ようやく休みと天候のタイミングがマッチして、Askar 120APO-BINOで最高の夜空を眺める事が出来た。今夜は友人家族も同伴なので、大小目幅を自由に行き来出来るスライド台座仕様で出陣した。
早速、Askar 120APOにアルミのエマージェンシー・シートを巻いてみた。Sharpstar Opticsさん本家から当ブログのBINO写真を使わせて欲しいとご連絡を頂き快諾したが、これではAskar鏡筒か何か分からない。(笑)
当初は裸の電熱線を巻いてからホイル巻きにする計画だったが、いつもお世話になっていたヒーター屋さんにご相談したところ、製作途中のヒーターの販売は出来ないと断られてしまった。企業秘密という事かな?仕方なく今回はヒーター無しで取り敢えず巻いて様子を見てみる。
もうちょっと綺麗に貼りたいが、まあ、そのうち見慣れるだろう(^^)。フードのサイドに、MATSUMOTOロゴを貼ったらカッコいいかも。
スライドするフード部分にアルミシートをどうやって貼るかが問題だったが、その部分だけセロテープでワンタッチで剥がせるようにしておいて、収納時はフードにクルッと貼っておく原始的な方法で行ってみた。多分これが一番カンタンだ。
このアルミシートの折られ方が秀逸で、折ったままハサミを入れることで、キレイな長い帯を取得出来て、加工が楽で重宝する。破れにくいし、オススメ。
鏡筒バンドの内側にアルミを貼ると光軸に影響するので、わざわざバンド間に分割して貼り付けている。まあ、アルミを貼った状態で初期設定すればいいだけなので、そっちの方が楽だし、キレイに貼れるかもしれない。
それから120APOのフードの曲線部分の造形は美しいが、何かを貼るとなるとなかなか難しい。そのままではキレイに貼れないので、仕方なく切り刻んで娘から借りた小学生が使うノリを借りて貼り付けた。
ちゃんとAB比較をした訳では無いので断定はしないが、20cmにホイル巻きした直後にも同じ事を感じたので、恐らくアルミシート効果のはず。まず、いきなり視界が揺らがなくなる!これほんと。当然、高倍率での効果が大きい。低倍率でも星が瞬かず静止してくれて、気持ちよさ倍増だ。昭和の定説、上空のジェット気流が悪いとされていた現象の多くは、実は(温度順応前の熱すぎるのと同様に)冷え過ぎた筒内の中で発生していた陽炎だったというオチは、あながち間違いでは無いと僕は思っている。
光束が進行するに従い、鏡筒の内壁からの距離が離れていく屈折式でもこれだけ効果がある。筒内壁スレスレを二往復も三往復もする反射系では絶大な威力と思うのだが、どうしてみんな試してみないのだろう?(^^)まあ、確かに面倒だけど。
夜露発生を遅らせるのもホイル巻きの効用の一つだが、それでも湿度が高いとアルミ諸共ビショビショになってしまう事もある。一晩中、確実にクリアな視界を維持するならやはりヒーターはあった方がいい。
友人がイチローを撮ってくれていた。(^^)
アルミシートの上からヒーターを巻いても、アルミで熱反射してしまいヒーターが無効化してしまう。製作を断られてしまったので、ヒーターは誰かに頼むのは諦めて自作チャレンジするしかない。人様の商売の邪魔はしたくはないのだが、裸の電熱線がどうしても必要だ。自分で辿りついた研究結果は全部ここに公開したい。
目標は、鏡筒やレンズを外気と同じ温度をキープする事。熱すぎても逆に陽炎を生んでしまう。アルミの内側なので尚更、温度は低く保ちたい。手で触って温かいと感じる様では、少なくとも36°以上に達している。それなら冷たいと感じない程度がベストか?この辺の結論はいろいろ試行錯誤が必要だ。
