クリスマスも大晦日も独りベランダで惑星観望、元旦と3日にも山梨に単独遠征した。響き的にはだいぶ寂しいオッサンだが(笑)漆黒の宇宙のパレットが星の輝きで埋め尽くされた、極上の光アートだ。本人的には最高に贅沢でハッピーな2025のスタートとなった。(^^)
最近はもっぱらAskar 120APO-BINOを使っているが、先日は久しぶりに20㎝F7 BINOを連れていった。120APO-BINOは圧倒的に荷物も少なく手軽で、セッティングも10分かからないためどうしてもこちらに手が伸びる。しかしわざわざ20㎝を持ってきたのは、いよいよかみのけ座、おとめ座銀河団の季節だ!系外銀河と球状星団は大口径の出番だ。
セッティング開始時はマイナス9°スタートで、まもなくマイナス11°まで達した。20㎝F7もUSBヒーターを廃止してレンズフードに直接電熱線を仕込んだり色々アップデートしたのだが、寒さ対策もろもろに手間取ってセッティングに2時間も要した。星を見に来たのか、極寒のサバイバルゲームをしに来たのか分からなくなる(^^)。
以前まとめた大きさ別、明るさ別・銀河トップ180をSkySafariにハイライトして、M81,82、M51, 106、110などの北斗七星まわりから、かみのけ座のニードル、シルバーニードルなどのエッジオンシリーズ、くじら、白目、コクーン、マルカリアン一帯からソンブレロ、しし座トリオからのからす座のアンテナ銀河まで、Nikon NAV-12.5HW(0.89°, 112倍, EP1.8mm)で、夜10時から朝5時まで見て観て、見まくった。
寒さ対策・虎の巻
マイナス9度は流石に寒い。ここに6時間座って過ごすには万全な防寒対策が必須だ。ここ数年で実に様々なアイテムをとっかえひっかえしてきたが、僕なりの防寒の要は3つ。基本的な防寒レイヤー構造に加えて、熱源追加と放射冷却防止の3点セットで乗り越える!
ベースレイヤー(インナー)
とりあえずユニクロの「超極暖」の上下でバッチリ(^^)。3~5倍の価格のモンベルなどもいくつか持ってるが、座りっぱなしで汗をかかない天文用途の場合ほとんど違いを感じない。ここのわずかな違いより熱源の方が重要度がずっと高い。ユニクロ・ヒートテックの素材は要点がキッチリ抑えられていて、安いけどちゃんとした性能があると思う。ベースレイヤーは一番地肌に近いところで着る。
※当ページの各商品写真をクリックするとアマゾンの方が安い場合はアマゾン・アフィリリンクに、そうでない場合は各社販売店に直リンクしています。
上下つなぎのインナーというアイディアもあるが、きっと暖かいけどNG。トイレする時に、小ならまだしも大の場合はトイレでほぼ全裸になる罰ゲームが待っている。(笑)
ミドルレイヤー
暖かい空気層を作れば良いという事で僕は上はフリースやセーターを着ているが、一般的には保温力の点ではフリースよりもインナーダウンが最強の様で、中でもモンベルのスペリオダウンの評価が高い。0度くらいまでならこれとアウターの組み合わせだけで電熱は不要。
先日のマイナス11度ではセーターでは全く歯が立たなかったので、途中からUSBジャケットを重ね着した。この気温では何を着ていても急激に外気に体温を奪われ続けるので、ミドルレイヤーに何らかの発熱体を装備したい。USBヒータージャケットが恐らく最も手軽で効果的だが、袖の無いタイプだと腕からガンガン体温が奪われて寒かった。電熱線が腕まで入ってる事が重要と気がついたが、その条件に見合うジャケットが少ない。
ちょっと厚手だが僕はこれをチョイス。この上からアウターを着るのであまり大きいと窮屈だ。タイトに着たいので身長170cmの僕はMを選んだが、まだ少し着太り気味か?フードがチャックで外れるのでミドルレイヤー用途には好都合だ。
下のミドルは普段はテキトーに裏起毛のあるスノボーウェアを履いてるが、アウターがしっかりしているとこれだけでモモやひざに寒さを感じる事は少ない。電熱線パンツは必須では無いが、試しに細身のこれを選んでみた。ジャージを履いてる感覚で、ミドルレイヤーとしてバッチリだった。
この上下ペアの良いところは、USBがどちらも左ポケットから取るため、1台のモバイルバッテリーをポケットに入れておけば両方の給電USBケーブルが届く。
