左からContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE), Leica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8, Sigma 105mm F2.8 DG DN MACRO Art。
またいつにも増してマニアックな話題(^^) ちょっと訳あって僕の手元に100mm神レンズが贅沢にも3本ある。誰もが認めた30年前の銘玉2本と、シグマの十八番とも言うべき最新のカミソリマクロ。実際の描写がどの様に違うのか自分の目で確かめたくなり、大先輩にAPOマクロエルマリート(通称AME)をお借りした。岡馬さん、この場を借りて御礼申し上げます!!
3本とも絞り開放はいずれもF2.8。重量はマウントアダプタを除いてマクロプラナー740g、AMEが760g、Sigma 105mm 715gで体感的な差はほとんど無く、いずれも十分重い(^^)。さらにマクロプラナーとAMEは至近距離に近づくほど前玉がメチャクチャ伸びる上に、マクロプラナーとシグマには7cm近いフードが全長に追加される。(AMEは引き伸ばし式の内蔵フード。)
写真はマクロプラナーにはヤシカ・コンタックスマウントアダプターが、AMEにはライカR→M→Lアダプター込みの長さだ。
Contaxマクロプラナーが運搬時は最もコンパクトだが、使う時は一番伸びる。ピント合わせ時に構図まで変わってしまうのは問題だが、収納スペースを取らない点ではアドバンテージとも言える。AMEはマクロプラナーほどでは無いが数cm伸びる。シグマは前玉位置が固定なので使いやすいが、3者とも伸び方が違うのでレンズを変える度に被写体までの距離が変わってしまい正確な比較が難しい。またマクロプラナーとシグマは等倍まで寄れるが、AMEは1/2までの制限があるのは考慮すべきポイントだ。
マクロプラナーとAMEは最短から無限遠まで、フォーカスリングを360度を2周回す必要があり、いつまでも回し続けてやっと辿り着く感じで、速射性はもちろん期待出来ない。シグマはAF付きだが速くは無い。一度迷い出すと最短から無限遠までゆっくり行ったり来たり始まってしまうと日が暮れる。
Leica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。
さらにシグマ105mmのMFは電子制御式なので仕方ないのかもしれないが、リングを回す→ピントを動かすシグナルをカメラに送る→カメラがピントを動かす、というプロセスと思うがリングを回していると頻繁にデータ落ち?して滑ってしまう。全然リニアに反応してくれず、MFの操作感は他の二本に比べると2ランク落ちる。車で言うとCVT的な感覚かな。一気に回そうとしてもうまく反映してくれないのだ。ライカMレンズに慣れたユーザーは、その使い心地を当たり前と思ってはイケナイ。
滑りながらいつまでもクリクリ30回くらい回す時間が無駄だしイライラするので(^^)、最初はAFで近づけて、最後はMFで自分でやるパターンに落ち着いている。
でもネガティブな部分はそれくらいで、紡ぎ出す描写はいずれも申し分のない品質を有している。実験前の先入観、イメージとしてはマクロプラナーが柔らかくてポートレート向き、シグマがどこにも非が無い優等生、AMEは最高級みたいなのは個人的にあったが、それは本当なのか。早速比較してみたい。
比較!
