2018年2月23日 イチロー

現代デジタル・ライカで速射性を考える


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0, 1/90, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

クラシック・ライカの速射性は以前、アンリ・カルティエ・ブレッソンの「晴れた日はシャッタースピード1/125s、絞りf8、距離は10feet(5m)に固定」していた逸話から考察してみたが、露出計が内蔵されている現代のデジタル・ライカで、最も合理的な方法とは何かを考えてみた。

ブレッソンがf8、1/125sとしたのは、f8ありきで1/125sが決まったと僕は考えている。マニュアル露出は絞りで行う方が速いため、SSダイヤルは1/125s固定。f8は彼のエルマー5cm f3.5の絞りのちょうど中間地点であり、f8で待機していれば絞りだけで明暗二段づつのマージンが取れるからだ。

f4〜f16をどれか選べと言われると、やたら選択肢が多く難しそうに感じるが、f8を中心として、太陽方向にカメラ向けるなら4クリック左に回し、日陰に向けるなら4クリック分右に回す。(半段刻みの現行レンズの場合。クラシック・ライカレンズはもっとシンプルに一段刻みだ。)ちょっと開けるか絞るか、もっと開けるか絞るかと考えると、とたんに簡単になってくる。ストリートにおいてf5.6とf8.0の被写界深度の違いなどどうでも良く、露出と速射性だけを求めた非常にシンプルな理論であった気がするのだ。

この仮説が正しいとしたら、これこそマニュアルの速射性において最も合理的な解だし、被写界深度的にもピントを外すリスクを軽減できる。しかし、このやり方だと特に現代のアスフェリカル・レンズでは全面がバキバキに解像してしまい、立体感や柔らかさと言った表現とは少し違ったものになる。


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/180, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

ズミルックスの開放、つまりf1.4は被写界深度が浅いのでストリートではピントを外すリスクは高いが、しかし狙った所にドンピシャでピンが来た時の猛烈なシャープネスとフワトロが3Dで共存する美しさには、代えがたい独特の魅力があるのも事実。三振覚悟でホームラン狙いの長嶋茂雄打法と言うべきか。

そこで僕は必殺技を考案した。「絞り回し上げ」ww、もしくはAutomatic Aperture Rotation, 略して「AAR」だ(笑)名前はなんでもいいが、とにかくライカ本来の速射性とズミルックス開放の美味しい所を、瞬時に切り替えながら両方得ようという作戦だ。


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0, 1/750, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

昼間野外の場合。まず、SSダイヤルは「A(オート)」に固定。つまり絞り優先。絞りの初期設定は開放。ISOもAuto。

普段はゆっくり開放のふんわり描写を楽しむ。そして、例えばこちらに向かって走ってくる子供など、精密なピント合わせが不可能な被写体をみつけたら、絞り回し上げの出番だ。

カメラを下ろしている状態で左手で絞りリングを掴む。この時親指をレンズの頂点、人差し指をレンズの下側を支える様に掴む。(親指と人差し指が垂直)そのまま流れにまかせて絞りリングを左に回しながら、顔の前にライカを右手で持ち上げ、親指と人差し指が水平になる時、自然とf8付近にセットされる技を会得した。(と言っても2,3回やってみただけだがw)

これで絞りの目視無しでズミルックスを開放からf8辺りに瞬時にセット出来る。タイムラグほぼゼロ。あとは通常通り、ピントリングに持ち替えて、被写界深度がカバーしてくれる事を期待して、ピントはラフで撮る。撮り終わったら開放に戻す。

結局シャッタースピードAutoに頼る訳だが、この方法の最大のメリットは、絞り開放の風合いと速射性の共存が、速攻で絞りをクルっと適当に回すだけという点に尽きる。絞りを変更した分のSSダイヤル補正を手動でやっていたらシャッターチャンスを逃すので、やはりオートに勝手にやってもらえる方が都合がいい。

ISOまでオートにする理由は、うっかり絞りを適当に回しすぎた場合、ISO100固定だとシャッタースピードAが1/60sを切ってしまう可能性があるからだ。普通はISO100、F8なら日向なら1/125sを切らないはずだが、勢いでF11とかに達して、かつ日陰にカメラを向けて撮ってみたら1/30s以下でチャンスを逃しちゃった、という事故をISO Aが防いでくれる。

開放時でも日中なら自動で常にISO100で維持されるので、昼間にISO Aは、絞らなければ実質上ISO100と同義で、何も問題無い。さらにNDフィルター装着時でもいくら絞っても安心だ。

