先月の新月期も乙女高原を訪れたが、寒さとあまりの強風で、往復5時間かけたのに遂に望遠鏡を降ろす事なくまっすぐ退散するという絶望を味わった笑。今回は風も入念にチェックし、朝まで空も風も申し分ない!先月のリベンジも兼ねて、6時間みっちり春の銀河の散策した。
乙女高原への登山道の大部分は雪や氷で凍結していた。特にFR車は坂の途中で停止したらアウトだが、横滑り防止機能が入っていると、空転を検知すると勝手に回転を止められ失速してしまうので、横滑り防止はOFF。終始ドリフト走行でスピードを殺さずに目的地まで走り続けなければならない笑。
だいぶ昔、坂の途中で完全にスタックしてしまい、たまたま通りかかった除雪車に引張り上げてもらった事がある。今回も途中で一瞬、これは無理かな?とも思ったが、今日は給油満タンだ。いざとなれば誰か通りかかるまで車で暖を取れるし死にはしないだろうという事で決行した。この時期の山岳地帯はやはり4WD車でないと、人様に迷惑をかけてしまう可能性がある。
無事に金峰山荘キャンプ場に到着したものの、膝上まで雪が積もっていて、なんとキャンプ場に入っていけない!仕方なく周辺の暗くて平らな土地を求めてウロウロしてみる。幸い、琴川ダム湖岸広場Pがスッキリ除雪されていたので、少しお邪魔する事にした。ご近所に友人の大先輩がお住まいなので、一声かけようか迷ったが、夜分だし急過ぎるし、控えた。
21時前に到着した時にはマイナス8℃。今回は防寒性能を試したかったアイディアが色々ある。
ハㇰキンカイロx2、ミニx2に初めて火を入れてみたが、なんで今までこれを使わなかったのだろう!USBよりも火力が強く、途中でバッテリー切れの心配も無く、安定感抜群だ。自宅で試した時はソフトケースに入れておかないと熱くて触っていられないほどだが、極寒地では靴下も手袋もしているので、ソフトケースは不要だった。ブーツの中が狭すぎてミニでも仕込むのが難しいので、大きめのブーツをはじめから選択するのが良さそうだ。
ブーツもアルミぐるぐる巻にして、アルミ中敷きの効果もあるのだろう、今までは真っ先に足の指先が痛くてキツくなるのだが、今回は撤収時まで足先に寒さを感じる事はなかった。作戦成功!
そして自作のアルミポンチョ!笑 ポンチョの裏地にアルミシートを止めただけの発明!これが意外と邪魔でw、天頂付近を散策する際は地べたに座り込む高さになるのだが、ポンチョを踏んづけてコケそうになるし、又先まで長さがあるので、またぐ際に椅子をひっくり返したりして、アイピースの交換のために立ち上がったりするのがとても煩わしかった。
ただ、アルミシートによる保温効果は絶大で、ヒートテックインナー1枚、ミドルレイヤー1枚にアウターだけの軽装だが、マイナス11℃まで下がった明け方4時まで寒さを感じる事はなかった。ポケットにハッキンカイロを仕込んであるのも効いている。
もう一つ欠点は着る時に頭から被るスタイルが、暗闇だとあちこち引っかかるし、ライトが何かで影になると一寸先も見えない漆黒の闇だ。ともかく普段ならなんでも無い動作が、極寒の暗闇では何もかも不自由だ。やはり前開きで上下分かれたレインコートの中に、ガッツリアルミシートを縫い込んで着るのがベターと分かった。
iPadの操作をボールマウスでやる作戦は、ボールマウスミニでもダウンジャケットのポケットの中で、手袋を装着したまま操作するのは無理だった笑。仕方なくその辺にマウスを転がしておいて、使う度に拾い上げて触っていたが、操作自体は快適で、手袋の影に隠れて誤ってクリックしてしまうトラブルが皆無で、半分成功。でも、暗闇で黒いマウスをいちいち探すのも面倒で、マウスの上下も触ってみるまでどっちか分からないし、使うために拾い上げる度にボタンを押してしまう。
僕が持っていったのは上の小さいボールマウスだが、下くらいの大きさが手袋装着でも使いやすいかも。白いし。
マウスを望遠鏡の操舵ハンドルに固定的に設置した方が使いやすそうだ。手袋のまま操作するには、ボタンの数が少なく、ボタンが大きい方がより使いやすいと思った。
