今日は一日助手席だったので、移動中ずっと車内からのスナップに興じた。Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.8?, 1/125, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.
「ライカを買いたいが何がオススメか」と問われたら、ほとんどのライカ・ユーザーは、待ってましたとばかりに、うざいくらいにウンチクを披露しながら懇切丁寧に教えてくれるはずだ(笑)僕も含め、普段からそんな事ばかり考えてる連中だ。
今日は速射性を意識してSSは固定。ライカの内蔵露出計に緩く従って、目視無しで絞りを回しまくっているためf値は特定できない。Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.8?, 1/125, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.
これからカメラを買うという人に「何を撮るのか?」と聞くベテランが居るが、それは野暮な質問かもしれない。意識の高い人はストリート!とか即答出来るかもしれないが、とくに最初は彼女だって家族だって風景だって花だって車だって、お気に入りのカメラで、何でも撮りたいに決まってる。そもそも何を撮るか最初から制約を課す必要もない。(確かにライカはマクロと動きモノには向かないが)
とりあえず被写界深度の深い35mmを勧めるパターンもあるが、僕は最初は50mmが良いと思っている。うちの娘は7歳と5歳だが、僕のSummilux 50mm f1.4で普通にピントをゆっくり合わせて上手に撮る。別に難しい事など何もない。それよりも見慣れたiPhone 28mmレンズと決定的にパースが違う方が面白いと思う。
Leica M10 + Leica Summaron-M 1:3.5/35 (ƒ/8.0, 1/125, ISO 100) ©2017 M. Nishi
『きみの写真が傑作にならないのは、あと一歩、被写体に近づいてないからだ』
というロバート・キャパの名言があるが、僕にしてみれば35mmは接近戦を恐れない勇者の道具だ^_^ 武術で言えば短刀。35mmだったらあと3歩近づかなければならないからだ。その意味では35mmはむしろベテランが使うべき画角とも言える。
僕は昔、北辰一刀流を少し学んだが、武術の世界では初心者や女性は、より敵から距離を取れる薙刀(なぎなた)が推奨される。被写体は敵では無いがw、ストリート・スナップだけで言えば、最初は75〜90mmの方が安心して取り組めるかもしれない。
井の頭通りで見かけた黄色いバイク。Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/4.0?, 1/60, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.
ノクチルックス導入を検討する
ライカの50mmの選択肢を、重量の視点で眺めてみる。まずボディ重量は、M10は660g、M240は680g。M9は585gと他に比べて100g軽い。
50mmレンズという事で僕が知ってる範囲では、ズミクロン240g、アポズミクロン300g、ズミルックス335g、フォクトレンダー・ノクトンf1.1が428g。
どうやら僕の場合、半日ホルスターで肩からぶら下げて歩く限界値は、ボディ+レンズで1kgがボーダーの様だ。M10+Summilux 995gなら我慢出来るが、M10+Nokton 1,088gはキツくなってしまう。このたった100gの差が大きいらしい。
そして問題のノクチルックスはなんと700g!M10と組み合わせるとGitzoトラベラー三脚2型4段より重い。三脚を一日中首からぶら下げて歩く事を想像してほしい。僕の結論としてはあれはM9専用。理由はM9はISO800までしか基本的に使えないから、夜間や室内では明るいレンズが現実的に必要なのと、ボディの軽さで100g相殺してくれるから。
ハマると最高に面白い絵が撮れるのは間違いないが、それでも特に電車組は相当な覚悟が必要と思う。最短撮影距離が1mなのもちょっと残念だ。超高額レンズなのでよく考えてから買うべきだ。
通りすがりの原宿竹下通り。シャッターチャンスは1秒以内だった。Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/4.0?, 1/60, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.
ズミクロン vs ズミルックス
ズミクロン50mmは、特に6bitコード以前のモデルは市場に中古が溢れかえっている。それだけ人気があり、また価値がある証拠でもある。本当に素晴らしいレンズなうえに、比較的リーズナブルだ。
ストリートスナップ派は、50mmも35mmもズミクロン一択と思う。理由は速射性を突き詰めて行くとSSダイヤルは固定、絞りはf8付近をスタートポジションとするのが、ライカの強みを最も活かせると思われるからだ。(カルティエ・ブレッソンに学ぶ)
フィルム・ライカ用としてもズミクロンと思う。理由はシャッタースピードの上限が1/1,000sだからだ。昼間はせっかくのレンズ口径が、最初から全く活かせない。(NDフィルター必須)
どうせ絞るなら小さくて軽量な超高性能レンズ、ズミクロンこそ、生涯の友になる。画面全体の均一性、湾曲の無さや周辺部の解像度など、ズミルックスより優れた点は多い。世間にはズミクロンで撮られた名作だらけだ。
一つ注意したいのは、6bitコード無しのズミクロンは、市場の買い取り価格が不当に低い事だ。僕は確か15万くらいで買ったレンズを同じ新宿マップカメラで売ろうとしたら、買取上限額が6万円と言われた。理由は市場に多く出過ぎてるからだそうだ。しかし9万円も利益取るの?