少し調べたところ、ステンレスの針金がUSB 5Vで程よい抵抗と熱量になるらしい。これがなんと百均で普通に売っていて、ダイソーで110円で30mも買える(^^)。熱すぎる場合は線材を長く引くか、電圧を下げる事で温度調節が可能だ。フードからバッテリーまで長いUSBケーブルを引き回すのも邪魔だし暗闇ではトラブルの元なので、乾電池(エネループ)仕様が実は良いかもしれないと気がついた。確かバッテリーは空港で預け入れられない?と認識しているが、海外ツアーにおいても電池なら現地で買える。
USBを使う場合でも、USBプラグのハンダは難しいが、今はこんな便利なモノが格安で手に入る。
この実験がうまく行けば、アイピースにも非常にスマートに熱線を予め巻いておけそうだ。後日こちらでご報告したい。
せっかく軽量なBINOなのに、スライド台座を使うためだけにTTS-160架台16kg、水平回転軸付きMATSUMOTOピラー18kg、それに加えて必ず必要になるウェイト16kg(今回は片側はバッテリー8kg)と、20cmF7を乗せるセットをせっせと何往復も運ばなければならない。もちろんこれに合わせて鏡筒2本とくそ重いアイピースセットと工具セットもある。車から出し入れするたびに指がちぎれそうになるし身長が縮む思いをする。(笑)これだと20cmとほとんど荷物が変わらないじゃないか!
やはりスライド台座用に、ビクセンのHF2経緯台あたりが無いと駄目だ。また松本さんにご相談だ(^^)。
そしてまた、ALI Express(中国)で面白いものをみつけてしまった。ウィリアム・オプティクスやTSのOEMの大元?ブランド・ロゴが無いだけで3分の1の価格で買える。試したくなってきちゃったなあ。(^^)
これもちょっと気になる。
ALI Expressは今までトラブルの話は聞いていないが、チャイナ直送なのであくまで自己責任で。(^^) 人柱になって頂ける勇者がいらっしゃったら、是非イチローに結果を教えて下さい。(笑)
向こうに見える蓼科山の山頂で、人々が頂上の塔の上に乗っかって写メを撮っていたりするのを観察出来る(^^)。
長野県の南諏訪ICから40分、美しい車山高原からほど近いvillaをしばらく借り受ける事になったので、当面はここが僕の星空観望の拠点になる。標高は1460mほどあり申し分ない。車山、霧ヶ峰〜美ヶ原側はいつも強風が吹いているイメージだが、こちらはどういう訳か風が少なく、観望には好条件だ。
眼の前には蓼科山がそびえていて美しい。ちなみに蓼科山は標高2,531mで、山の向こうは佐久市や軽井沢だ。人生には何度かラッキーがあるらしい(^^)。新月期は大抵ここにいるので、大したお構いも出来ないが10人宿泊出来るので、星仲間は是非遊びに来て下さい。
21時ごろ、観望スタート時は山梨とあまり変わらないかな?と思ったが、夜半から長野の本領発揮だ。巨大な唇の様に二本に分かれた見事な天の川がドカンと登って来た。
マスヤマ32mm(3.2°、26倍、射出瞳4.6mm)で背景が黒く締まって見えるほどの好条件となった。Askar 120APO-BINOでは、20cmF7では観る事の出来ない広視界を楽しむことを主題としていた。早速、さそり座のしっぽの近くのプトレマイオス散開星団(M7)やいて座スタークラウド(M24)など、広域に広がる散開星団などを見まくった。
特定の対象を探す訳でもなく、ただ賑やかな天の川を宛ても無く遊泳するのが、僕の真っ黒な腹の中が洗い清められるほど美しいw。これが本来のリッチフィールドと言うやつだろう。
ワイルド・ダック・クラスター(M11)とその周辺も見事だったし、こぎつね座のコートハンガー・クラスターが何故そう呼ばれるのかも、3°の視界で眺めてみてやっと合点した(^^)。少し倍率を上げて、Nikon NAV-17HW(2°、49倍、2.4mm)で観るM5が、小ぶりだが光の濃淡を伴ってキラキラと輝き、本当に無数の宝石の砂利を撒き散らした様に見えて、M3やM13などより印象に残った。
