去年注文した90度対空双眼望遠鏡、APM120がドイツと日本を二往復して、ようやく手元に届いた。その間、10cm口径のAPM100まで送って頂いたり手厚くフォローして下さった国際光器さんを始め、イチローのわがままのせいで、多くの方に大変なお手数とご迷惑をおかけしてしまった。お陰様で最高のBINOになった。改めて感謝申し上げます!!
なので今日は、人様には全く推奨出来ない話を書く(笑)
問題の発端は、超広角アイピース、テレビュー社のイーソス13mmを意地でもAPM120で使いたいとイチローが言い出した事から始まるw。(前回の記事で詳しくご紹介している。)
イーソスの2インチスリーブが邪魔をしてピントが来ないだけで、ここさえ切断すれば夢の組み合わせが実現すると、イチローのいい加減な計算の元、最初は簡単に考えていた。しかしイーソスは一本9万円もする高級アイピースだ。失敗したら半年は深い悲しみから立ち直れない(笑)
そこで困った時はいつも救いの手を差し伸べて下さる双眼望遠鏡のレジェンド、松本さんにご相談し、様々アドバイスを頂いた。ノギスの使い方がなってないとか、有り難いお叱りを受けながらw長時間お付き合い頂き、なんとか切断に成功!切断自体は金鋸で、相手はアルミなので覚悟していたよりはスムーズに終わった。
そして切断完了してみて、無事スリーブに挿入出来たものの、なんとまだ無限遠にはピントが届かない事が発覚するお決まりのパターンw。この時点でイチローは絶望の淵に立たされている(笑)
松本さんも途中まで相談に乗ってしまった手前、引くに引けずに最後まで付き合わされる羽目になってしまった(^^)。本当にゴメンナサイ、、、
松本さんの次のアイディアは、底面も限界まで削り、さらになんとイーソス中間部を短縮すると、光路長そのものも短縮出来るとの事!2〜3mm程度までなら像質に影響しない事は分かっていると言われる。流石過ぎる!!
早速イーソス一式を鳥取のメガネの松本にお送りして、工作をお願いさせて頂いた。
この件が何度か松本さんのブログの記事にもなっていた(^^) この辺りの数枚は松本EMSサイトからの借用。
なんと6mmの短縮!こんな事が出来るお方は、世界中探してもこの方しかいないだろう(^^)
しかしここまでやって頂いても、なんとまだわずかに無限遠に届かなかった。イチローの計算はどんだけテキトーなのだ(笑)いや問題は、松本さん所有のAPM120では十分に合焦するのに、イチローの個体がNGなのだ。
アイピースのこれ以上の掘削は危険という事で、今度は対物レンズを内側に寄せる作戦に切り替えた。ネットで代理店用のアプリケーションマニュアルをみつけ出し、カニ目レンチまで買ってきて試行錯誤するも、どうやらボンドの様なモノで接着までしてあるらしく、押しても引いても対物レンズはびくともしない様だった。この作業も松本さんにかなりご尽力頂いてしまった。
ここに来て完全にお手上げとなり、国内代理店の国際光器さんにお願いして、ドイツの工場まで掘削したイーソスとBINO本体を送る事になった。本国APMの頑固オヤジ、いや社長は絶対に応じてくれないがw、幸い、APMの製造工場の方はユーザーフレンドリーで救われた。
待つこと数ヶ月を経て、無事にイチローの元に帰ってきたのであった。注文したのが昨年10月、修正版が届いたのが今年の6月末の事だった。
帰ってきたAPM120は、何事も無かった様に物凄い光路長のゆとりを持って、イーソスを使う事が出来た。APMの対物レンズの装着位置は元々かなり遊びがあって、実際、今回3台のAPM120でテストしたが、光路長が各個体により3mm以上も違っていた。よりによって、僕のが一番対物が遠かったのだ。そりゃ計算が合わない訳だ。