電気に頼る場合はバッテリーが逝ったタイミングで観望終了となるので、大容量を選びたい。以前よりも大容量が安くなってるので、僕は56800mAhもあるこれを選んでみた。実際使ってみると計算通りケーブルは届いたが、ジャケットの表、裏、パンツの3ボタンを同時にアクティブにすると、過電流なのか全部落ちてしまう。同時使用は2個までだった。足と背中だけでも十分温かいので、まあいいか。
眩しいので赤シールを張ったが、数字で残量が出るので現状把握しやすい。この容量でも一晩遊ぶにはもう一個スペアが必要かも。
アウター
ここは予算の許す限り、フィルパワーの高いダウンを調達する。ユーズドもメルカリやヤフオクで沢山出てる。僕のはNanga ホワイトレーベルムーンロイド 最強 ダウンジャケット type1。脅威の940フィルパワー。文字通り、羽の様に軽く肩が凝らずにとても快適。
下はNangaマウンテンロッジダウンパンツ。860FP。今まではチャイナ製の安物ダウンパンツを使っていたが、最初からこっちにしておけばよかった。暖かさがレベチ。膝を付いても濡れない工夫がされているのも地味に有難い。
ちなみに天文リフレクションズの山口さんは、いつも暖かそうな黄色い上下アウターを着ていらっしゃるが、あれはどこのだろう?今度聞いてみよ。w
アルミ・ハードシェル
さてここからが本題(^^)。どんなに高価で立派なダウンジャケットを着ても、例え0度前後であっても数時間もすると底冷えしてくる。人間の体温がダウンを通して放射冷却によって知らぬ間に冷やされ続けているから。それなら、根本的に放射熱を遮断すればいい。時に人間の命を救う、一番安くて効果的なエマージェンシー用・アルミシートを使わない手は無い。
種類が沢山あるが、これが敗れにくくてオススメ。望遠鏡にもこれを巻いている。
登山にもハードシェルと呼ばれる、アウターの外側に着る、防水・防風・防雪性などの機能を重視したアウターを使うが、天文用途では雨の日に星を見る人はいない。防水では無くアルミシートをダウンの外側にピッタリ装着させる目的での、アルミ・ハードシェルだ!
これが、誰も作ってないし売ってない。コロンビアがインナーにアルミを利用した製品をいくつか出しているが、どれもアルミシートはインナー側で体温を反射させるタイプで、これではインナー時点で体温を内側に反射させてしまい、せっかくのアウターダウンの空気層を温められず効果が台無しなので、アルミは一番大外に着たい。
アルミを着るためのシェルとして選んだレインコート。アルミを貼りやすくしたいので内側がメッシュになっていないものを選ぶ。町中でも着れそうなスタイリッシュ感があるが、厚手のダウンだとちょっと圧迫されていて窮屈かも。フリーサイズのみ。
こちらのパンツはLサイズを選んだが、ゆったりとしていてシェルに相応しいサイズ感だった。
今まではポンチョにアルミを張ってみたり、USBひざ掛けにアルミを張ってみたり色々やったが、今度こそ、全身隙間なく体温を逃がさない!という事でレインコートの内側に、頑張ってノリでアルミを張り巡らせてみた。(笑)マイナス10°で実際に使ってみると、人間の放射冷却を止めると同時に、USBヒーターの熱がアルミで内側に全反射して逃げないので熱効率が高いはず。この組み合わせで、死人が出てもおかしくない非常識な気温でも、ヌックヌクで鼻歌を歌っていられるのだ。(^^)
素人のテキトー自作アルミポンチョ左と、糊で貼っつけたアルミレインコート右(^^) ポンチョは足を引っ掛けたりして意外と煩わしかった。
そもそもレインコートなので防風効果も高いが、アルミシートで完璧に風をシャットアウトしてくれる効用もある。さらに休憩中に暗闇でコーヒーをドバドバ服にこぼしたがw、レインコートの恩恵で無敵だった(笑)
素人裁断だし糊だし汚らしいのでw、知り合いにプロを紹介して頂き、アルミシートの図面起こし、裁断と裁縫を一式テスト的にお願いしてみる事にした。追ってここで報告したいが、これがうまく行けば、他にも欲しい方がいても同じ図面で量産出来るし、彼もちょっとしたアルバイトになって良いかなと(^^)。
顔
