ブログ終了宣言したにも関わらず、またこんなページを書いているのは、2018年12月8日、一足早いクリスマス・プレゼントが僕の元に届いたからだ。Leica M9-P。もはやMならどれでも良かったのが本心だが、偶然に素敵な出会いがあり、結局ここに戻ってくる運命だった。
これも一期一会、僕にとって、初めてのライカボディだったM9-Pとの再会は感慨深い。今回はSummilux 35mm f1.4 2nd付きだ。
down stairs. Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/5.6, 1/1000, ISO 400) ©2018 Saw Ichiro.
既にM9に対する想いや情報はここで散々書きなぐった気もするし、2011年に登場したM9-Pのレビューなど今更感が半端ない^_^。なのでごく端的に、今までの想いとは異なった点などを少しだけ書いてみる。なにせM10を手に入れた後も、ずっと憧れを抱いていたカメラだ。実際に手にするとどの様に心境が変化するかも、自分で自分に興味もある^_^
Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/2000, ISO 80) ©2018 Saw Ichiro.
初めてM9Pを手にした頃は後継機に対する憧れを強くする一方だったが、今の僕は知っている。M9には後継機に無い魅力がいくつかある。一つめは歴代フルサイズ・デジタルMで最軽量の580g(M9Pは600g)。
手元でいじっているだけで心地よいフィルム機のMもしかり、600gという重量はどういう訳か、手に馴染む絶妙なシックリ感がある。後継機とたった100g程度しか違わないので、恐らく金属の剛体としての外見と、持った時の感覚的なズレが無い事から来るシックリ感なのかもしれない。
もうひとつの目玉は、スリープからの起動の速さ。軽くレリーズに触れてから、間髪入れずにシャッターを切れる。当たり前の様だが、M240以降は目覚めるまで数秒待たされ、M10も大差ない。しかもライカ社にこれを改善する意思が全く見られない事が、多くのMユーザーのちょっとしたストレスになっている。
もっともM240以降では、何か撮りそうな場所に足を踏み入れた時点で予めレリーズを触っておいて、事前にスリープを解除しておく癖がつくので慣れれば問題ないが。
Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/4.0, 1/1500, ISO 80) ©2018 Saw Ichiro.
分離チャージ・シャッターモードもM9の大きな特徴だ。レリーズを切ったまま押しっぱなしにしていると静寂が続き、レリーズから指を離すと「ジー」というシャッター幕の作動音が聞こえる。機械仕掛けのクラシック・カメラ感満載の味わいだが、それよりも実用的に確かにこれは手ブレ防止に効くかもしれない。
試しにSummilux 35mmでどこまでシャッタースピードを稼げるか実験してみた。被写体が静止していて、かつ自分は椅子に座った状態なら、ほとんどの確率で1/4秒まで縦構図でも全然問題ない事が分かった。
しかし、レリーズは後継機に対して結構深く押し込む必要があり、今となっては無用にストロークが長いと感じる。この辺はやはりM240以降に成熟を感じる。
Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/4.0, 1/1500, ISO 80) ©2018 Saw Ichiro.
特に、起動の速さと軽量ボディの二点の恩恵は、改めて僕は有り難みを毎日実感しているし、この二点をもってM9は現状、ストリート・フォトに最も適したMと言えなくもない。速い、軽い、止まる。この3つのM9のキャラクターをじっくり楽しむ余裕さえあれば、M9の複数のネガティブな要素を乗り越える事ができる(はず)^_^。例えば、液晶がヒドい、バッテリーは欠陥品、連射が絶望的、ダイナミックレンジが狭いなど、、、。
逆にこれらアドバンテージを理解していなければ、かつての僕の様にごく短期間で結局、我慢ならずにM240に移行する事になりかねない。読者の方が、なんだM9が一番イイのかと誤解されぬ様^_^、文句もちゃんと書いておく必要がある。
バッテリー
バッテリーの持ちはM240はもちろん、ブライトフレームを自然光に頼ってるにも関わらず、もしかしたらM10よりも短い。しかもまだ残量が20%くらい?残ってる状態で残量が足りないエラーが出てシャッターが切れなくなる。予備バッテリーは必須だ。
この程度の問題はプログラム上、簡単に修正できると思うのだが。バッテリー保護のためと、検証不可能な体のいい言い訳をしながら、新モデルへの買い替え強制が常態化していたどこかのメーカーを思い出す^_^。
実際上、カメラが使えなくなるのなら、残量25%と表示すべきではない。
Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/16, ISO 250) ©2018 Saw Ichiro.
