこちらを使う方が幸せになれると思われる。だいぶコスパもいいし(^^)

APM HDC XWA13mm100°アイピース

或いは最初から松本EMS-BINOを新調すれば、好きな2インチアイピースを制約無しにいくらでも使える自由度は何にも代えがたい。

くそ重いイーソスをAPM120のデフォルト・アイピースにするならば、今度は架台の前後、天地バランスも改造しなければならない。友人のエンジニアに架台パネルの穴開け加工を手伝って頂いた。いやはや、本当に多くの人たちのヘルプによって、このBINOは成立している。感謝!!

そして遂に完成。

アルカスイス規格のスマホ・クランプを利用する所がこのシステムの肝だ。なんでもワンタッチで好きな位置に好きなものを挟んで固定出来る、まさに一石二鳥のウェイトシステムだ。

バランス調節スライダー自体も、アルカスイスで脱着出来る様になっている。スペースに全く余裕が無いため、出来る限り薄いクランプを選んだ。

ウェイトの代わりに天体アプリと鏡筒の向きを同期するWifi発振機のNexus2のBoxを装着して、これだけでクランプ・フリーの完全バランスを達成した。よりアイピースが重くなったとしても、モバイルバッテリーなどいくらでも前方下部に追加装着出来る。

深夜の標高1,500mでは鼻息でアイピースが曇ってしまうので、天体アプリ用のiPadは鏡筒天面に載せずにサイドに固定した。iPadだけは水平回転軸だけに追従し、角度と高さは一定に保たれる。でも不必要にステーが長いので、固めでしっかりしてはいるがiPadをいじるとちょっと揺れが大きめで、改善の余地あり。

ついでに操舵ハンドルも付けた。スペースに余裕が全くなく、ギリギリの設計だがなんとかどこにも干渉せずに行けた。真夏でもダウンジャケットが必要な環境下だ。フカフカの自転車用ソフトグリップを装着する事で、素手で触っても冷たくないし、握ったまま覗いても微振動を拾いにくい。我ながらナイスアイディア(^^)。

これを使う人は全員ファインダーが必要になるはずなのに、最初から適切な場所にファインダーステーを用意してくれない所が海外製品の詰めの甘さ(^^) 両面テープがうまく行かず途中で落ちてしまうので、仕方なく金属バンドで様子を見てる。もっと良い方法ないかなあ。微妙にカッコ悪いし。

赤いバンドはUSBレンズヒーター。これが無いと夜露によって、ものの1時間で対物レンズが曇ってしまう。ほんのり温かいかな?程度なのだが、これだけで一晩中クリアな視界が確保出来る。

それからAPM120の台座の裏面に、ホームセンターで買ってきた両面テープ付き凸凹ゴムシートを貼っただけで、いきなりスライドしてBINOがズレるトラブルが一切なくなった。めでたしめでたし(^^)

以下、この工作で使用したパーツのリンク。

 

写真は「滅びの美学」
Sigma fpLでミュージックビデオ撮影に挑戦!

Leicaのススメ

ライカを買いたくない人は、読まない方がいいやつ

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Leicaオーナーになるということ

このブログに訪れて下さっている方の中には、まだLeicaを所有していないが、実際ライカってどうなの?と興味がある方も多いと思う。もしも今日、貴方は念願のLeicaを手に入れたとする。その日は恐らく、何ヶ月経っても、何年経ったとしても、貴方にとって忘れられない一日になるに違いない。

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Leica Mの機種別・メリットとデメリットまとめ

最初は誰しも「ライカ+自分」の実験段階から始まる。もう少し発展すると、次第に「自分+ライカ」つまり道具の恩恵にあやかりつつも、主体は人間である事を意識する様になるし、またそうあるべきだ。最後は「自分+カメラ」、もはやライカであるかどうかは重要では無い段階に、至らなければならないと僕は思っている。

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世界で最も愛されるカメラ(改定)

世界で最も投稿されているカメラをFlickrのカメラファインダーで見てみると、本日付けでダントツでiPhoneだ。2位がキャノン、3位ニコン、4位SAMSUNGのギャラクシー、5位のソニーと続く。フジは7位でライカは15位だった。

Leicaレンズの話

レンズ選びの参考になるかも

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今度はSummilux 50mm F1.4 を考え直してみる

ズミクロンを押した直後に恐縮だが^_^、先日のJLUGの集まりで先輩方のレンズを触らせて頂いた勢いで、久しぶりにズミルックス50を購入してしまった。初代と現行第4世代を経て、今回は第2世代を選んだ。そして悟った。やっぱズミルックス50はむちゃくちゃ面白い!

