2018年4月21日 ichiro

Leica Mの機種別・メリットとデメリットまとめ

Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/11, 1/125s, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

最初は誰しも「ライカ+自分」の実験段階から始まる。もう少し発展すると、次第に「自分+ライカ」つまり道具の恩恵にあやかりつつも、主体は人間である事を意識する様になるし、またそうあるべきだ。最後は「自分+カメラ」、もはやライカであるかどうかは重要では無い段階に、至らなければならないと僕は思っている。


Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/60s, ISO 1600) ©2018 Saw Ichiro.

そろそろ、ライカというアイデンティティから脱して、カメラは何でもいいから、自分はどうする、という方に真剣に向き合いたいと思うようになってきているが、しかしそうは言っても道具選びが絵に与える影響は計り知れず、撮影者本人がその有り難みを次第に忘れていったとしても、ライカが影でサポートしてくれている絵作りの「妙」は、消え去る事は無い。


Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/60s, ISO 1600) ©2018 Saw Ichiro.

世間のライカ・デジタルの画質に対する論評は、M9、M Typ240、M10はそれぞれ、出てくる絵はほとんど同じで、いずれも素晴らしいとされる事が多い。それはある面で正しいし、特に現像で結構手を入れる人にとっては、ほとんど違いは無いと感じる人も居ると思う。しかしそれは時に、言外に現オーナーに対する配慮が含まれていたりするし、もう少し詳しく語る事を許されるならば、それぞれから出てくる絵は実際にはかなり違う。

Mと深く付き合っていくほどに、これらの違いに必ず目が向くようになる。これから真剣にMを選ぶ人にとっては、今後の全作品に影響を与える大問題だし、それぞれの具体的なキャラクターを事前に把握しておく事は意味がある。


Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/60s, ISO 1600) ©2018 Saw Ichiro.

なかなか僕の様に小遣い全部注ぎ込んで、ライカを取っ替え引っ替えする阿呆者も少ないと思われ^_^、せっかく各モデルをしばらく使った身として、それぞれ自分が感じた率直な所を、出来るだけ詳しく記録しておこうと思った。僕は今はS-Eに移行してしまったが、だからこそ上記3機種を冷静に客観的に今なら書けると思う。(M8とモノクロームに関しては何も知らないので書けない)

この記事がご自分のスタイルに合ったライカに、最初から出会えるきっかけとなったら嬉しいが、あくまで個人的な独断と偏見に満ちているので^_^、話半分の参考程度にして頂ければ幸いです。

Leica M10 (2017〜)
写実の頂、Mカラー機の解像番長。

M10を手にするという事は、世界で最も優れた描写の(最も優れたスペックの、では無い^_^)カメラの一つを手にする事と同義だ。底抜けに明るい清々しい白と青。程よく濃厚な発色と明るめの露出の出方で、変な癖や偏りが無い、誰にとっても使いやすい絵と思う。絵に次世代的な新しさを感じる点は一つのキャラとも言える。

ホワイトバランスも、ごく一部の条件下を除いて非常に安定していて優秀そのもの。(M10のシンプソンズカラーの問題は、ライカ社に報告済み。これはM10本体ではなくLightroomのM10プロファイルに原因がある事が判明。そのうち改善されると思う。つまりCapture Oneでは発生しない。)

色の出方がM9的と言われるが、確かにM240とは明らかに傾向が異なるし、M9的と言われればそういう感じもするが、M9を知る者にとってはやっぱりちょっと違う気もする。


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/8.0, 1/125, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.

メリットとデメリットはいつも表裏一体で、誰にとっても高解像で綺麗な絵という事は反対から見れば、やや優等生的で普通になったとも言える(普通と言っても、変態性が落ちたという意味で^_^、品質は極上)。後述するM240やM9は絵作りに強い個性があり、そこがライカ的で面白かったのだが、そういう楽しみは薄れた。例えばブライダル・フォトに使う場合、歴代Mの中でM10が最もハッピーに、また昨日の出来事の様に撮れると思う。そんなイメージ。

真っ黒の汚い写真が撮りたかったり(笑)僕の様な優等生とは対極の人間としては、この点で結構悩んだ。人間とは常に無いものをねだる。余計な個性が無い分、表現者の素材としては最適とも言える。普通、汚い写真を撮りたくてライカを求める人はほとんど居ないと思われ^_^、緻密で美しい描写という点において歴代Mの最高峰に変わりはない。


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/60, ISO 400) ©2017 Saw Ichiro.

