僕はあくまで眼視双眼派なので、僕にとって電子観望はまだ実験であり、オマケだ。本命の双眼セットのついでに運用したいので、出来るだけシステムを小型軽量に抑えたい。ちなみに僕の天体写真の知識はゼロなので、情報収集に二週間を要した笑。
最後まで悩んだ鏡筒が、Askar FMA230とRedCat 51 II-U。FMA230は二本揃えれば超広角・双眼望遠鏡としても使えるが、RedCat 51は光路長が足りないため眼視は不可。しかし調べれば調べるほど、RedCat51は世界的に高く評価されている。
そうこうしているうちに天文ハウスTOMITAさんがタイミングよくRedcatのセールなんかやっていて、まんまと飛びついてしまった。(^^) ついでにどうせ買う事になるであろう、ASIAIR Plusも先に注文した。
なんと美しい鏡筒だろう、、、。ビルドクオリティは100点満点。その代わり、鏡筒サイズは決して小さくは無い。5cm口径だがBorg71FLより圧倒的に太くて重い。8cm鏡筒近い?これはバージョン2だが、海外ではバージョン3が出ていて望遠鏡然としたフォーカサーに変更されている様で、そちらの方が精密なピント合わせはしやすいかも。
さて、とにかく鏡筒は決まった。次はカメラだ。ASIAirを先に手に入れてしまったので、ZWO社の中から選ばなければならない。
僕の条件は、電子観望目的なのでカラーカメラ限定。さらに、どうせ写真も撮ってみたくなるに決まっているので(^^)、せっかくなら自分で撮影した天体をMacの壁紙にしたいじゃないか。という事で画素数を4Kサイズ(3840×2160 : 829M Pixel)を最低ラインとした。天体カメラは未だに1920×1080の機種が多いが、普段、中判デジタル1億画素を使う者としては、別に解像度至上主義者でなくとも、いくらなんでも余裕が無く感じてしまう。
このサイトで、焦点距離とカメラ(ピクセルサイズx縦横センサーサイズを入力する)の組み合わせで、実際の天体の対象がどれくらいの大きさで撮影出来るか具体的にシミュレーション出来る。撮りたいと思える天体のほとんどが網羅されていて大変便利だ。
https://www.blackwaterskies.co.uk/imaging-toolbox/
サイトの使い方はカネさんのYoutubeが詳しい。
ここで散々遊んだ結果、250mmの様な単焦点には、必要な拡大率を得るために積極的に小さいセンサーを選ぶ必要があると分かった。普通、デジカメならカメラとレンズ選びの順序が逆だ。
このサイトで焦点距離とピクセルサイズの検証が出来る。多くの人が電子観望に選んでいる294MCのピクセルサイズ4.63μmという数値は、250mmの場合は完全にアンダーサンプリングになる様だ。光学系の分解能をフルに活かす事が出来ない。
https://astronomy.tools/calculators/ccd_suitability
ちなみに本家ZWO社のこのページで、スペックを並べて比較できる。
https://www.zwoastro.com/compare/
これらの選別を経て585MC、678MC、183MCの3機種に絞られた。183は画素数は多いが世代が古く、アンプグローなる問題がある。585、678はそれが解決された新世代らしい。まあ電子観望用途の短時間露光ではほとんど関係ないだろう。
678MCは2μmで、分解能も申し分ない。(そして安い)ただフルウェル値が585MCに比べて格段に低く、電子観望で678MCの使用例をネット上でほとんどみつける事が出来ない。
ゲインとフルウェルについてまだよく分かっていないのだが、どうやらゲインとは、デジカメで言うISOとは少し違って、ゲインを上げると露出が明るくなるのは同じだが、上げてもISOの様に画質劣化に直結する訳では無いらしい。なので積極的にゲインは上げても良いのだが、長時間露光やゲインをおもくそ上げた時に、フルウェルが低いと明るい恒星がすぐに白飛びして肥大化したり、星の色味を失ったりM42のトラペジウム付近などが飛びやすい、つまり白飛び耐性が低い理由で、結果的に露出を上げにくい、という理解で合っているのかな?