望遠鏡を組み立てるのに30分くらいかかるし、マウスのBluetoothがリンク出来ずにしばらくマウスと格闘したり、ハッキンカイロ4つに火を入れたり、上記の防寒対策をいろいろ準備するのに、さらに一時間くらいかかった。やれやれ。ここまでして星観るか普通?笑 いろんな準備に忙しくて星見どころではない。
防寒対策は比較的うまく行ったと思うが、望遠鏡組み立ての際に、薄手のビニール手袋だけでやっていたのだが、それが災いしたのか、帰宅後、手の指が軽く凍傷気味で、今もこの文章をタイプすると指が痛い笑。
冬の散開星団でも眺めようかなという程度のつもりで来たのだが、あっという間にオリオンが沈み、空にはしし座、おとめ座、かみのけ座、おおぐま座に覆われている。もうすっかり春の星座だ。明け方にはさそり座、こと座が顔を出してきた。今年こそ、メシエマラソンにチャレンジしてみたいと毎年思っているのだが。
よし、それなら今日は、今までほとんどチャンスがなかったおとめ座銀河団を制覇してみる。観るべき対象が多すぎるので、レコーダーの出番だ。でも使ってみると、レコーダーもマウスも両方とも右手仕様で、あっちを置いてこっちを持って、の繰り返しで忙しい。
夜半過ぎから記録を録り始めたが、下記を一人で喋っていた。(^^) この極寒の暗闇で、手袋したままペンでこんなメモなんて書いていられない。聞き返すと薄れていた感動や気付いた事などの詳細が蘇ってくる。レコーダーが完璧にメモの役割を果たしてくれた。
以下、ほとんどMasuyama 32mm(1.94°、43.8x、射出瞳4.6mm)だ。この気温だと目幅ヘリコイドもフォーカサーも異常に硬い。力づくで回さないと固くて動かないので、ほとんど同焦点化してあるとは言え、いよいよアイピース交換が億劫になる。空の条件はちょっと星が団子気味で、まあまあの空。
たまたま視界に入ってきた62P/Tsuchinshan彗星が、NGC4596、4608と共に三つ巴でしし座トリオみたいに見える。淡いけど。M58、59、60付近を片っ端から導入するが、20cm口径ツインでもどれもただの光のシミ。
NGC4568 問題のシャムの双子銀河 32mmでは双子に見えず。
M87 Viergo A マルカリアンチェーンのすぐ下 強い電波源らしいが、別に地味。
マルカリアンも、多分何で見ても視界の広さが違うだけで、どれもシミが並んでいる様にしか見えないんじゃないかな。
M88、マルカリアン終点?はまあまあ大きい。ちゃんと銀河の形に見える。腕とか見えないけど。
M90がちょっとエッジオンぽくて大きいけど、あとはただのシミ
M91もしょぼい。この付近はどこに向けても銀河だらけだ。
それに比べてやはりしし座の3バカトリオが、やはり大きくて立派。(親近感と共にこう呼んでしまうクセなだけで、悪意はないw) M65、66より、NGC3628の方がデカい。相当デカい銀河じゃないかな。9.13等級。11分。3500万光年。調べてみたら、M65、66と実際に近い距離にあるみたいだ。
M98は結構エッジオンでキレイ。
M99 Coma Pinwheel Galaxy、全然他のと変わらない。
M100もめちゃくちゃ淡い。そこにあるのは分かるけどシミ。
M85 地味だけどNGC4394と並んでる姿が特徴的。
いよいよかみのけ座 天頂付近
NGC4565 Needle Galaxy これは立派。デカい。しかも明るい。9.08等級。長辺16.8分もある。3900万光年。Nikon NAV12.5ではくじらの方が派手。
NGC4631 棒渦巻銀河Wheel Galaxy これもすごい。デカい。20cmF7BINOの最初期遠征で見た懐かしの銀河。8.89等級。長辺14.4分各。2400万光年。NAV12.5で観ると大迫力。視界いっぱい。
NGC4627 クジラのすぐ隣。ちょっと視認難しい。12.36等級。これは無理。
NGC4656 歪んだ銀河。9.49等級。