M9やM240を圧倒する驚愕の解像度は、度々撮影者を驚かせてくれる。ビッシビシのハイファイな絵を求める方は、迷わずM10一択だ。特に現行のアスフェリカル・レンズと合わせると、中判カメラに劣らない究極的な解像力を見せる。反面、写真から受ける第一印象が、撮影者の画作りに先立って、解像度の方に目が行きがちな側面はあるかもしれない。これは美点でもあるが、いつもそうなってしまうのは僕はデメリットにも挙げて良いと思うようになった。何かこう、人間よりもカメラの優秀さが際立ってしまう様な(笑)カメラの性能を誇示するための写真に陥りやすいとも言える。実力のある人ならそういう事にはならないかもしれないが。

これと似た意味合いで「クリア過ぎる」という表現で意図的にM10にアップデートしないMユーザーも存在する。新機種に対し、厳しい批判が耐えないのはいつの時代もLeicaの常だ。それだけMオーナーは自分の機種を愛しているのだろう。

もちろん、チョイスするレンズや現像をうまくやれば柔らかい絵も撮れるが、高性能機なだけに最新鋭たる現代的な主張が絵から滲み出る。柔らかさや汚れた質感などは他モデル以上に工夫が要求されるかもしれない

Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125s, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.

独立したISOダイヤルは特にナイトシューターにとってメッチャ使いやすい。高感度耐性も歴代Mの中で最高で、ほぼ無敵。いくら上げても全然関係ない。でもライカの高感度ノイズはフィルム的な粒子感があり、それはそれでカッコイイのだが、M10でそれを出そうと思ったらISO6400とかが必要になってくる。ズミルックスとか開放で使おうものなら、夜や室内も普通はISO400〜800辺りが常用ISOになるので、ISOノイズとは基本的に疎遠になる。

視界30%増し、アイレリーフ50%増し、倍率を0.73に引き上げたM10ファインダーは確かに魅力的だ。しかしほとんど語られないが、M10ファインダーは視界の広さと引き換えに、ほんのわずかだがコントラストが下がったと思う。M9、M240の方が二重像のコントラストがハッキリしていて、ピントが見やすい場面があるのだ。特に逆光時は全く見えなくなる時が稀に発生する。一長一短。またファインダー拡大率を上げるマグニファイヤーが、M10専用のモノが未だに出ない。75mm以上のレンズには必需品と思うのだが。


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0, 1/4000s, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.

細かい所ではライブビューの拡大ポイントのカーソル移動が出来る様になった。これは三脚を多用する人には大きいメリットで、固定したままフレーム内のどこにでもピントを合わせやすい。M240は中心しか拡大出来ないのでフォーカスリングを触るために、いちいちカメラごとパンニングする必要があった。これが超めんどくさい。

薄くなったボディも美しいし握りやすいが、軽くは無い。ズッシリ来るM240よりはほんの少しだけ気楽だが、実際には重量はほぼ変わらない。M9の方が気分的に軽快感がある。重量差は小さいが、毎日持ち歩くとなると結構この差が大きかったりする。


Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/4000, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.

 

Leica M Typ240 (2013〜)
甘美な陰りを帯びた極上の品格

M Typ240と書くのが面倒なので、M240と書く^_^。M240の絹のベールを纏った様な薄いフレア感、ハイライトがダイレクトに来ない感じの優しい階調表現は実に美しく、他のどのMにも似ていない個性的なものだ。(モノクロで撮っても同様の傾向がある。)前面に抜けて来る色の強さ、ねっとりと油絵の具を乗せた様なM9とは、ある意味で対極と感じるほどに違う。


Leica M Typ 240 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/750, ISO 200) ©2017 Saw Ichiro.

この違いをCCDとCMOSの違いと解釈し、M9ラブの人の中にはM240の質感を受け入れられない人も居る。しかし僕はM240の絵の品格にこそ、ザ・ライカ的な凄みを感じるし、日本のカメラと全く異なるM240の質感描写に、ライカの個性の歴史的、文化的な起源すら想像してしまうのだ。

FBグループの先輩にお願いして紹介させて頂いた。Apo50のボケも秀逸。岡馬さんの作品は、いつもM240の美点を見事に表現に活かされていてうっとり。LEICA M(TYP240), APO-SUMMICRON 50mm f/2.0, by 岡馬 勲氏。

何かこう、静けさを感じさせると言うか、恋に落ちているかの様な情緒的描写。このM240の独特で上品な雰囲気は、背景にある感傷的なストーリーを閲覧者に連想させる力がある。

これはどういうメカニズムから来ているのだろうと、自分なりに分析した事がある。僕の結論は、ホワイトバランスに大きな特徴があった。ライトルームでは色温度(Temp)と色かぶり補正(Tint)と表記されるが、このTintが、ほんのわずかに、それと気がつかない程度に緑に偏る特徴があり、緻密で優しい階調表現と相まって、これが絹のベールの一つの要因だった。ちなみにTintをマゼンダ側に調整すると、霧が晴れてその後ろの色味がダイレクトに来る感じになる。(かと言って他のモデルでTintを緑に寄せてもM240的にはならない。)

これは正確な色味を求める意味では欠点とも捉えられるが、M240の場合はここが美味しいし、どのライカも一長一短あり色味が完璧に正確なライカは無い。ちなみにLeica S-E Typ006のLightroomのプロファイルだと、タングステン下では反対にTintががっつりマゼンダに寄り、こちらは百害あって一利なしだ(笑)おかげで撮った絵のホワイトバランスを日常的に触る習慣がついた。(Capture Oneでは問題無い


Leica M typ 240 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.0, 1/1000s, ISO 200) ©2017 Saw Ichiro.

