もう何ヶ月ぶりだろう、朝まで一抹の雲も無く乙女高原の最高レベルの空!しかも無風!!先日は忘れモノで双眼望遠鏡が全く使えず、その前もそのまた前も強風で落ち着いて観望出来なかった反動で、今日は20cmF7 BINOで脈絡無く見まくった。
山道は相当シカに怯えながら向かったが(^^)、幸い行きも帰りもシカと遭遇する事は無かった。シカが夢に出てきそうだ。(笑)
今日もどうしても夜9時まで用事があり、現地に着いた時には既に深夜12時を回っていたが、雪の上に降り立ってすぐに先日の富士のマイナス3°とはレベチと分かった。今日は準備していた完全防寒フル装備をいよいよ試す時だ!
ヒートテックインナーx2、パタゴニアの店員さんがこれが一番暖かいと教えてくれたモフモフのフリース・ミドルレイヤーの上に電熱ベスト、その上にナンガの最強ダウン。下もヒートテックインナーにモフモフミドルにダウンパンツ、あったかブーツに底敷きUSBヒーターを仕込んだ。
ホッカイロ代わりにハンドグリップ・ヒーターもポケットに入れておいた。Maxにしておくと握っていられないほど熱くなる。全身電源だらけだ。頭と顔はフードフォーマーにナンガダウン・フードの二重構成。
以前紹介した屋根空きテントを広げていないのは、今日は無風だった事と、一度広げると畳むのに地獄を見るから。(笑)確かに畳むのが難しいとレビューにあったが、レフ板と同じ要領だろ、とタカをくくっていた。ベランダで実験した時には、40分くらい格闘し途中で2回畳むのを諦めてw、ベランダ専用にしようか迷った。結局力づくでしまえたが、また同じ事が出来る自信が全くないし、ここで広げたら最後雪と泥で服が超汚れそう。
ガラス管が凍ってよく見えないので、指でガリガリ削ったていたら一度上がった(^^)
温度計を覗いてみると、なんとマイナス17°(笑)マジか、どうりで鼻水がタレ流れっぱなしな訳だw。山梨恐るべし。ここまで気温が下がると逆に楽しくなってくるがw、確かに久々にスカっと晴れて放射冷却が進むはずだ。じっくり星をやるならこの時期は標高を少し妥協するしか無いか。(乙女高原は1500m)
実は山に入るなりガソリン残量の警告が鳴って、今日はどんなに寒くても途中でエンジンをかけて暖を取る事が出来ない。携帯もろくに繋がらないし、この気温のこの時間に立ち往生したら結構ヤバい。ポータブル電源と、モバイルバッテリーx4が命綱だ。寒さの限界がすなわち撤収となる。
まずは沈みゆくメジャーな散開星団からMasuyama 26mm(1.58° x54)で流してみる。初めて双眼望遠鏡(10cmF5 BINO)で覗いて未だにその感動が脳裏に焼き付いているM37からスタート。ぎょしゃ座つながりでM36、38も木の隙間に辛うじて見える。これらはどんな望遠鏡で眺めても素晴らしい名所だが、20cmツインだとM38とそのすぐ脇のNGC1907、その周辺の賑やかな辺り一帯が最高に美しい。大好きなM46、47は既に山の影に隠れているが、M48は間に合った。
20cmツインの真骨頂はやっぱり球状星団だ。Nikon Nav-12.5HW(0.9° x112)で双眼で見るM13の迫力!それに負けないくらいM92も淡麗で美しかった。久しぶりに見るM3やM5にも圧倒された。素人のナンちゃって天文ファンがこれほどムキになって夜な夜な星を見に来るのは、やはり20cmF7 BINOが面白すぎるから。楽しめる射程圏が広いと言うべきか?実はそろそろ体力的な疲れもあったりして、南天遠征も生きている間に一度は体験してみたく、最近では15cm BINO計画からもうひと回り小型のタカハシTSA120 BINOの導入を妄想しているのだが、どんなに優れた光学系でも流石に球状星団はこうはいかないだろう。
そのあとはしし座、乙女座、かみのけ座を皮切りに、全天系外銀河祭りだ。手当り次第に、ここに書ききれないほどチェックして回った。からす座の中にある惑星状星雲NGC4361はふーん、という感じだったが、すぐ近くのNGC4038(アンテナ銀河)をたまたま通りかかって感動した。二本のアンテナまで眼視(心眼?)で見えた(気がした)。
NGC4038 & NGC4039 The Antennae Galaxies / NASA しかし恐ろしい事が起きている。この銀河に住む住民達は、自分たちの文明の終焉を覚悟しているに違いない。