NGC4244 シルバーニードル 素晴らしい デカい。9.85等級。16.2分。1400万光年。比較的近い。
NGC4214 イマイチ
M64 黒目銀河 黒目には見えない。割りと小さい。ドブソニアンで見たら楽しそう。
M53 かわいい球状星団 久しぶりにみた。
M63 Sunflower Galaxy りょうけん座 デカくて立派 12.5でも広がってるのは分かるけど、腕っぽいのも見える気もするけど。8.52等級、11.8分、2900万光年。
NGC4490 Cocoon Galaxy まゆ銀河 それだけだと大したことない 直ぐ側のNGC4485と接触事故を起こして歪んでいるらしいが、歪んでいるのは見えなかったかな。今度もうちょっと着目してみる。
M106 立派 デカい望遠鏡で見たら構造が見えそう 8.31等級、17分、2500万光年。
NGC4236 ものすごい淡くて、気づけ無いくらい淡いけど、そこにあるのが分かると、クソデカい。9.71等級、23.5分、1400万光年。 おおぐま
M101 すごい淡いけど、腕がかすかに、すごいデカく広がってるのが分かる 24分 ちょっと淡い もうちょっと空がいいとすごい面白いと思う 12.5でかろうじて腕が見える 淡いけど、でかい。7.77等級、24分、2300万光年。
M51 ギリギリ 腕がなんか見えそうで見えなそうな 増山 NAV12.5で腕見える 子持ちと接続してる腕はちょっと厳しい 小さい方が明るい 大きい方は腕が視認出来る。7.92等級、13.7分、2800万光年。
M102 Spindle Galaxy 小さい 12.5で見ても小さくて面白くない。4700万光年。遠い。
NGC5907 デカいけどめっちゃ淡いエッジオン。5600万光年。もっと遠い。でもM102より見かけが倍くらいデカいので、相当デカい銀河なのだろう。
おまけ
M13 球状星団、久しぶりのつぶつぶ。大迫力(NAV12.5)アイピースを10mmにしても明るさの印象そんなに変わらず。つぶつぶが結構中心の方まで見える。今日は少し淡いけど。
おとめ座、かみのけ座周辺をじっくり腰を据えて挑んだのは、意外と20cmでは初めてで収穫は多かった。ああ、楽しかったw。またいろいろ見逃してそうだけど。いやほんと、変態の遊びだ(^^)。
さて、この20cmF7BINOを松本さんに譲って頂いてから2年が経過した。天候とスケジュールが許せば、季節を問わずほとんど毎月遠征したし、葉山芸術祭の月面散策ツアーや大人の夏休みツアーなど、沢山の人々にも楽しんで頂いた。僕自身、このBINOから数え切れないほどの感動と思い出を貰った。
最初はもっと軽い趣味程度のつもりが、焦点距離1400mmの、射出瞳を落とさずにクローズアップ出来る双眼観望の楽しさに、僕はハマりにハマった。マイナス11°の吹きさらしの山奥で、6時間もニヤニヤしながら座り込むほどに笑。10mmアイピースで両目で観る140倍、0.73° 射出瞳1.4mmの球状星団の迫力は小口径BINOでは決して味わえ無いし、100倍オーバーで観る方が銀河の腕がよく見える事もこのBINOで学んだ。低倍双眼で流す散開星団や天の川の宇宙遊泳は微光星で埋め尽くされ、筆舌に尽くし難い美しさだ。今までは存在に気づく事も無かった、暗くて小さな系外銀河などのNGC天体にも沢山出会えたし、馬頭星雲を初めて肉眼で見る事が出来たのもこのBINOだ。OIII越しのバラ星雲も凄かった。見たいものが多すぎて、いつもあっという間に薄明の時刻が来てしまう。
しかし先人の叡智が結集したこの宝物を、いつまでも僕が独り占めしては神様にお叱りを受けそうだ。だいたいの天体を二巡したし、20cmF7 BINOはそろそろ次のエンスージアストにお譲りして、僕はもう少しお気楽観望に移行してもいいのかなとも思い始めている。気が変わるかもしれないけど。(^^)
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