Sigma 105mm F2.8 DG DN MACRO Art 開放f2.8。以下、母艦は全てSigma fpL。
左がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、右がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。
等倍で比較したり頑張って違いを探そうとするが、だんだんどうでも良くなるほど3つとも同じだ(笑)強いて言うなら、マクロプラナーがやや暖色系に、シグマが寒色系、AMEがさらに寒色系に寄る。解像度は3つともほとんど誤差の範囲とも言えなくもないが、等倍で見るとほんのわずかにマクロプラナーが優しいか?そうでも無い部分も多々あってなんとも難しい。
それぞれのレンズでグレーカードを撮影し、Capture OneのPick White Balanceで測ってみると、マクロプラナーが6600ケルビン、シグマが6400、AMEが6200を示した。ちょうど200づつ差が出る様だ。
よく見るとコントラストはSigmaとAMEが同程度か?マクロプラナーの黒が浅い。これは特に動画の場合は、必ずしもコントラストが高い方が良いとも言えない。わざわざコントラストを思い切り落として撮っておいて、エディットの余白を残すのが現代の常套手段となっている。
次はそれぞれの最短撮影距離。(f11まで絞った。)
Leica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8
左がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、右がSigma 105mm F2.8 DG DN MACRO Art 開放f2.8。1/2マクロのAMEに対して、流石に等倍マクロ2機種の寄り方は半端ない。解像度の違いはほとんど誤差のレベル。
Sigma 105mm F2.8 DG DN MACRO Art。(f11)
左がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、右がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。露出が違って見えるが、多分前レンズ位置が移動した事による反射の違い。マニュアルで合わせていたはず。コントラストが高めで黒が締まるSigmaが暗く見え、黒が浮くマクロプラナーが明るい印象を与える。
Sigma 105mm F2.8 DG DN MACRO Art。(開放f2.8)
左がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、右がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。マクロプラナーとAMEが寄っているのは、テーブルが小さくてこれ以上テーブル三脚を引く事が出来ず、レンズが伸びた分、接近している。
一つ要注意なのが、古いプラナーはフードが超重要という事。このショットは85mm f1.4で使ってる深さ1〜2cmの短めのフードを装着しているが、純正は65mmも深さがある。Contaxプラナー全般が黒が浅いのはレンズの特性ではなく、フード長が足りない可能性に気付いて慌てて純正フードを注文したが、残念ながら今回のテストには間に合わなかった。
左がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、右がSigma 105mm F2.8 DG DN MACRO Art。(両者開放f2.8)暖色系に転ぶプラナーと寒色系のSigma。非純正の短いフードを装着しているプラナーに対しシグマは6cmフードを装着しているので、対等では無い。黒が浅いお陰でマクロプラナーが一番フレア感があって個性的に見えるが、フード装着したら違う印象になる可能性もある。
ちなみに現代Leicaレンズはフードはオマケ程度で、フード無しでも全然関係ない。AMEも浅い内臓フードで問題無いからそうなっているのだろう。
前玉が近づく分、三脚を目見当で下げて撮っているので距離は正確に同じでは無いが、全体的にボケはプラナーの方が柔らかいかもしれない。
左がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、右がSigma 105mm F2.8 DG DN MACRO Art。(今度はf11比較。)これは1.5秒開いたが、フード無しのプラナーは長時間開くほどどんどん白くなっていく気がする。
上がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、下がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。ほんのわずかにAMEが高精細か?これは手持ちのため距離もまあまあ違う。
100%比較。上がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)、下がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。うーん、拡大してみると解像力に差があるとも言えない気がする。となると、マクロプラナーはアウトフォーカス部が他よりフワっとしていて全体の印象付けているのか?或いはほとんどの違いはコントラストにあるのかな。よく分からない。
左がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。右がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)。手持ちなので距離感が違うので、ボケは対等の比較では無い。うん、ホワイトバランス以外、違いが全くわからん(笑)
左がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。右がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)。このショットはISOがオートになっていたのを忘れたまま撮ってしまい、あとでちょっと露出をあわせている。
ちなみに色は全てカラーチェッカーで作成したプロファイルを当てていて、彩度やコントラストはいじっていない。Sigma fpLのオリジナルカラーはハマる時もあるかもしれないが、全てが色褪せてしまう。
左が自作プロファイル。右がSigma fpLのオリジナルカラー。(Capture One純正プロファイル)Sigmaのデフォルトの色は緑が腐って見え、黄色と青は違う色に変色してしまう。なんでここちゃんと作らないのだろう。カンタンな操作で劇的な効果があるのに。Lightroomは試していないので分からない。
100%比較。左がLeica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。右がContax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)。もういいよね(笑)ピント位置が違うだけでほぼ同じ。どうせカラーチェッカーとグレーカード使えば色味も全く同じ。
結論。
科学的な検証をしたらもっといろいろあるだろうが、個人的にはどれでもいいや。(笑)
となると、現在中古市場で20万円〜程度で推移しているAMEに対して、4〜6万円程度で市場に溢れているContax マクロプラナー100mm f2.8はかなり穴場のお買い得レンズと言える。Sigma 105mmも新品で8万円強なのでリーズナブルには違いないが。
f2.8と言えども最短付近ではこの被写界深度。3mm〜5mmの範囲しかピンが来ない。Contax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)。
それでもAMEがほんのちょっと高精細側に転びやすく、マクロプラナーがほんのちょっとソフト側に転びやすい傾向はあるかもしれない。Sigmaは押しなべて優等生。流石現代レンズだ。あ、あとマクロプラナーは明らかにパープルフリンジが出やすいのはContaxプラナーの共通の問題と言えると思う。恐らく逆光耐性はマクロプラナーが最も弱い。
アポクロマート採用のAMEはその点はSigmaをも凌駕するはずだが、時間が足りず比較出来なかった。
Leica APO Macro Elmarit R 100mm f2.8。何でもない一枚でも、立体感はLeicaとZeissの大きな魅力だ。
レンズの描写の違いって、検証してみると明確な違いを探し出すのは結構難しいモノなのかな。それでも人はその繊細なニュアンスを感じ取ってそこに大金を投じる世界なのかもしれない。
AMEに関しては時間が無くて僕はまだ何も語れないが、大きな違いが無い中でもマクロプラナーがこの中では、一番個性的と言えるか?Leica M10Rを趣向する御仁はAMEかシグマ、M9や240を好む方はマクロプラナーを面白がる気がする。(^^) いつも優等生で何を撮ってもくっきりハッキリ信頼の結果を出してくれるレンズは、裏を返せば良い方にも悪い方にも期待をひっくり返すアクシデントが無い。それが必要かどうかはさておき。
レンズの一種の不完全さから来る味わいを、僕はどこかで期待しているのは昔から変わらないらしい。どれで撮ったかMETAデータを見ないと自分でもほとんど分からないのに(笑)。
皆様はどう思いましたか?
Contax Carl Zeiss Makro PlanarT* 100mm F2.8 (AE)。普通に撮って遊ぶとAMEはコントラストを上げる方向に、マクロプラナーは下げる方向に行きたくなる。
Contaxレンズのフード
Contaxプラナーは僕が所有するのは50f1.4、85 f1.4、100 f2.8だけだが、純正フードは全て86mm径に統一、合理化してあり拡張リングを介して装着する。85と100は同じ67mm-86mmステップアップリング、50は55mm-86mmリングを使う。
100がフード長が一番長い「メタルフード5番」(深さ60mm)、50と85が「メタルフード4番」(深さ30mm)だ。リングの厚みも5mmあるのでいずれも結構深いフードだ。長さが長いのにひっくり返して固定出来ないので収納時は嵩張るが、蹴られない限界まで長いフードを使いたいし、内側には適切な迷光処理が施されていてアマゾンの安物とは違う。純正を選んでおく方が無難だろう。
フード自体はヤフオクで山程出ているので入手しやすいが、そもそもContaxレンズはほとんどフード無しで売買されていて、必ず必要なモノなのにいちいち自分で調べて調達しなければならず面倒だ。
これは85mmプラナー。この時もまだフードは短い社外製。Sigma fpL, Carl Zeiss Planar T* 85mm F1.4 ©2021 Saw Ichiro.
ある計画の元にこの実験をやった訳だが、とにかく30年前のアポマクロエルマリートが現代でも十分魅力がある事も分かったし、マクロプラナーでも現代レンズに遜色無く仕事が出来る事が分かったので、次回はまた僕の無駄使いと迷走を晒す記事になるはず(笑)。