鼻まで覆うと呼吸が漏れてアイピースを曇らせる。前はいろいろ犯人みたいな覆面を被っていたがw、最近はニット帽にアウターダウンのフードを口元まで締めるだけ。でも寒いと思考力が低下するので、頭ももう少しちゃんとやろうかな。こんなのならオシャレかな?どうせ暗闇で見えないかw。
基本的に冬山登山のノウハウが天体観測にそのまま活かせる場合が多い。ノーズマスクなるものが近年使われだしている様で、鼻だけ開けて呼吸が出来てゴーグルを曇らせないアイテムだ。今までは鼻と目だけは素肌直撃だったので、これはいいかも!しかもこのままアイピースを曇らせない効用もありそうだ。
この動画に習って、最初は僕も自作してみようと思ったが、faceGlove DIYというモデルはフリース裏地が付いていたり、お湯で温めて自分の顔形にジャストフィットさせる徹底ぶりで、オリジナルを買ってみる事にした。国内では在庫がどこにも無いので米国に直接オーダーした。送料無料らしい。
手袋
グローブもずっとテキトーなままだったので、これを機にあちこち比較レビューを勉強してみた。
生地の厚さ、指先が出せる、隠せるという事で、ここでもまたモンベルのフィッシンググローブ。iPad操作だけでなく、EMSのXYノブやアイピース交換のノブ操作、フィルター交換など指先を出したい場面は結構多い。出した指をワンタッチで隠して保温出来るのが良い。
この手袋のアウターとしてミトンタイプの三重グローブ。類似製品より保温性が高いらしい。指が別れていないミトンタイプの方が保温性は高い。アウターグローブなのでLLサイズで丁度良い。
先日は薄手の手袋の外に厚手の手袋を使ったが、手袋の中の甲の部分にハクキンカイロを仕込んで快適だった。このミトンタイプだとさらに効果的に暖を取れそうだ。
あんまりあちこち電源に頼るのもバッテリー管理が面倒だが、電熱グローブが一番手軽で最大効果かもしれない。
電気に頼らない本気の貴方には、Black Diamondのソロイストフィンガー。冬山用の最強の保温力らしい。適応温度域がなんとマイナス31°〜マイナス9°(^^)。
足回り
マイナス10度以下で何がキツイって、足のつま先がすぐに痛くなってくる。寒いというより痛い。多分、地面からの冷気を拾って、真っ先に耐えられなくなる。ここをなんとかしないと快適な観望が出来ない。
靴下
いくつかの比較動画が出ていて、ふわふわしてる見た目のものが保温力が高そうだが、保温力テスト堂々一位はモンベルのメリノウール・アルパインソックスらしい。流石に値段が高いだけの事はある。さらに保温力の高いエクスペディションというモデルがあって、もう少しコストがかかるが超極厚だ。
まるでこたつソックスというのがアマゾンでは大人気の様だが、商品名が秀逸だが保温力テストではモンベルが上だった。USB靴下も持っているが、すぐにバッテリーが切れて超冷たくなるので、面倒で使わなくなった。
ブーツ
僕はコロンビアのオムニヒートブーツを天文専用に使っているが、下記で紹介するハクキンカイロ・ミニをブーツの中に仕込んで、さらにブーツごとアルミグルグル巻きにした。これで足の痛みは解消出来るのは去年紹介したが、さらに良い事を思いついたのでご紹介。
宇宙服みたいになってきた(^^)。
コロンビアは生産終了みたいだが、アマゾンのスノーブーツがやたら安くて暖かそう。
アルミグルグルにしたブーツは1シーズンでアルミがボロボロになってダメになるし、歩き回る場合はシートがすぐにちぎれて使えなくなるので、アルミブーツ丸ごとシリコン製のシューズカバーを履いてしまう事を思いついた。元々防水用途だが、アルミシート保護の目的で使えそうだ。見た目はダサい?がナイスアイディア(^^)
その他アイテム
ハクキンカイロ
熱量(カロリー)は使い捨てカイロの約13倍という事で、極寒地ではマストアイテム。僕もミニx2、スタンダードx2を使ってる。ミニと言ってもそれほどサイズは変わらず、靴に仕込むには結構デカい。こいつを仕込む前提でブーツとグローブは一回り大きいのが良いかも。
常温では、付属のソフトケースに入れないと裸では触っていられないほど熱くなるが、マイナス10°以下ではちょっと暖かく感じる程度なのは、気温が低すぎるのかな。或いはまだ完全にプラチナの接触反応が進行してない?