2個のレンズを並べて購入を迷う時、それぞれの売却時の買い取り価格を店員に聞くといい。親切にすぐに調べて教えてくれる。売る予定がないなら関係ないが。
となりのバイカー。ノーファインダー。 Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0?, 1/60, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.
ズミルックスの悪夢
しかしスナップ限定じゃなく、かつデジタルな人は、最初の一本にズミクロンに行くと、ズミルックスの悪夢にうなされる危険がある(笑)
よりボケてより3Dでより繊細で柔らかいf1.4のズミルックスASPH.を毎夜夢見て、数ヶ月と経たないうちにズミクロンに加え、結局ズミルックスも追加出費する可能性が高い。
しかし最初からズミルックスに行ったとしても、しばらくするときっとズミクロンも試したくなって、結局は両方買う事になるのだが(笑)どちらも新品で揃えると、それだけで80万円かかる。ああ恐ろしいライカのレンズ沼。
そうでなくても、ポートレートが撮りたいと言って75mmか90mmにも手を出し、室内は狭いとか言って35mmも買わなければならない。たまにはもっと広角という事で21〜28mmも追加して、やっぱ球面レンズとか言ってオールドを集め始めたら、もうすっかり一人前のライカマニアの出来上がりだ。
みんな、同じ道を辿るのだ。その様にライカに最初から仕組まれて居るとも知らずに。。。フフフ
帰り道。速射訓練にも飽きてきて、途中から爆睡して気づいたら家だった。Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0?, 1/90, ISO 1600) ©2017 Saw Ichiro.
ズマリット f2.5シリーズ
コストパフォーマンスが最も良いライカレンズではあるが、僕はズマリット全般にやや懐疑的だ。使った事が無いので何とも言えないが、人様の作例を見る限り、他のライカレンズと比較して発色に地味な傾向が見られると、数年前に結論付けた。
コストを抑えるなら、中古ズミクロンに行く方が無難と僕は判断したが、今改めてちょっと調べてみたら、僕の勘違いだったかもしれない。使ってみない事には分からないし、ズマリットの発色も一つの個性。いずれにせよモノクロ派なら関係ない。
f4以上絞るとみんな同じ?
ライカを愛用する、ドイツ人フォトグラファーの友人曰く、f4以上絞ればLeicaレンズはどれも等しく高性能で素晴らしいと言っていた。
下記はいずれもf8で8秒間開けた都庁展望台からの写真だが、たしかに50万円近くする現行Summilux 50mm f1.4 ASPH.と、ヤフオクで4万円で落とした1958年製のSummaron 35mm f3.5とクオリティの差を感じない。これはある意味で朗報だ。ライカは絞るならどのレンズでも良い!一応そういう事にしておく方が幸せだ。(笑)
Leica M10 + Leica Summaron 35mm/f3.5 (ƒ/8.0, 8s, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.
Leica M10 + Leica Summaron 35mm/f3.5 (ƒ/8.0, 8s, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.
Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/8.0, 8s, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.
(2017年11月18日 追記)
先日Flickrで、exploreと呼ばれる「その日の500選」に上の都庁展望台の写真2枚が入選した様だ。ロボットが自動で選んでいるという噂も聞いていたのだが、今回は関係者の方から直接インビテーションを頂いた。
しかしそのオファーに僕は気づかず、一日過ぎてからアクセプトを押したのだが、一日過ぎるとFlickrのトップページから外れて、別ページの投稿日の500選に入ってしまう(笑)それでも半日で閲覧数が1000人を超えた。ブレイクとまでは行かなかったが、普段は、仲良くさせて頂いている数十人のフォトグラファー達と地味に遊んでいるだけなので、exploreの威力は流石だ。
僕は基本的に風景はやらないし、選ばれた写真は僕が普段考えている事とは少し外れていて、なんだか複雑な気分だ。この写真は、ああ夜景が綺麗だなと思って、ミニ三脚に乗せて超お気軽に撮ったものだった^_^
以前に一度、似たようなexplore flickrのインビテーションを頂いた事はあったが、とにかく今は仕事に追い詰められながら、ちょっと(祝)気分を味わっている。担当者様、ありがとうございました。