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ズミクロン(Summicron 50mm/f2)を考え直してみる

APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH.登場以降、なんとなくその廉価版的な存在になりつつあるノーマル・ズミクロン50が、今どんな意義があるのか再考してみる。ちなみにアポ50が価格コムで現在99万円、ノンアポが30万と3倍以上の価格差がある。

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ピーチ先生の構図の添削

ピーチ先生にichiroの構図のダメさをボコボコに指摘されまくるシリーズ。電子書籍も販売中(^^)

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ご報告:ピーチ先生の「構図の添削」が電子書籍になりました^_^

皆様、お元気ですか?実に5ヶ月ぶりに記事を書いてみている。この間、写真遊びを若干控え、ちょっと仕事なんかしていたが^_^、その中でもいろんな事があった。愛機のLeica S-Eに小さなCCDトラブルがあり、ドイツ行きになり3ヶ月間フジXで頑張っていた事、仕事の関係で久しぶりに渡米し、NYで少し写真を撮った事、そしてマッハ新書から、ピーチ先生の「構図の添削」を出版させて頂いた事だ。

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JLUGで普段からお世話になっている小山 裕之さんが、ピーチ先生の構図の添削を受けてみたいと謙虚に仰って下さった^_^。3枚の素敵なお写真をお預かりしたので、御本人の許可を頂きこちらで一緒に考えてみたい。

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構図の添削2

前回のピーチ先生の構図の添削が思いのほか好評で^_^、むしろベテラン勢の面々が面白がって下さる様だ。敬愛する先輩諸氏から続編をやれと仰せつかったので、今日は一枚に絞って書いてみる。この一枚を改善するとしたら、貴方ならどう処理してOKとするだろうか。

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構図の添削

先日、構図改善大作戦でちょっと紹介したが、最近の僕の写真が現役デザイナーにどの様に指摘されたか、いくつか例題を出してみる^_^。まずは写真を貼って、その次に構図の添削付きを順番に並べるので、答えを見る前にどこを改善すべきか、是非貴方も僕の駄作を添削してみて欲しい。

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問題は、構図だ!

いつも注釈しているがこのブログはベテランの方を対象にしていない。不器用な素人の自虐ネタを赤裸々に書いているだけだが、それなのにたくさんのベテランの方から心温かいメッセージを頂き、謝りたい気分になる(笑)今日も、写真や絵画の専門教育を受けた事の無い、僕と同じくらいの平民の方々ための、構図を改善する初歩的な方法を思いついたので^_^、自分なりに書いてみる。

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日本のライカオヤジ

最近買った写真集。”One Mind’s Eye” Arnold Newman。これが、無茶苦茶良かった。ムッチャクチャ良かった!!ブレッソンが構図の「面白さ」としたら、ニューマンは構図の「カッコよさ」だと思う。よく見れば気が付くのではなく、見た瞬間に、ひと目でカッコイイのだ。

Leica M型の使い方

オーナーは教えてくれない、ライカは実は超カンタンな件

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現代デジタル・ライカで速射性を考える

クラシック・ライカの速射性は以前、アンリ・カルティエ・ブレッソンの「晴れた日はシャッタースピード1/125s、絞りf8、距離は10feet(5m)に固定」していた逸話から考察してみたが、露出計が内蔵されている現代のデジタル・ライカで、最も合理的な方法とは何かを考えてみた。

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カルティエ・ブレッソンの教えをM10でやってみる

いよいよ仕事が忙しくなってきたので、またこのブログに現実逃避することにする(笑)この秋に手放したHASSELBLAD 50周年記念 500C & Makro Planar CF 120mm F4 T*で撮った最後のフィルムの現像が上がって来た。現像に出そうと思いながら数ヶ月間、使用済みフィルムをバックに入れたまますっかり忘れて持ち歩いていたら、カビが生えてしまった(笑)。それだけM10が面白かったとも言える。汚らしいのでアンダーにして誤魔化す。

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ライカの内蔵露出計

「だってマニュアルだしなあ」とライカに興味はあっても使いこなす自信が持てない人のために、是非ここで紹介してみたいと思っていた。実は、ライカのマニュアル露出は「超」カンタンなのだ。ライカの優れた内蔵露出計がマニュアル操作性を著しく簡単に、便利にしてくれている。

写真に向き合う人のための登竜門

いろんな人からイイこと聞いたり実験したりしたのでシェア

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写真は「滅びの美学」

以前、友人が教えてくれた「貴方は何のために写真を撮るのか」の中に多くのヒントがあったのだが、それでも僕の足りない頭では未だモヤモヤしていた。ところがある日、美輪明宏さんの美しいお言葉の中に、僕の知りたかった答えの全てがあったので是非ここでご紹介したい。

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世界に羽ばたけ!LFI、Leica Meet(最終回)

何かのセレクションに入選したり、いいねを頂いたりするのはとても嬉しいし、光栄な事だ。しかしいいねを獲得する事自体が、写真を撮る目的になってはならないと僕は思っている。クライアントが喜ぶ作品が求められる商業写真家と違って、我々写真愛好家は、自分のためだけに写真を楽しんでいい特権がある。

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貴方は何のために写真を撮るのか

「何のために写真を撮るのか?」「何を撮りたいのか?」
貴方はこの問いに、なんと答えるだろうか。
今日は僕にとって、また写真愛好家にとってとても大事な事を教わったので、是非ともここで共有したい。

カメラ機種別・記事まとめ

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Sigma fpL

L1020739

Hasselblad X1D II

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Leica S

M9-P

Leica M9

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Leica M Typ240

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Leica M10

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道具編

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天体観測

写真は「滅びの美学」
Sigma fpLでミュージックビデオ撮影に挑戦!