by Tabataさん 人様の写真をタイトル写真に使わせて頂いた。素晴らしいお写真をありがとうございます!
無計画でズボラなイチローが初めて主催してみるという、極めて危険な香りのする会がなんとか無事終了した。(^^) 延べ40名に星空をご覧頂いたが、料理長の土肥さんや、天体博士の田畑さんをはじめ、皆様の温かいご協力がなければ絶対無理だった。心から感謝!
by Kunugidaさん with Leica イチローが一生懸命20cmF7BINOを組み立て中。この時既に長距離運転直後の炎天下での肉体労働でヘロヘロ。(笑)撮影して下さったのはJLUGの椚田さん。素敵なお写真を沢山お借りしたので、遠慮なくここで紹介させて頂きます。ありがとうございます!!
「深宇宙を散歩する会」の発端は、双眼望遠鏡の世界的権威、鳥取のメガネのマツモトさんの愛機20cmF7-BINOを僕が譲り受けた事から始まる。この様な国宝を独り占めしてはバチが当たるという変な使命感の元、今まで星に関心の無かった人たちに宇宙の双眼視の楽しさをシェアしたい!という企画だ。
20cmという口径は反射式も含めれば特段スペシャルなものでは無いが、屈折式の20cmは普通は手に入れる事は難しい。屈折式こそのメリットがいろいろある訳だが、先人を探せば25cmツインという先例が国内にもあったりもするが、ともあれ20cmクラスの屈折を二本並べて双眼視するチャンスは、普通はなかなかお目にかかれない。
夏のまっさかり、7/31〜8/3。長野県は伊那の鹿嶺高原キャンプ場は、標高1800mありながら日中は想定外に暑かった。観望ポイントまでクルマをベタ付け出来ず、数十mを何往復も両手一杯運んで歩く。強烈な日差しの下でのキャンプや望遠鏡の設営は、万年運動不足のオッサンにはダイハードだった。昼間からビールを空けずにはイラレナイ。(笑)
by ichiro with iPhone。 イチロー撮影はiPhoneという、いつもの通りのやる気の無さ(^^)。飲む方に忙しくて撮影どころではなかったw。20cmF7 BINO。
仲間達や周辺のキャンパー達が、組み上がった巨大な機械式の物体を前に、皆呆れて笑う。
なにこれ!?マジ?ちょっと凄すぎ、写真は見て知ってたけど、こりゃ想像以上だ、、、
馬鹿だねー!と皆の空いた口が塞がらないこの時間が、僕は嫌いではない(笑)だって仲間に誰か一人、馬鹿者が居る方が人生はちょっと面白いじゃないか。
これは子供が撮った写真だが、前方の遠くの鉄塔の先に望遠鏡を向けてみると、、、
トンボが止まっていた(^^) これはMasuyama 26mm 54倍。トンボもまさか見られているとは気づくまい。
iPhoneをアイピースに押し当てて無理やり撮影したものだが、流石に昼間の景色に向ければ大口径2枚玉アクロマートの偽色はそれなりにある。
いよいよ初日の陽が落ちダスクタイムを迎えるが、雲が多く参加者に不安の色が見え隠れする。せっかくこんな所まで遠征したのだ。僕にとっては数あるうちの一回だが、参加者にしてみればたった一度の貴重な一大イベントだ。なんとかひとときでも最高の空を見せてあげたい。
本州は高気圧で覆われているはずなのに、夕方〜暗くなる時間帯は3日間とも空がスッキリしなかった。しかし22時を過ぎる辺りから空が開け初め、0時を回ると全天が抜けるパターンを繰り返した。
これはただの素人の推測だが、日中あまりにも気温が高く、日が落ちると周囲の地域全体がもの凄い勢いで放射冷却が進み夜露を発生させ、それが霧や雲になって一帯の夜空を遮る。実際、地面もビニールシートも濡れ方がひどかった。
そして22時頃、十分に気温が下がり放射冷却が地熱とバランスする頃に雲が取れ始め、0時頃には本来の快晴に戻る、これがこの時期の山のパターンでは無いか?という仮説に二日目の夜に気がついた。この仮説に基づき、3日目は夜半までは体力温存して、ビールも一缶しか飲まずに(^^)、本気モードは夜半からという作戦がバッチリハマった。夏の観望は0時からが本番なのだ!
by Kunugidaさん with Leica 初日は完全諦めモードで、カバーをかけて宴会に盛り上がっていたら、突然晴れてきて焦った。
初日、二日目は宴会パーティが主役で、それはそれで楽しかったし、普通の人はそっちの方が楽しめるかもしれないが、3日目は広場の端を陣取り、3方をタープで囲って他のキャンパーや自分達の食堂の光を遮断したり、いろいろ対策する体力的余裕があった。3日目にようやく標高1800mを活かしたガチ観望が出来たが、それを初日から出来ず御免なさい。(汗)
by ichiro with Fuji GFX100S, GF50.