それにしても今日は空がイイ。空高く上がっているM101やM51の銀河の腕が、いつになく鮮明に見える。今日イチ面白かったのはM101だった。淡いながらも大きく広がったフィボナッチ造形が美しかった。M83ももしかしたら20cmツインで初めて見たのだが、比較的低空にも関わらず腕が見えて驚いた。
見掛けの大きさと等級を意識しながら系外銀河を見て回ったのだが、長辺が4分角以下、10.0等級を切る銀河は、関東近県の空では大抵見映えがしない様だ。見栄えがしないとは具体的には、そこに存在しているのはハッキリ見えるが、さっき見た他の同等サイズの銀河と区別出来ない点で面白みが無いという意味になる。その点では複数の銀河が合体していたり、並びに個性があれば暗くても見に行く価値があるし、見事にエッジオンが細長かったり、見掛けサイズが大きければやはり魅力的な観望対象となる。
この辺を整理して、見るべき対象を番付けした全天の星図を編纂し始めてみているが、まだそれに集中して取り組めるほど時間の余裕が無い。完成は老後の楽しみにとっておくか。(^^)
アルミ羽織(^^)
途中で本気で寒くなってきたので、用意してきたイチロー自作の必殺技を使ってみた。慣れない裁縫でUSB電気毛布にアルミシートを縫い付けて、それを羽織って人間の放射冷却を効果的に抑える作戦だ。
僕の自撮りを載せようと思ったが、どうせなら可愛い方がいい(^^)。娘にモデルになってもらった。僕の裁縫は最低ランク以下で実にみっともないが(笑)保温効果は絶大だった!電源を投入すればもちろん、電源を入れなくても底冷えが止まった事がはっきりと体感で分かる。いや正確には底冷えが足だけになる(^^)
羽織を脱ぐと、裸を晒している様な感覚になるほど手放せなくなる。なんで業者さんがこういうの作らないんだろう。あっても通気性を考慮してか、アルミがメッシュ状だったりするし、しかもどれもインナー側。宇宙服バリのちゃんとしたアルミアウターがあったら僕は買うのに。多分僕以外には売れないと思うけど。(^^)
一応、みつけた。アルミはインナー側だがダウンの上からこれを着れば、同様以上の効果が期待出来る?腕までアルミ張りかどうかが一番重要だが写真からは分からない。いつも寒さは手足からやられる。質問してみようかな。
恐らく安価なアルミ・ポンチョ式であちこち洗濯バサミで留めて羽織るだけでも、効果テキメンのはず。望遠鏡も人間もホイル巻。雷が近づいてきたら危険?(^^)
ちなみに夜の写真では色が分かりにくいが、今回から20cmF7もシルバーになった。
今までの金膜も一年が経ちだいぶあちこちエントロピーが増大してきて(^^)、先月張り替えた。金膜は薄いアルミ箔一枚で破れやすかったが、今回のはアルミと布生地?と貼り合わせてあって耐久性向上が期待出来る。そして、レンズヒーターも最初からアルミの中に埋め込んで効率化も図った。今まではアルミの外からヒーターを巻いていたが、アルミで逆に熱が反射されてしまい電熱線の効果が半減、レンズの中心部だけ曇ってしまったりした。
張り替えてからまだ一度も組んで無かったので、完成形は僕も今日初めて見る。まだ見慣れないものの金色よりは馬鹿っぽくないかな?(笑)
Messier 101 (The Pinwheel Galaxy) / NASA
SkySafariの欠点をカバーする
僕はiPadで観望記録を取っているのだが、Skysafariの場合はまずは見た対象をタップして、Infoボタンをタップ→詳細メニューをタップ→新規観測を作成→xボタンで閉じるという流れが基本で、一個記録するのに5回もタップしなければならない。Skysafari Pro ver.7からはダブルタップでショートカットコマンドが並んで、計4回タップで登録出来る様にはなったが、それでも十分面倒だ。
様々な手袋を試したが、赤塩ビ板を張っているためかまともにタップ出来るグローブは未だ発見出来ていない。仕方なく指先を出せるグローブでやっているのだが、寒さで指が痛いし暗闇で自分の指がよく見えず、正確な位置をタップ出来ず何度も失敗したりして非常に煩わしい。詳しいメモをテキストで残すなどこの厳しい環境では考えられないので、あとから記録を見返してもどれがどの程度のマイ重要度ランクだったか忘れてしまう。