一方、585MCは2.9μmとアンダーサンプリングギリギリだが、フルウェルも含め各スペックが押し並べて優秀。という事で、そろそろ観念して585MCを買ってみる事にした。
恐らく今年発売される、新世代スマート望遠鏡VESPERA IIが、スペック的にも価格的にも最も興味があるのだが、これに搭載されている光学系がRedCat51とほぼ同じスペックの口径50mm、焦点距離250mmだ。これのイメージセンサーに同じソニーIMX585がチョイスされていて、背中を押された。
https://sightronjapan-vaonis.com/products/vespera-ii
さて、ここまで決まったは良いが、カメラと鏡筒の接続アダプターに、何mmの何を選べばいいかが、さっぱり分からない。T2ネジって何?美味しいの?というレベルで分からないしw、どうせならワンタッチでフィルターを交換出来るフィルタードロワーも挟みたい。こうなるとネットを探してもお手上げで、スターベース東京さんに電話して、何が必要かを全部丸投げで教わった。笑 やはり専門家に聞くのが一番早い。電話の担当者さんは終始、誠実かつ懇切丁寧に教えて下さった。ありがとうございます!
結局、以下のモノをお願いする事となった。
- ZWO ASI585MC
- M42-M48エクステンダー16.5mm
- MORE BLUE TP515-M48⇒M42変換アダプター(M48オス、M42メス)
- フィルタードロワーM42-II
- フィルターホルダーII x2
アダプターはこのセット。ここには写っていないが小さいリングが一つ余ったのは御愛嬌。(^^) このフィルタードロワーがマグネットや脱落防止ストッパーまで装備していてBorgのそれよりクオリティが高い。僅かな露光漏れも許されない写真用途に相応しい。その代わり外径も太く、消費光路長も長いのでBINOにはやはりBorgのフィルターボックスが適合する。
神奈川県の光害地のベランダで遊ぶために、フィルターも3つ選んでみた。
- サイトロン QuadBPフィルター2インチサイズ(光害対策フィルターの定番。星雲星団用。)
- サイトロンIR640PROIIフィルター48mm(可視光を遮断し近赤外線を透過させる。光害地での銀河撮影用。)
- ZWO IR/UVカットフィルター2インチサイズ(上記以外の撮影に常駐)
フィルターホルダーIIには、フィルターを装着したまま収納出来るケースが付属する。完璧!それなりにコストはかかるが、フィルター交換のたびにいちいちカメラをクルクル暗闇で脱着を繰り返したくない。
おまけで、ソニーカメラにRedCatを装着して250mmレンズとして使用出来るアダプターも購入してみた。
- William Optics 48mmカメラマウント(ソニーE)
やっと役者は揃った。架台は20cm屈折ツインを乗せているTTS-160 Pantherの出番だ。こんな小さな鏡筒を乗せるのに、不釣り合いも甚だしい笑。しかし自動導入経緯台をこれしか持っていない。(隣にMak127も乗せている。)
TTS160のファームウェアもなんとか最新にアップデート出来た。Windowsがシリアルケーブルを認識出来ず、社長のNielsがMac版アップデータを送って下さり難なく完了。(毎度、速攻のサポートに感謝!)月でアライメント出来る様になっていたり、ケーブル巻き付き防止や仰角の角度リミッターなど新機能が目白押しだった。
しかし便利機能が増えた分、様々な設定項目が加わり、TTSが今までの様に動いてくれない。ASI Airとの同期は一旦諦めて、TTS単独で英語マニュアルと格闘したところ、今までは東経は-135°と入力する必要があったのだが、あるアップデートの時点で、なんと西経がマイナスで東経がプラスと逆さになっている!そんなの分かるかw
この様なトラップを3つくらいクリアして、ようやくTTSがASIAir Plusと連動して快適に使える様になった。
いろいろ揃えてみて、実際運用してみて、電子観望とはなかなか敷居が高い事が分かった。望遠鏡もケーブルだらけになるし、パソコンやネットの情報収集が苦手な人は、全部自力で解決するのは難しいと思う。素直に全部オール・インワンのVESPERA IIを買った方が、このシステムと同等以上の事が出来てしかも遥かにシンプルだし、ずっと安いし、幸せになれると思う。
ちなみに、電子観望の解説で、眼視ではこれしか見えないものが、電子観望ではこんなに見えるんだぞ!と説明されるが、眼視の例に使われるこの写真に僕は異論がある(^^)。
いやいやいや、初心者が一番最初に買う小口径で、光害地で単眼で見たらこの程度かもしれないが、双眼なら7cm口径でもこれより圧倒的に素晴らしい。
電子観望がこうなら、、、
僕の実体験的には双眼の眼視観望のイメージは、こうだ。
Askar 120APO。Stacked69_M42_3_0s_Bin1_585MC_gain252_20240314
自分で電子観望した写真を白黒加工してみた。もっと見えない部分もあれば、もっと見えるところもある。とにかくパソコンの画面では小さすぎて双眼視の大迫力を表現出来ない。実視界100°の広角アイピースでは視野枠が見えないほど広く、文字通り宇宙にダイブする臨場感はちょっと電子観望では得難いものだ。
そんな事より、今日は電子観望の話(^^)。
昼間にSony α7CIIにRedcat51を付けてちょっと撮ってみたけど、色収差ゼロ。
さて、いよいよ神奈川県の海辺のベランダ電子観望に挑戦!東京、神奈川の光害満載、しかも満月の翌日。(^^)
いくつか試し撮りしてみる。
M81, 82。William Optics RedCat 51 II-U+ZWO ASI585MC。BIN1、Gain323、10秒x35枚。(IR640PROIIフィルター)
こんなノイジーな画面で、楽しめるの?と最初は半信半疑だったが、初めて全自動で対象が映し出された瞬間は、結構感動的だ。「おおお!」と一人で喜んでいる。笑
なるほど、満月の自宅ベランダでも系外銀河が驚くほどちゃんと写る。眼視では観察が難しい淡い部分も、あっという間にシェア出来る。これは面白い!