「深宇宙を散歩する会」と題したが、考えてみれば双眼をちゃんと自分の目に合わせてしっかり見る事は意外と難しい。しかも鯛の塩釡!やイカ刺身の卵黄漬け、ハマグリ、カルビ焼き、ブイヤベース&リゾットなど、土肥さんが振る舞って下さる望外なお料理の数々を肴に、高原で飲み交わすのも今回のツアーの醍醐味でもある。
見えているのかいないのか良く分からない限界領域のNGC何番とかより、もっと分かりやすいメジャー天体の方が喜ばれるかなと、方針転換することにした。
by ichiro with Fuji GFX100S, GF50.
沈みゆく月から導入→土星→木星から入って、初心者さんの掴みはバッチリだ(^^)
「月見ますか?」と、50倍、100倍、200倍と倍率を上げて行って、まずは月面の山脈やクレーターを楽しんで頂く。詳細な地表構造を地球から観察出来る天体は、月以外に他に無い。20cmF7−BINOは2枚玉アクロマートだが、過去所有していた10cmアクロ、7cmフローライトや8cm3枚玉EDのどれよりも月面の高倍率が美しく見えるのは想定外だった。やはり口径が効いているのか、焦点距離が長いから?
「ぬおおおお!!」「きゃああああ」「すげえええええ!!」
観望者がちゃんと双眼視出来ているかどうかは、見た瞬間のリアクションですぐに分かる(^^) 視点が定まらなかったり、左右の光軸に不快感があると決して感動には至らない。中には触れそう〜とアイピースを覗きながら手を伸ばして天体を掴もうとする女性も居た。(^^) 双眼視の臨場感は、スペックや言葉では表せない面白さがあるのだ。
「宴もたけなわですが、土星でも見てみますか?」
「おおおおお!!!」「ほーんとだーー!!」「ワーーー!」
「木星です。ガリレオ衛星が4つ見えるよ」
「デカ!!!」「明る!!」「眩しい!!くーーーーー!!」
こんな調子でM31アンドロメダ、M13球状星団、M81、82銀河コンビ、白鳥の網状星雲やM27あれい状星雲、M57リング星雲や射手座周辺のM8〜16、17、20を中心に、夏の風物詩とも言うべきメジャー天体コースは一通りお見せする事が出来た。網状星雲はノーフィルターで楽勝だったが、分かりやすい様にUHCフィルター付きでお見せした。
by Tabataさん この日のために魚眼レンズを新調されたとの事!涙
これらより難易度の高い対象、例えばM33を見せて「ほら、じーっと見ていると大きく回転しながら伸びている銀河の腕が見えるでしょ?」と伺っても、なかなか難しい様子だった。NGC7293「神の目」も瞳の中心の黒を初めて観察する事が出来たが、確かに淡い。一度タバコに火を付けるだけで瞳孔が閉じてしまいしばらく何も見えなくなる。ターボライター必須だ。
難物は見る側に絶対に見てやるという意思を要するが、ここら辺に闘志が湧いてくると俄然楽しくなってくる。(^^) そうなると見たい対象は無数にある。見えるか微妙なマニアックな天体は、こっそりイチローだけチラ見して、皆様にはパスさせて頂いた。(笑)
パンスターズ彗星 (C/2017 K2)は、空が開けた頃には残念ながら地表に潜ってしまって見れなかった。強いご要望のあったISS国際宇宙ステーションもうまく導入出来なかった。早く見ないとISSはもうすぐ役目を終えて、2031年に太平洋の真ん中に落下する運命にある。
M16 天地創造の柱。
射手座のM8干潟星雲、M17オメガ星雲は見え方がとてもハッキリしていて、周辺に至るまでかなり詳細なガスの広がりや暗黒帯を楽しめる。しかしすぐ上のへび座のM16わし星雲は、星雲部分の濃淡は見えるものの、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した暗黒星雲の先端部分の「創造の柱」は、60cmドブソニアンの先輩は以前、眼視で見えたと仰っていたが20cmツインではどんなに目を凝らしても眼視ではよく分からなかった。
しかしそれにしても、夜半過ぎは連日物凄い空だった。大気が安定していて星が全く瞬かない!