そこでSkysafariに記録を残す事をやめ、その代わりボイスレコーダーに喋る事を思いついた(^^)。ずっと録音しっぱなしは、後で聞き返すのに何時間も要して無駄だ。つまり如何に録音、停止、保存の操作をシンプル化出来るかがポイントになる。iPhoneのボイスメモも論外。グローブをはめたままでもRecスイッチ(押すのではなくスライド式)で即座に録音開始、喋り終わったら同じスライドで停止、保存まで一筆書きのワンタッチ。(停止ボタンを探さずに済む)ファイルに時刻も記憶、再生する時は音質はどうでもいいから内蔵スピーカーで立て続けに順番に聞けるお手軽レコーダー。これら全てのポイントを満たしたやつをみつけた。
こういうモノが3000円で買えるとは、我々はなんと素晴らしい時代に生きているのだろう。一昔前なら十倍はかかった。これなら気になったポイント、例えばNGC4564は見栄えしないがNGC4567 & 4568(The Siamese Twins)は暗いが一見の価値あり、などという自分メモを片っ端から記録を残せる。これを使わないと13等級以上の乙女座銀河団をiPadだけで整理するのはほとんど不可能に思われる。今後は真っ暗闇でオッサンが独りでぶつぶつ喋っている、いよいよヤバい光景になりそうだ(笑)喋る時以外はポケットに入れておけば凍って動かなくなる事も無いだろう。
ちなみにSkysafariにはThe Siamese Twins(シャム双生児銀河)と記載されているが、ベトちゃんドクちゃんの意味だろうか?この呼び名はエスキモー星雲等と共にNASAは使用しないと決定したそうだ。当たり前だ。不謹慎にも程がある。(現在はThe Butterfly Galaxies。)逆にエスキモーは差別用語か?
実際届いてみると写真以上に小さい。小型はウェルカムだが表示テキストも同様に小さく、今何番のファイルが再生されてるのか、あと5年もすれば僕の目では見えなくなりそう(^^)。録音スイッチONから1〜2秒後Recスタート、直ちに終了出来る。即座に録音開始出来ないのはやや残念だが、この程度ならタイムラグもまずまずクリア。ファイル名が日付時刻秒.mp3となって合理的。届いたモデルは色が写真と違って、サイドも全部黒だった。暗闇でしか使わないのでカラバリはシルバーや白系の方が有り難いが、取り敢えず僕のニーズはほぼ完璧に満たしていた。
さて、この寒さは人間だけでなく望遠鏡にもあちこち負担が出てくる。あらゆるグリスの硬いこと!フォーカサーも目幅ヘリコイドもちっとも動かないし、カメラ雲台のアルカスイスのネジが固過ぎて、手がかじかんでる事もありちゃんと締めれられない。この点、ノブ式よりもレバー式が万能である事を学んだ。
iPadもとうとう誤作動を起こし始めた。頻繁にSkysafariが落ちる。裏面を触ってみるとカキンカキンに冷えている。そろそろ限界かな?それにしてもFujifilm GFX100Sはこの気温でもまだちゃんと動く。Leica M10の動作可能温度は0°C〜+40°Cと記載されているが、GFXは-10°C~+40°Cとある。長時間では厳しいだろうが、素晴らしい。
そうそう、例のコシナ製の視度補正レンズが、Nikon TC-E2テレコン・ビノにバッチリだった。見口は約15mmと接眼径は3mm縮小し、ほんのわずかに(1°程度?)視野が狭くなる気もするが、このわずかな違いよりも恒星が完璧点像になり、フォーカスが甘い時よりさらに暗い微光星まで視認できてご機嫌だ。ようやくテレコンビノでバッチリな景色が見れる様になって超嬉しい。
右目の-2dptが成功したので、左目の-1dptも注文した。
冒頭写真(北側)に対し、南側は明らかに甲府市19万の光害の影響で空が明るく星が少ない。南を見るならやはり伊豆半島か?
当日の最後の観望が3:40にM12を記録している。その後数枚写真なんか撮って撤収、5時には現地を出発した。アクセルを踏まずに惰性で転がって山を降りたらガゾリン残量的には余裕だったが、24hガソリンスタンドを探して、結局甲府市内まで40分走らなければならず、無事給油した後も圏央道の事故渋滞にハマって移動時間に4時間半もかかってしまった。行きは2時間半なのに。やっと帰宅したのは昼10時。マジキツかった(^^)。
次回からはガソリンは必ず満タンで!この時間に受付てくれて、しかも昼過ぎまで寝かせてくれる宿など普通無いが、疲れてるし危ないしとにかく現地で少しでも寝てから帰る作戦を考えなければ。車中泊仕様のクルマに買い替え?(^^)