結構よい事を思いついたと思ったが、当たり前かw

ところが、僕はほとんど無意識に常にズミルックスを開放で使っていたのだが、フィリピンの写真を改めて見返してみると、f8.0まで行かずとも、開放よりむしろf2.0辺りが良い結果が得られたのでは無いか、というショットが少なくない事に気がついた。

例えばこれ。

これも開放で撮ったが、f2.0なら右の子も十分フォーカスエリアに入ってきたと思われる。

いずれもジャスピンから微妙に外していたので、後補正で多少誤魔化した^_^。左の子はフォーカスよりもチャンスを優先した。右の子は現場ではもっとアンダーで、瞳の二重像がよく見えなかったため、頭の頂点あたりのコントラストの高い部分で適当にフォーカスした。

これも惜しかった^_^ 歩きながら片っ端からシャッターを切っていたが、これは特に彼女に気づかれる前にシャッター押したかったが間に合わなかった。構えからレリーズを切るまでに許される時間は、感覚的には一秒ちょっとくらいか。

個人的にはこのあんちゃんがフォトジェニックに感じて、完全にあんちゃんにフォーカスしたのだが、後から見ればこれではボツにせざるを得ない。(本人的にはまさか自分が撮られてると思わずに、赤ちゃんを前面に差し出してくれたw)これはF4くらいで許容範囲に入ってくるかもしれない。うん、結構ある(笑)レンジファインダーではこの辺りが、現場での咄嗟の判断が難しい。フィリピンがきっかけで、f2.0の意義を再認識したのだった。

フェイスブックのライカM10研究会で、ベテラン先輩諸氏に教わった被写界深度表。

1mの距離で開放でピントの合う範囲(m) / 被写界深度(m)

  • APO-Summicron-M 50mm f/2 ASPH. : 0.974〜1.027 / 0.053
  • Summilux 50mm : 0.982〜1.019 / 0.037
  • APO-Summicron 75mm : 0.988〜1.012 / 0.024

2mの距離で開放でピントの合う範囲(m) / 被写界深度(m)

  • APO-Summicron-M 50mm f/2 ASPH. : 1.899〜2.112 / 0.214
  • Summilux 50mm : 1.928〜2.077 / 0.149
  • APO-Summicron 75mm : 1.954〜2.048 / 0.095

3mの距離で開放でピントの合う範囲(m) / 被写界深度(m)

  • APO-Summicron-M 50mm f/2 ASPH. : 2.841〜3.178 /0.482
  • Summilux 50mm : 2.778〜3.260 /0.337
  • APO-Summicron 75mm : 2.897〜3.110 / 0.213

被写界深度・計算ページ
http://shinddns.dip.jp/

なるほど1mではたったの3.7cm。APO75mmに至っては2.4cm。ピントを合わせた後、フレーミングのためにカメラをパンニングする時に発生するコサイン誤差で、このくらいすぐに変化してしまいそうだ。2mの距離ではズミルックスf1.4の深度は15cm以下だが、ズミクロンf2.0なら人間の頭一個分くらいの深度が得られる。

となると、上の作戦をアレンジして、待機時は開放では無く、f2.0で待機しておけばOKという事になる。f1.4からf2.0に動かす場合はクリック数を数えるか、目視が必要になるが、f2.0で待機しておけば、開放で撮りたい時は右に回しきるだけで済むからだ。それに、急いでる時こそ絞りを触る時間が無い。(この考え方で行くならば、絞り回し上げ作戦も、開放待機では無くf8.0で待機すべきか。どちらの使用頻度が多いかで決めればいっか。)

この記事に掲載したフィリピン以外のショットは、実はほとんどズミルックス50mmをf2.0に絞ったものだ。今後もしばらく「ちょい絞り」を意識してみる。

ズミルックスのf1.4開放(左)とf2.0(右)。開放では奥側の瞳がアウトフォーカス気味になる。でも後ろが抜けている場面では、言うほど印象は変わらないか。(この二枚は確か若干トリミングした。)


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/180, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0, 1/125, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

では、夜や室内ではLeicaはどの様に準備しておくべきかを、考えてみる。

SS 1/60s固定、絞り開放固定、ISO Auto。

これしか無いと思われる。SSもオートにすると、最大ISOで間に合わない場面で、ライカMは人間が決めた最大シャッタースピードを勝手に割ってしまい、無理やりカメラが考える適正露出にされてしまう。手ブレ防止のため1/60sを切ってほしくないし、1/60sでオーバーしてしまう場面は夜間ではまず起きないため、事実上、1/60s固定で問題ない。