by Kunugidaさん with Leica
初日の夜半過ぎも、常に冷静沈着な田畑さんが珍しく興奮気味に「イチローさん!ちょっと見て下さい!!」と3枚玉10cmEDの恐ろしく高解像な木星を見せて下さった。確かにこんな木星見たこと無い!なんと田畑さんも過去一と仰った。みんな寝てしまった後だったので、これをお見せ出来なかったのは残念。
by Kunugidaさん with Leica。 田畑さんの愛機、3枚玉アポのFounder Optics FOT104。
20cm双眼で眺める惑星も負けじと劣らず見事だった。土星のカッシーニの空隙もバッチリ見えるし、アクロマートでも木星の縞模様のうねりの詳細が見える事を初めて知った(^^)。太陽系なら神奈川県でも見れるとタカをくくっていたが、高山ではやはり見え方が違う。
僕自身は松本式双眼望遠鏡は10年くらい愛用しているし双眼視には慣れ親しんでいるつもりだが、暗い宇宙で高いコントラストのおかげか、やたら惑星が大きく見えた。木星の輪郭にちょうど重なっていたエウロパが、数人ローテーションする間に木星の前を横切り、衛星の公転速度の恐るべき速さも初めて実感した。木星の直径は地球の12倍あるので、エウロパはとんでもないスピードですっ飛んでいるはずだ。
ちなみに時速300km/hの新幹線で木星を目指すと、最も地球と接近するタイミングでも220年かかる。それをまるですぐ側で見ている様な景色を地上から望めるなんて、やっぱり望遠鏡は偉い。
by ichiro
中でも感動的だったのは、夜半過ぎに空高く登ってきたペルセウス座の二重星団(NGC869、884)だ。周囲のキャンパー達の明かりも全て消え文字通りの静寂の中、眩しいほどゴージャスに煌めいている。届いたばかりのマスヤマ26mm、54倍で眺めるそれは、生涯忘れられないほどの美しさだった。二重星団は毎年飽きるほど見ているが、もちろん過去最高。これぞ標高1800m x 双眼望遠鏡の至福の瞬間だ。これを初日と2日目のみんなに見せてあげられなかった事が何より悔やまれる。
前回のパワーメイト作戦で32mmの見やすさがイマイチだったかな?と思ったが、今回は終始26mmと、パワーメイトx2を中心に使った。みんな見た瞬間に声をあげていたので、初心者でも問題ない見やすさがあると言って良さそうだ。
by ichiro with iPhone 左はZeiss 50mm BINO、右は20cmF7 BINO。
日が登ると暑くて朝寝坊出来ない事や、普段ほとんど体を動かしていない事も災いして体力的に結構キツかった。疲れが溜まって、2日目の夜などはまあまあ呑んでいた事もあり、不覚にも満点の天の川を尻目に深夜1時に主催者がダウンしてしまったし、最終日も2時過ぎには力尽きた。(その後の最低限の片付けに一時間また汗をかくので、就寝はそれから2時間後となる。望遠鏡はカバーをかけて出しっぱなしだが、動物が漁りにくるのでみんな寝た後の食堂の片付けが大変(^^))
昼夜の気温差も激しく、昼間は顔の皮が剥けるほど日焼けするのに、特に2日目以降は夕食後にはダウンジャケットが必要だった。こりゃもっと寒い時期の方が、防寒すれば良いだけなのでむしろ楽だ(^^)。
by ichiro with iPhone
初日から全日ご参加下さり、連日昼夜問わず素晴らしいご馳走を振る舞って下さった土肥さんも絶対お疲れのはずなのだが、彼は決してそうとは言わない。むしろ誰よりも星に対する情熱をお持ちだった。(^^) 料理の腕前だけでなく日本人なら誰でも知っているメジャー・アーティストのアレンジを多数手掛けるTHE仕事人の御仁だが、やはりどういう訳か、音楽を愛する人で星に魅せられる方が多い。
by Kunugidaさん with Leica. 放射冷却を抑えるために、頑張って黒アルマイトを削り落としたシルバーZeiss 50mm BINO。
最終日のガチ観望では、彼がZeiss 50mm BINOを自在に操り、ガンガン面白い物を発見しては他の参加者に見せて下さっていた。実は遠征にZeiss50まで持ち込んだのは初めてで、このカッコいい小型BINOを今までちっとも活躍させてあげられていなかったので、とても嬉しい。彼をこのまま天体の世界にどっぷりと引きずり込む作戦だ。(^^)
by Tabataさん
今日この時間を素晴らしい仲間たちと共有する機会を頂いた訳だが、ご縁とは、集団生物としての人間の生命の共有そのものと僕は思っている。それは参加者全員がひとつの命のグループに所属したみたいな感覚だが、でも考えてみれば、138億年前のビッグバンにより宇宙が誕生する以前は一つの点だったとするならば、我々のみならず一生懸命見ている宇宙全てが我々の一部であり、我々自身も宇宙の小さなカケラに過ぎない。
望遠鏡で空を覗く行為は、自らを省みているだけなのかも?嘘と強欲にまみれた愚かな人間の蛮行すらも、大きな愛で包み込んでくれている様に僕には見える。
by ichiro
何のために星を見るのかと問われて、僕はいつも答えられずにいたのだが、ある日、敬愛して止まない偉大なシンガー、藤野ひろ子さんが「天地明察」という日本の映画を見てイチローを思い出したとご連絡を下さった。これは彼女が教えてくれた作者のメッセージだ。
「星を見るとき人は、星に見守られている。つまり星を鏡にして彼
あまりに感動してすぐにアマゾンプライムで天地明察を2回見た(笑)座右の銘にしようと思ったが、長すぎて覚えられない(^^) これ以外にもこの映画には名言が散りばめられていた。オススメ。
by ichiro
今回のツアーはだいぶバテたが、強い日差しに輝く緑が美しかった。なんだか妙に素敵な夏の思い出として脳裏に焼き付いている。「大人の夏休み」というタイトルは土肥さんから頂いたキーワードだが、まさに言葉通りの3泊4日だった。参加者の皆様、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。
明け方には早くもオリオンが顔を出していた。もうすぐ秋だ。次回からはもうちょっと楽なプランで、もう少し少人数で気楽にやってみたい(^^)。
by ichiro