液晶
S-E(typ 006)の液晶は光度が明るすぎて、ノーマルのまま液晶を信じていると大間違いする罠があったが、M9Pはそういった問題は無さそうだ。標準設定で、僕が基準値としているMacレティーナ・ディスプレイの光度11個目とほぼ一致する。
ロークオリティな液晶画質については以前書いたが、拡大すると意外とピントが来てるかどうかは見れる(笑)このくらい出来たら良い事にしないと、M9と長く付き合う事は出来ない。
僕は撮影後のプレビューを1秒間にしているが、プレビュー表示させてから高解像イメージに切り替わるのに2秒近く要するため、プレビューでピントを確認する事は諦めている^_^。わざわざ液晶が省かれたM10Dが喜ばれるコアなブランドだ。外に居る限り、確認より撮る事に集中すればいい。Playボタンで画像を選んで1秒ちょっと待てば、シャープな絵を確認する事はできる。
連射
と書いたが、実際はそれ以前の問題だ^_^。バレエの発表会で娘の出番になったので、シャッターがこの場面に集中するのは当然だが、それでもシングル・ショットモードでボチボチ撮っていただけなのだが、途中から書き込み待ち状態になりシャッターを受け付けなくなった。たかだか3分ほどの出番なのだが、終盤は遂に一枚も撮れなかった。
こんな状態では、お仕事ではライカは使えないと言われても文句は言えない。よほどM9の絵に思い入れが無い限り、やっぱりM240以降が普通は使いやすいはずだ。
Fuji X-T20 + Carl Zeiss Jena 35mm 2.4 Flektogonにて、照明はiPhoneとiPad^_^。
機種別の外見的な違いなんて以前は何も知らないしどうでも良かったが、ブライト・フレームの採光窓があるM9のクラシックな佇まいは、見れば見るほどカッコいいと今でも思う。これは明確にSには無い楽しみでもある。M9に限らず、手元に置いておく機械仕掛けのオモチャとして、Mは世界中の男心をくすぐるに十分な上質さがある。もちろん、最初の晩は一緒に寝た(笑)
でも、ボディがストラップで擦れるのを防ぐサイドのプラスチックカバーは要らない。あとUSB窓も一度だけ開けて様子を見た事はあるが^_^、Mには要らないものは何もつけて欲しくない。その点、M-Eは中身がM9と同等ながら、この無用なUSBが省かれていてより合理的と言える。
それと、ボディが防塵防滴と公表される様になったのはM240からなので、神経質に捉えればM9に不安を感じる人は居るかもしれない。
葉山の散歩道2。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/750, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.
画質
毎日SDカードを取り込む時、一体M9はどんな絵にしてくれているのだろう、という楽しみが尽きない。それは単に僕がM240とM10を使っていた時期が比較的長く、M9が新鮮というだけなのだが。
後継機よりも個性が強い分、「M9様、私の写真をなんとなくカッコよくして下さい!」という様な^_^、他力本願的な興味も含まれる点が、M10とは感覚的に結構違う。
Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/180, ISO 400) ©2018 Saw Ichiro.
初めてデジタル・ライカを求める人に、やっぱり無責任にM9を勧めるのはどうかなという気持ちになってきている面もある。僕の様な、キレイな写真への興味をすっかり失い(笑)いつもダイナミックレンジを狭くするプロセスが前提となっている変人なら問題ないが、M9のCCDは白はすぐ飛ぶし黒はすぐ潰れて粘ってくれないのだ。日向と日陰とどちらかを多少犠牲にしている感覚に陥るのは、SやM10などの超ワイドレンジなマエストロ2に目が慣れてしまった故か。
この点を前向きに捉えれば、レンジの狭さはコントラストが高いのとニアリー・イコールと言えるのかもしれないし、35mm判フィルムの雰囲気を彷彿とさせる画作りとも言えるかもしれない。レンジが狭い事がM9の絵にパンチを与える要因だったというのも、逆説的な結論で個人的に嫌いではない^_^。要はモノゴトは捉えようだ。
M9で見事に美しい写真を量産する人もたくさん居て、使い手の現像の手腕が問われる部分でもある。
ちなみにこのページの作例は全て好き放題いじっている^_^。Seven years. Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/1.4, 1/90, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.
よく言われるM9のビビットなCCDカラーは単にAdobe LightroomのM9カラープロファイルに依るものだが、このページの写真は全てCapture One11で現像しているので、一般的なM9の作例とは基本的に異なると思われる。M9時代のライカにはライトルームが無償提供されていた事もあり、M9ユーザーのライトルーム使用率は恐らく90%以上じゃないかな。せっかくのM9なので、またLightroomを使ってみても楽しそうだ。
ライブビューがそもそも無いので当然ながら、Kern Macro Switar等の素晴らしい社外レンズのマクロ領域や、近接アダプター等を活かせないのも、欠点と言えばそうなる。その分沼が浅くて済むという考え方もあるが^_^。
ストラップも新調した。欧米のライカユーザーに人気のRock n Roll社だ。キプロス共和国からの発送なのに4日で届いた。
硬めで剛性が高いのでヨレにくく、縦構図でもファインダーに倒れて被さらない、でも微妙に伸び縮みするので首の負担が軽く感じるスグレモノだった。
香港のAnnie Bartonとも迷っていたのだが、こちらは気になるモノはほとんど品切れ状態だった。
伊豆の車窓から。Leica M9-P, Summilux 35mm/f1.4 2nd (ƒ/5.6, 1/180, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.
この個体は僕の手元に届く2ヶ月前、2018年10月にCCD交換&オーバーホール済みだが、M9のCCD剥離問題は、2018年12月から交換費用が20万強に上がったそうだ。M240以降にアップグレードも斡旋されている。ライカ本社でもCCDストックは泣いても笑ってももう在庫限りと聞いていたが、M9を堪能出来る時はいよいよ終盤に差し掛かっているのかもしれない。