USBライター
通常のライターは眼の前で強烈な光を放ち、せっかく暗順応した瞳孔が一発で潰れてしまうので、格段に目に優しいターボライターが活躍する。
しかし標高1500mでは、とにかく火が付きにくい。酸素が薄い?気温が寒すぎ?理由は分からないが通常のライターもターボライターも、なかなか付かなくていつも困る。タバコだけじゃなく、ハクキンカイロも最初はライターで着火しなければならない。
そこで良いものを見つけた!USB充電式ライター。
こんなもので本当に火が付くの?と半信半疑だったが、とても良い。まだ高山で試していないが、安全装置も万全。発光もごく小さいので瞳孔への悪影響も一挙解決。
魔法瓶
この気温になると、ドリンクをクルマの中に置いておいても完全に凍ってしまい喉を潤す事が出来ない。アルコールなら大丈夫かな?w熱々とはいかないまでも、何時間でも液体として保管してくれるだけでも、魔法瓶は真冬高山の必需品なのは、意外と盲点。この上からさらにアルミを巻けば、熱々のコーヒーが飲めるのか?今度試してみよ(^^)。
最も大切な装備。クルマ
そうそう、これが一番大事だった。この時期の高山では人間が居ない。ガソリンは必ず満タンで山に臨む事!そして早期のスタッドレス着用を!
星見では無いが12月頭にノーマルタイヤで別荘に行って、マジで動けなくなってロードサービスのお世話になってしまった汗。ゴメンナサイ。夏タイヤでよくここまで来れたね、と驚かれたが(笑)登れないだけでなく、下りでうっかりブレーキを踏むと、まるでスキー板の様にロックしたままどこまでも滑っていって非常に危険だ。スタッドレスって偉いのね、、、反省。
前日から降り始めてこんな状態だった事は、神奈川県の環境では全く想像出来なかった。これは無謀と言うよりほかは無いが、ガソリンさえ入っていれば最悪2日間くらいは車内で暖を取りながら救出を待つ事が出来る。
重要度ランク一位がチェーン。ジャッキアップしなくても簡単に装着出来るものを探した。実はスタッドレスでも登りでスタックしたことがある。これさえ積んでおけば、もしもの時に人様にご迷惑をかけずに自力で脱出出来る。
真冬の山に登るのは危険を伴う。僕に言われたくないと思うが(^^)、くれぐれもご無理無きよう。
ここまで書いておいてアレだが、それ以前に星を見るのにここまでやるか問題がある(笑)最も手軽な方法は、標高を妥協するw。
標高1500mの乙女高原はマイナス10°以下になるが、先日初めて行ってみた山梨県みずがき湖ビジターセンター駐車場は標高900m弱だが、その空が乙女高原と変わらないほど良かった。甲府から山を挟んで離れるから?
この日は一晩中、せいぜいマイナス2度くらいで全く寒さを感じる事なく、楽勝だった。一晩中利用可能な公共トイレもあるし、ほとんど人も居ないし、ちょっと街灯が眩しいが真冬はこっちでいいんじゃね?(笑)
風邪をひかない程度に、ほどほどにね!