日帰り&天気の都合で、久しぶりに乙女高原にAskar 120APO BINOを連れて遠征した。心配していた風も大したことはなく、長野に負けない素晴らしい空だった。
なんだか最近は妙に広角趣向になっていて、Nikon NAV-17HW(2.06°、49.4x、EP2.4mm)も楽しんだが、ほとんどはMasuyama 32mm(3.24°、26.2x、EP4.6mm)で無数の星屑を散策した。
50倍、100倍なら20cmF7 BINOでも楽しめるが、せっかく焦点距離840mmを持ってきたのだ。1400mmの20cmでは見る事の出来ない広視界を楽しみたいと思うようになった。ああ、贅沢。(^^)
とは言えNav-17HWの50倍で眺めるM33は、増山32mmの26倍で見えなかった腕の淡いグルグルが見えてくるし、Nikon NAV12.5mmに付属レンズを付けて10mm(84x)にしたM81,82ペアは凄い迫力だった。100°視界に両方を収めたまま81の手裏剣が見えるし、82の暗黒帯の構造の片鱗を観察できる。空が良くないとこうは見えない。同じアイピースのM42も大スペクタクルだ。やはり明るいDSOは10mmアイピースが超楽しい。
カシオペヤ座イータ星(SkySafariではAchirdと表記)の二重星が、50倍で見事に美しく分離してくれる。立派な白い主星のすぐ近くに、寄り添う様に金色に輝く伴星がこの日一番印象に残った。以前に目を奪われたいっかくじゅう座ベータ星も見返したりしたが、この二重星、スキ(^^)。
という事で、当たり前だけどやっぱり倍率を変えられると、楽しみ方が格段に増える。
WX 10x50IFでもあちこち流した。5cm口径でも宇宙散策は意外なほど楽しいが、それなら例えば7cmならもっと楽しい?(^^) もちろんEMS BINOなら倍率も自由になる。2.5kgのニコン双眼鏡とほとんど変わらない重量と手軽さは、Borg FL72 BINOなら実現出来ちゃわないか?などと、また新たな妄想が膨らんできてしまった。これはマズイ、、笑
Borg 72FL
Borg 72FL対物レンズ
僕の計画はこうだ。
WX 10x50IF(9°、10x、EP5.0mm)に対し、72FL+増山32mmなら7°弱まで行ける。(6.8°、12.5x、EP5.8mm)先日の小海星フェスでgariさんに見せて頂いたAPM UF30mmが、見掛視界は70〜72°程度に留まるが周辺まで像が崩れず、素晴らしい見え味だった。あれと合わせても(5.4°、13.3x、5.4mm)となかなか楽しそうだ。
APM UF30を付けっぱなしで専用ケースに一体でしまっておけば、ジンバル雲台付き三脚とケースを持って出れば観望スタートできるので、手間はWXとほとんど変わらない。いや、座って見るなら椅子も欲しいか。導入支援にSkysafariを活用するなら、このくらいの倍率になってくると先日の双眼鏡お手軽戦法は使いにくい。やはりエンコーダー+松本さんの傾斜センサーも欲しいかも。それならバッテリーも要るか、、、(^^)
昔の愛機、Borg 71FL BINO
その代わり、90度対空なので座ったまま楽に天頂も眺められるし、その昔、71FL BINOで何度も感動を体験したので想像がつく。ニコンWX顔負けのクリアさ、抜けの良さでレンズを覗いている感じがしない。素敵な映画を見ているようだ、というその場に居た女性の名言がその光景をよく表している(^^)。昼間アラ探しすれば普通に色収差も見えるのだが、あれからさらに進化した72FLの世界は、きっと涙の滝だろう(^^)。
Borgフローライトレンズは、絵の素晴らしさだけでは無い。真のアドバンテージはレンズが空かと疑うほどの(^^) 尋常でない軽さだ。今後の稼働率に大きな影響を及ぼすのは間違いない。
同じころBlanca 80EDTを短期間所有していた事もあるが、見え味は71FLの方が圧倒的に好みで、すぐに手放してしまった苦い思い出がある。もちろん口径も違うのだが、サイズや重量も見た目以上に違っていて71FLの手軽さに全く及ばなかった。
松本さんに作って頂いたBlanca 80EDT BINO
これらを作った当時は葉山のベランダで使っていたので、都内に近い片田舎では小口径を活かしきれずに全て手放してしまった。今は環境が変って、ちょっとベランダに出れば長野の最高の空が待っている。71FL BINOこそ、手放した事を後悔している歴代1位だ。(^^)
それにしても新型のFL72、価格設定がだいぶ強気だ。7cmのレンズのみに1本15万というのはタカハシFC-76シリーズよりずっと割高で、15万出すならフォーカサー付き15cmアクロ屈折がF5でもF8でも一式好きな方を選べる。一番のライバルになるであろう、同じ7cmのBlanca 70EDTならフルセット10万で、こちらはFPL-53の3枚玉だ。