この時にISO Autoの上限を1600程度に制限しないとISO25,000とかなって、盛大なノイズと共に昼間の様に変に明るくされてしまう。見たままの明るさで撮りたい場合は、結局はISOダイヤルを駆使してトライ&エラーしなくてはならない場面も多い。昼間より夜の方がカメラの向きで露出が目まぐるしく変動するので、手動ではどうしても露出をいじる頻度と手間が煩わしい。夕刻も同様だ。

夜も「絞り回し上げ」は使えるかもしれないが、ノイズ耐性の強いM10と言えどもf4くらいまでが現実的だろう。

もっと良い案があったらどなたか教えて下さい^_^


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0, 1/60, ISO 800) ©2018 Saw Ichiro.

Leicaに似合うレザー・カメラバッグ
日本のライカオヤジ
, , , ,

Leicaのススメ

ライカを買いたくない人は、読まない方がいいやつ

20190105-L1002477-500x417

Leicaオーナーになるということ

このブログに訪れて下さっている方の中には、まだLeicaを所有していないが、実際ライカってどうなの?と興味がある方も多いと思う。もしも今日、貴方は念願のLeicaを手に入れたとする。その日は恐らく、何ヶ月経っても、何年経ったとしても、貴方にとって忘れられない一日になるに違いない。

Chico-Studio-2018-Apr-200Apr-13-2018

Leica Mの機種別・メリットとデメリットまとめ

最初は誰しも「ライカ+自分」の実験段階から始まる。もう少し発展すると、次第に「自分+ライカ」つまり道具の恩恵にあやかりつつも、主体は人間である事を意識する様になるし、またそうあるべきだ。最後は「自分+カメラ」、もはやライカであるかどうかは重要では無い段階に、至らなければならないと僕は思っている。

Screen-Shot-2017-11-02-at-12.46.02-1-500x417

世界で最も愛されるカメラ(改定)

世界で最も投稿されているカメラをFlickrのカメラファインダーで見てみると、本日付けでダントツでiPhoneだ。2位がキャノン、3位ニコン、4位SAMSUNGのギャラクシー、5位のソニーと続く。フジは7位でライカは15位だった。

Leicaレンズの話

レンズ選びの参考になるかも

DSCF0268Oct-29-2019-500x417

今度はSummilux 50mm F1.4 を考え直してみる

ズミクロンを押した直後に恐縮だが^_^、先日のJLUGの集まりで先輩方のレンズを触らせて頂いた勢いで、久しぶりにズミルックス50を購入してしまった。初代と現行第4世代を経て、今回は第2世代を選んだ。そして悟った。やっぱズミルックス50はむちゃくちゃ面白い!

L1008078Sep-19-2019-500x417

ズミクロン(Summicron 50mm/f2)を考え直してみる

APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH.登場以降、なんとなくその廉価版的な存在になりつつあるノーマル・ズミクロン50が、今どんな意義があるのか再考してみる。ちなみにアポ50が価格コムで現在99万円、ノンアポが30万と3倍以上の価格差がある。

26692014819_a62c78cd4b_h-500x417

Leicaレンズ沼の攻略法(入門編)

「ライカを買いたいが何がオススメか」と問われたら、ほとんどのライカ・ユーザーは、待ってましたとばかりに、うざいくらいにウンチクを披露しながら懇切丁寧に教えてくれるはずだ(笑)僕も含め、普段からそんな事ばかり考えてる連中だ。

ピーチ先生の構図の添削

ピーチ先生にichiroの構図のダメさをボコボコに指摘されまくるシリーズ。電子書籍も販売中(^^)

02531417af0cec820955c48596318a60-500x417

ご報告:ピーチ先生の「構図の添削」が電子書籍になりました^_^

皆様、お元気ですか?実に5ヶ月ぶりに記事を書いてみている。この間、写真遊びを若干控え、ちょっと仕事なんかしていたが^_^、その中でもいろんな事があった。愛機のLeica S-Eに小さなCCDトラブルがあり、ドイツ行きになり3ヶ月間フジXで頑張っていた事、仕事の関係で久しぶりに渡米し、NYで少し写真を撮った事、そしてマッハ新書から、ピーチ先生の「構図の添削」を出版させて頂いた事だ。

n-34033987_1650069665090430_2732127584312623104_n-500x417

構図の添削3

JLUGで普段からお世話になっている小山 裕之さんが、ピーチ先生の構図の添削を受けてみたいと謙虚に仰って下さった^_^。3枚の素敵なお写真をお預かりしたので、御本人の許可を頂きこちらで一緒に考えてみたい。

