真夜中の千鳥ヶ淵。6秒も開いたのに花びらが解像するほど、無風だった。Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/5.6, 6s, ISO 200) ©2018 Saw Ichiro.
「何のために写真を撮るのか?」
「何を撮りたいのか?」
貴方はこの問いに、なんと答えるだろうか。
今日は僕にとって、また写真愛好家にとってとても大事な事を教わったので、是非ともここで共有したい。
開口一番、友人に冒頭の質問を問われ、僕が言葉に詰まっていると、彼はこう続けた。
「イチローさんは、他の人が持っていないモノを持っている人だと思います。でも、普通の人が当たり前に持っているモノが、ゴッソリ欠落しているんですよ。」
Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/180s, ISO 1600) ©2018 Saw Ichiro.
彼の意味する所は物質的な話では無いが、僕はライカを持つ幸運に恵まれている。いろいろ照明やら装備も整いつつあるし、カメラの使い方も多少学んだ。そこに没頭するだけの、自由な時間があった。この事がどれだけ有り難い事か。でも最高峰のカメラだったり、スペシャルなレンズだったりは仕上がりに影響はするが、技術や道具は内容を引き立てるためのお膳立てに過ぎない。(いや、ここがお粗末だとそもそも見るに耐えない場合もあり得るか)
漠然としたモヤモヤした感覚だけは以前からあったが、言語化出来なければ思考は進まない。僕の欠落したモノを埋めるための^_^、僕の駄作を少しでも改善するための、彼からもらった具体的なキーワードは、これだった。
言葉にならないモノ
形にならないモノ
目に見えないモノ
そこを一番大事にしていれば多分、写真はもっと面白い。
もし、カメラの性能を誇示するための写真が撮りたいなら、これらは関係無い。でももっと写真を楽しみたいなら、これらの感覚は自分の中に先にあった方がいい。
モデルが居て、カメラマンが居る。自分のエゴを満たすのではなく、モデルは使い捨てのマネキンみたいな状態ではなく、その時、そのメンバーで成し得る最高の瞬間の発見。世の中の誰も知らない瞬間の宝探し。
物凄い自我を追求していくと、結果的には自我が消えていく状態になると彼は言う。相手も喜んで自分も面白くて、他人にも何かが伝わる、それはすごく神聖な純粋領域。そこには特別な光が宿る。
Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/8.0, 1/500, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.
そういうモノは必ず明るみに出ると思う。重要なのは、そこの熱が伝わってくる事だ。それらが宿らなければ、写真を撮る意味が無い。
失敗も含め、この事を気付いてやれれば味わえるし、気付いたって実際にできるかどうかは分からないが、それでいい。他人の評価よりも、自分の中でそれだけの想いを込めた一枚である事が大切なのだ。
この素敵なキーワードをくれたのは、友田慶輝氏。彼は写真の事について何も知らないし、僕より一回りも年齢は下なのだが^_^、いつも大事な事を教えてくれる友人だ。彼はそのうち、口もきけなくなる様な人物になると思う。Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/60, ISO 400) ©2018 Saw Ichiro.
もし冒頭の質問に、自分が楽しむため、趣味のための答えたとしても、この事を意識しながらシャッターを切れば、もっと自分に触れる機会に恵まれるに違いない。