でもお陰でイーソス単体だけでなく、イーソスのバレルの先端に月面用NDフィルターやネビュラフィルターをつけても全然OK、2倍エクステンダー、3倍エクステンダーも全て余裕で合焦する完璧なマッチングとなっていた。
APM120とイーソス13の組み合わせで倍率50.8倍、実視界1.97°、射出瞳径2.4mmと、ディーブ・ギャラクシー散策BINOとしてまさに理想のセットだ。この場合、付属の18mmアイピースの倍率36倍よりも視界が広く、より拡大率が高く、さらにコントラストも高い。見かけ視界100°のイーソスは見渡す限り視界全部が宇宙になるため、まるで宇宙船の窓から覗いている様な素敵な体験が出来る。望遠鏡の価値の半分はアイピースで決まる。
2027年開業予定の宇宙ホテルは、ひとり一泊2,700万円らしい(笑)家族4人で一億円か。双眼望遠鏡とイーソスで地上で同じ体験が出来るなら激安じゃないか。
今回はたまたまイチローがイーソス13を所有していたので大変な騒ぎになってしまったが、APMからイーソスのコピーアイピースが販売されている。スペック的には近いので、覗いてみた事はないが最初からこちらを使う方が幸せになれると思われる。だいぶコスパもいいし(^^)
或いは最初から松本EMS-BINOを新調すれば、好きな2インチアイピースを制約無しにいくらでも使える自由度は何にも代えがたい。
くそ重いイーソスをAPM120のデフォルト・アイピースにするならば、今度は架台の前後、天地バランスも改造しなければならない。友人のエンジニアに架台パネルの穴開け加工を手伝って頂いた。いやはや、本当に多くの人たちのヘルプによって、このBINOは成立している。感謝!!
そして遂に完成。
アルカスイス規格のスマホ・クランプを利用する所がこのシステムの肝だ。なんでもワンタッチで好きな位置に好きなものを挟んで固定出来る、まさに一石二鳥のウェイトシステムだ。
バランス調節スライダー自体も、アルカスイスで脱着出来る様になっている。スペースに全く余裕が無いため、出来る限り薄いクランプを選んだ。
ウェイトの代わりに天体アプリと鏡筒の向きを同期するWifi発振機のNexus2のBoxを装着して、これだけでクランプ・フリーの完全バランスを達成した。よりアイピースが重くなったとしても、モバイルバッテリーなどいくらでも前方下部に追加装着出来る。
深夜の標高1,500mでは鼻息でアイピースが曇ってしまうので、天体アプリ用のiPadは鏡筒天面に載せずにサイドに固定した。iPadだけは水平回転軸だけに追従し、角度と高さは一定に保たれる。でも不必要にステーが長いので、固めでしっかりしてはいるがiPadをいじるとちょっと揺れが大きめで、改善の余地あり。
ついでに操舵ハンドルも付けた。スペースに余裕が全くなく、ギリギリの設計だがなんとかどこにも干渉せずに行けた。真夏でもダウンジャケットが必要な環境下だ。フカフカの自転車用ソフトグリップを装着する事で、素手で触っても冷たくないし、握ったまま覗いても微振動を拾いにくい。我ながらナイスアイディア(^^)。
これを使う人は全員ファインダーが必要になるはずなのに、最初から適切な場所にファインダーステーを用意してくれない所が海外製品の詰めの甘さ(^^) 両面テープがうまく行かず途中で落ちてしまうので、仕方なく金属バンドで様子を見てる。もっと良い方法ないかなあ。微妙にカッコ悪いし。
赤いバンドはUSBレンズヒーター。これが無いと夜露によって、ものの1時間で対物レンズが曇ってしまう。ほんのり温かいかな?程度なのだが、これだけで一晩中クリアな視界が確保出来る。
それからAPM120の台座の裏面に、ホームセンターで買ってきた両面テープ付き凸凹ゴムシートを貼っただけで、いきなりスライドしてBINOがズレるトラブルが一切なくなった。めでたしめでたし(^^)
以下、この工作で使用したパーツのリンク。