気になっていた待ち時間も、スタートして数秒で見え始めるので言うほど気にならない。タバコでも吸っていれば丁度いいw。
NGC2244バラ星雲。William Optics RedCat 51 II-U+ZWO ASI585MC。BIN1、Gain252、10秒x44枚。(QuadBPフィルター)
iPadで目的地を指定するだけで、あとは全自動で勝手に細かく微調整して、ど真ん中で撮ってくれる。プレートソルビング技術が凄い。もはや人間はぼーっと眺めていればいい。
ちなみにこれを観賞用として加工してみた。
今では先人が惜しみなく情報を提供してくれているので、まだ始めて二晩目の素人でもこの程度の写真は得られる。(ありがとうございます!)
経緯台なので、7分程度の露光でも画像が回転しているのが見える。トリミングくらいしろよ!っと突っ込まれそうだが、それすら面倒なほど僕は怠惰だ(^^)。ここには載せてないが、手当たり次第かなり沢山撮りまくって、現像が面倒で仕方がない。それに、RedCatとASI585のオリジナル画角が分かりやすい。(と言い訳してみる。)
スマート望遠鏡には無い、分割式の最大のアドバンテージは、いろんな鏡筒にカメラを付け替えれる(^^)。早速、焦点距離1500mmのMak127で月を撮ってみた。
加工も頑張ったが、うーん、なんかイマイチだな、、、w RedCatの様にバーティノフマスクが無いので、ピントがどこにあるか良く分からなかった。
RedCat51で月を撮ると、このサイズ。
RedCat51の描写力、噂に違わず素晴らしい。
惑星等のビデオ撮影は、ASIAIRを経由すると1980 x 1080以下に強制ダウングレードされてしまうので、Macbook Proにカメラを直接繋いで、ASI Studioでフルピクセルで撮影した。
確かに今後は電子観望が主流になるのは間違いないとは思った。ただ、いろいろ操縦している自分は確かに楽しいが、眼視で観る難しさを何もご存じない一般の方にこの画面をお見せして、果たして楽しいかな?(^^) ちょっとその辺りが想像出来ない。
まあとにかく、これで今後は、自分で見た対象をようやく自分の写真で残せる様になった。僕的にはもうこれで満足(^^)。そしてこれ以上、天体写真の深みにハマりたくない笑。
M46, 47 。William Optics RedCat 51 II-U+ZWO ASI585MC。BIN1、Gain252、5秒x18枚。(IR/UVカットフィルター)M46の中に見られる惑星状星雲、NGC2438が可愛くカラフルに撮れていた。
僕は星を見たいのであって、満点の星空の下でPC画面を見たいのでは無いw。間違ってこの世界で高みを目指してしまうと、どうせまた深い深い沼と熾烈な競争社会、それにベンツが買えるほどの散在地獄が待っているに違いない。w 危ない危ない、、、。
でも、結構楽しい、、、(^^)
IC434馬頭星雲と燃える木。William Optics RedCat 51 II-U+ZWO ASI585MC。BIN1、Gain252、10秒x55枚。(QuadBPフィルター)
そして電子観望で遊ぶのも束の間、遂に本命がチャイナから届いたのであった。予定より一週間も早く。
それはまた次回に、、、(^^)