S1009240May-24-2018-4

構図の添削2

前回のピーチ先生の構図の添削が思いのほか好評で^_^、むしろベテラン勢の面々が面白がって下さる様だ。敬愛する先輩諸氏から続編をやれと仰せつかったので、今日は一枚に絞って書いてみる。この一枚を改善するとしたら、貴方ならどう処理してOKとするだろうか。

20180506-S1007200May-06-2018-500x417

構図の添削

先日、構図改善大作戦でちょっと紹介したが、最近の僕の写真が現役デザイナーにどの様に指摘されたか、いくつか例題を出してみる^_^。まずは写真を貼って、その次に構図の添削付きを順番に並べるので、答えを見る前にどこを改善すべきか、是非貴方も僕の駄作を添削してみて欲しい。

S1000823Jun_10_2018_2-500x417

問題は、構図だ!

いつも注釈しているがこのブログはベテランの方を対象にしていない。不器用な素人の自虐ネタを赤裸々に書いているだけだが、それなのにたくさんのベテランの方から心温かいメッセージを頂き、謝りたい気分になる(笑)今日も、写真や絵画の専門教育を受けた事の無い、僕と同じくらいの平民の方々ための、構図を改善する初歩的な方法を思いついたので^_^、自分なりに書いてみる。

Leica M型の使い方

オーナーは教えてくれない、ライカは実は超カンタンな件

40314546062_022cc2db7f_h-500x417

現代デジタル・ライカで速射性を考える

クラシック・ライカの速射性は以前、アンリ・カルティエ・ブレッソンの「晴れた日はシャッタースピード1/125s、絞りf8、距離は10feet(5m)に固定」していた逸話から考察してみたが、露出計が内蔵されている現代のデジタル・ライカで、最も合理的な方法とは何かを考えてみた。

38190077842_16eb7bee54_h-500x417

カルティエ・ブレッソンの教えをM10でやってみる

いよいよ仕事が忙しくなってきたので、またこのブログに現実逃避することにする(笑)この秋に手放したHASSELBLAD 50周年記念 500C & Makro Planar CF 120mm F4 T*で撮った最後のフィルムの現像が上がって来た。現像に出そうと思いながら数ヶ月間、使用済みフィルムをバックに入れたまますっかり忘れて持ち歩いていたら、カビが生えてしまった(笑)。それだけM10が面白かったとも言える。汚らしいのでアンダーにして誤魔化す。

33972243596_e33583ad3a_h-500x417

ライカの内蔵露出計

「だってマニュアルだしなあ」とライカに興味はあっても使いこなす自信が持てない人のために、是非ここで紹介してみたいと思っていた。実は、ライカのマニュアル露出は「超」カンタンなのだ。ライカの優れた内蔵露出計がマニュアル操作性を著しく簡単に、便利にしてくれている。

写真に向き合う人のための登竜門

いろんな人からイイこと聞いたり実験したりしたのでシェア

SDIM1451-1-500x417

写真は「滅びの美学」

以前、友人が教えてくれた「貴方は何のために写真を撮るのか」の中に多くのヒントがあったのだが、それでも僕の足りない頭では未だモヤモヤしていた。ところがある日、美輪明宏さんの美しいお言葉の中に、僕の知りたかった答えの全てがあったので是非ここでご紹介したい。

28186919568_845ddedf70_o-500x417

世界に羽ばたけ!LFI、Leica Meet(最終回)

何かのセレクションに入選したり、いいねを頂いたりするのはとても嬉しいし、光栄な事だ。しかしいいねを獲得する事自体が、写真を撮る目的になってはならないと僕は思っている。クライアントが喜ぶ作品が求められる商業写真家と違って、我々写真愛好家は、自分のためだけに写真を楽しんでいい特権がある。

26184088247_b2f22d2c08_h-500x417

貴方は何のために写真を撮るのか

「何のために写真を撮るのか?」「何を撮りたいのか?」
貴方はこの問いに、なんと答えるだろうか。
今日は僕にとって、また写真愛好家にとってとても大事な事を教わったので、是非ともここで共有したい。

カメラ機種別・記事まとめ

B_8442419

Sigma fpL

L1020739

Hasselblad X1D II

38981821960_ed8b90c25d_o

Leica S

M9-P

Leica M9

35285079546_b8447692cf_b

Leica M Typ240

IMG_8970

Leica M10

QS400 Test-002

道具編

B_7972

番外編

Leicaに似合うレザー・カメラバッグ
日本のライカオヤジ