抜けの良いマスヤマも好きだがNikon NAV-17HWが見せる星が、最終端まで見事に点像で実に気持ちがいい。120APOとNAV-17HWの組み合わせは、20cmF7 BINOとマスヤマ32mm(1.9°、44倍、4.6mm)とほとんど同視界となる。もちろん微光星は20cmの方が多いはずだが、NAV-17mmのアドバンテージが活きる事で120APOの方が対象をより大きく、よりコントラスト高く、より広くて周辺まで圧倒的な点像を楽しめる事になったりする。僕が最も常用する倍率、50倍で流すなら、20cmがあっても120APOを積極的に持ち出す意義が出てくるのが面白い。
二重星巡りも星像が鋭いので美しさが際立つ。結構あちこち見て回って、クッキリと輝くアルビレオにも久しぶりに対面出来た。
一方で20cmF7 BINOの価値を改めて感じる場面も少なくなかった。結構悪くない空のはずだが、多くの系外銀河は12cmを持ってしても「シミ」の領域を出ない感じがした。僕の好きなエッジオン・シリーズ、Silver Needle Galaxy(NGC4244)、Needle Galaxy(NGC4565)、くじら銀河(NGC4631)もいずれもあれ?こんなもんだっけ?という感じで、ガン見しようとしてもそれぞれの個性の詳細を識別出来ず、ちょっと物足りない感じがした。(これらを眺めた時間帯が、もしかしたらまだ夜の帳が降りて間もなかったかもしれない。)
複数集まった並びで楽しめる対象はいくつかあるが、日本の空において12cmクラスで単独で観察出来る系外銀河は、実際にはアンドロメダとM33、M81、82ペアくらいかも?以前まとめた銀河ランキング的に言えば、M83も入るかな?M51子持ちも二個ある事は分かるが腕の判別は厳しそうで、M101や104等もこの日は存在が分かるに留まった。やはり銀河は遠いのね、、、
網状星雲はノーフィルターでもよく見えるが、OIIIをつけても口径なりに楽しむ事が出来た。
まあこれは20cm屈折ツインなどという分不相応の贅沢に慣れてしまってるが故の感想かもしれないし、もっと詳しく見たければカメラでもつけて電子観望すればいい。
NAV-12.5HW+EiC-H10で1.2°、84倍、1.4mmをかけても、太陽系外はちょっと寂しいかな?EiC-H10を外して12.5mmで流す方が無理が無い感じで好みだった。
Askar 120APO-BINOはちょっとお手軽と言えるサイズかは分からないが(^^)、目を三角にして詳細を観察するよりも、ひっくり返した宝石箱を肩の力を抜いて流す双眼鏡的な楽しみ方がよく似合う。
あとは記憶に残っているものは、NGC6441がすぐ近くの明るめの恒星と並んで、低倍で眺めるとさそり座のミラク・ゴーストの様相を呈していて興味深い。Zeiss BINOをお譲りしたSさんに教えて頂いた、さそり座のミュー星(二重星)とゼータ星(こちらも二重星)の間にあるNGC6213辺りも、小ぶりながら大変美しく、しばし見入ってしまった。
ホイル巻きの効果か、明け方3時に撤収するまでヒーター無しでも対物レンズが曇る事は無かった。
友人家族はさっさとvillaに入って寝てしまったので、5時間くらい一人で楽しんだのだが、子供も大人も強い興味を持ってもらえないのは、ガイド役としての自分の能力不足なのだろう。あちこちの面白い逸話をもっと魅力的に語れたら、彼らもさらに興味を持って宇宙と対峙出来るはずだ。
僕もそろそろ、こちら側(望遠鏡や、その周辺ギア)では無く、あちら側(宇宙そのもの)にフォーカスして、何千年、何万年も旅してきた生の光をこの目に受け止める神秘を伝えていきたい。