Blanca 70EDT
デザインが旧態依然として個人的にはちっともワクワクは無い。(^^) 鏡筒径も76mmとBorgの60mmシステムと比較すると多少大きく重くなるのは避けられないが、鏡筒バンドと台座を除けば1本1.5kgに抑えられている。僕の場合は使うアイピースはもう決まってるし、全部同焦点化しているので、結構な重量増となる立派なフォーカサーは不要だ。台座、フォーカサーとフードを取っ払って、代わりに厚紙フードを巻けば重さはBorgに多少迫れるか?でもレンズ以外ほとんど捨てる事になる(笑)。
2枚玉のBlanca 72SEDを挙げないのは、こちらは何か別のシステムと鏡筒をシェアしているのだろう。鏡筒径が82mmあり、デカいフォーカサーが奢られていて1.7kgと、3枚玉より太くて重いという逆転現象。現行のBlanca80EDT IIは鏡筒径90Φ(2.5kg)もあって今回の僕のニーズには合わない。
問題は見え方だ。カメラ・レンズにしても、本当に大切な事はいつも数値化されたスペックの外にあったりする。当時、71FLのフローライトを覗いてすぐに、数値に現れないレンズ素性や、日本のガラス研磨精度の品質などが実は大切という事を思い知った。
ただ、現在のBlancaはレンズも昔とは別物みたいだし、世間の評判も良さそうだ。もしブランカが評判通りの見え方なら、過剰倍率性能はフローライト2枚玉よりも恐らくFPL53の3枚玉の方が上だろう。月や惑星をメインに楽しみたいなら、コスパの良いBlanca 70EDTか王道のタカハシFC-76がベターだろうし、双眼鏡的な低〜中倍率のリッチフィールド専門なら、軽さを活かしたBorg 71FL or 72FLという事になるか。Askarなど新興メーカーも色々出している様だが、撮影を意識しているものばかりでいずれもやたらデカくて重い。
もし72FLで行くなら他にいろいろ揃えなければ使えない。上の写真の72FLラッパが別売りで12,100円。(71FLのはラッパもセットだった。)6cmの60Φ延長筒(M57/60延長筒L【7604】)が5,720円、2インチホルダー(2インチホルダーS【7508】)5,060円と、フォーカサーを入れずとも最低でも一本172,480円かかる。ちなみにこの様なニーズに最適と思われる松本さんのアイフォーカサーも、ペアで66,000円を合わせると、総コストはBlanca 70EDTに対し倍以上違ってくる。
双眼望遠鏡は鏡筒を2本づつ調達しなければならない。仮に両者に性能差が無いとすれば、軽さと見た目のためだけにこのコスト高を受け入れられる人がどれだけ居るだろう?
72FLは以前よりも外径が大きくなっていて、71FLほどスマート&コンパクトでは無い。重量も71FLはラッパ込みで418gに対して、72FLは370g + ラッパ重量(メーカー記載無し)+延長筒重量と、実際は恐らく結構重くなるだろう。
いずれにしても焦点距離400mmというのは、10mmアイピースをかけても40倍程度しかならない(^^)。5mmアイピースで80倍。それ以上の短焦点アイピースは見づらいし良い思い出が無いので、せいぜいこの辺りが無難とは思ってる。これで高倍率を見ようと思うだろうか。
うーん、悩ましい。やっぱやめようかな(笑)。
ちなみにタカハシFC-76DC対物ユニットは単体で1本10万で販売している。
これならBINO化の前例も複数あるし、大好きなフローライトだし天下のタカハシ様だし、見え味が悪いはずがない(^^)。目新しさは無いけど、タカハシを所有した事の無い僕にとっては永遠の憧れでもある。
ただし、こちらは焦点距離が570mm(f/7.5)、鏡筒径80Φ、重量900gと理想に近いが一回り大きい。手軽さは若干スポイルされるほか、上の7cm二機種ほどには広角視野は得られない。このフードは恐らく固定式だが取り外す事は出来る。別売りのエクステンダーCQ1.7×を装着すると焦点距離は954mmに拡大され、惑星スペシャルとなったりして面白いが、目的が微妙に変わってくる。
軽量のためとは言え、対物レンズ・セルむき出しはちょっとヤバいかな(^^)
この晩は5時間ほど吹きさらしに座っていたが、マイナス6度まで下がった。本気の防寒具は長野villaに置いてきてしまったが、これくらいになると常識的な防寒だけでは全く足りず、途中で耐えかねて車で暖を取った。次回は、雪の上で居眠り出来るほどの最強装備を再検討してみる。(^^)