M9に比べ彩度はややジェントルで自然になった。(と言ってもソニーとかよりはぐっと鮮やか)M9フェチからすると彩度をちょっと足したくなる場面もあるかもしれないが、それはM10も同じで、ほんの少し自然な彩度(Vibrance)を足して黒を締めた絵が僕は好みだった。今は逆に、彩度をやや落としたN.Y.スタイルの現像にハマっていて、M240の質感がストライクゾーンど真ん中だったりする。^_^

突き詰めればどのライカもカラーチェッカーパスポートが効くし、これ一発でどのモデルもある程度共通の描写が得られるはずだ。でも大切なのは何も人間が操作せずに、最初にカメラから出てくるデフォルトの表現であって、ここからオーナーは多くのインスピレーションを受けるし、後の現像が向かう個性を決定付ける影響力がある。

以前使っていたM240一式。Epson, EPSON GT-X830, Hasselblad 500C/M, Makro Planar CF 120mm F4

M240の魅惑のベールは、PCを使ってTintを自在に調整出来る人なら適宜触ればいいが、そうで無い場合は全ての絵に僅かながらも同様の傾向が現れる事になり、それがその人の個性の一旦を担う事はメリットにもデメリットにもなり得る。ビビットで派手な絵作りをしたい人は、最初からその傾向のあるM9や、進化版のM10を選んだ方が早いと思う。


Leica M typ 240 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.8, 1/1000s, ISO 200) ©2017 Saw Ichiro.

M240はM9からあらゆる点で進化した。線がより細く繊細に、きっちり解像度が向上し、何より白黒の濃淡、階調表現のクオリティが一段と上がり、味わい方が大人になった。ダイナミックレンジが大幅に向上し、暗部、明部ともに描写に余裕が感じられる。M10がある今では見落としがちだが、高ISOも現実的に使いやすくなった。オールドレンズの組み合わせも相性抜群で、何もしなくても雰囲気満点の「作品」にしてくれる。カメラとしての様々な動作パフォーマンスも格段に向上し、液晶も快適になった。前述の拡大が中心のみでカーソルの移動は不可のため、三脚は使いにくいが。

特筆すべきはMで唯一、ムービー機能がある。多くのMユーザーからすれば無用の長物かもしれないが、僕は年に数回、ビデオ撮影が仕事で必要になり、そのためだけに今はFuji Xも所有している。しかしM240だけで撮影された映画が存在するくらい、その質感にはしっかりとM240の美点が反映されていて魅力的だ。


映画『白河夜船』。M240 1台と35ミリのレンズほぼ1本で撮影したそうだ。

ただ実際使ってみると、小さい液晶のライブビューを見ながら、MFレンズでムービーのピントを正確に合わせ続けるのは至難の業だ。特に50mm以上のレンズでは厳しい。三脚固定でちょっとしたナレーション等なら十分使えるが、本気でムービーをやるならAF付きのSLの方が無難と思う。(逆にSLで撮ったらこの映画のアンニュイな空気感が、かなり違うものになっていたと思う。)

M240を持って出る時、ほんの少しだけ気持ちが身構えてしまうのは、その重さだ。M10 660g、M9 580g、M9-P 600gに対し、M240は680g。ほんのわずかな違いだが、手にするとボディの厚みも相まって、結構ズッシリくる。ここが将来、より軽いモデルへの買い替えのきっかけとなったりする。まあSを持ち歩く事を考えれば余裕だが。


Leica M typ 240 + LEICA 90mm f/2.8 ELMARIT-M (ƒ/2.8, 1/125s, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.

重さと共に起動の遅さもM240の明確なデメリットだ。確かスリープからの復帰がシャッター半押しで2〜3秒くらい待たされる。これで何度チャンスを逃した事か。対してM9は俊足だ。M10はM240よりは速いくらい。

M9は中央重点測光しか無かったのが、M240はスポット、マルチ測光も装備した。僕は中央重点しか使わないから関係ないが。Mシリーズ中、バッテリーの持ちは一番長いと思われる。LVを使わないなら予備バッテリー買わなくてOK。

 

 

 

Leica M9 (2009〜)
手放した後で後悔する孤高の名機

ライカとコダックの融合が生み出した奇跡の化学反応がM9であり、後にも先にもこの様な傑作は生まれないと僕は思っている。超写実的なM10に対し、油絵的なM9。素晴らしい描写性能だが、後継機に比べると線がほんのり滲む。そこが高解像なのに絵的になる美点だ。今となってはクラシック・ライカの描写として、その濃厚な発色や古典的表現は、今でも多くのファンに愛される。


昨年3月ごろの僕のM9-Pセット。今ならレンズもボディも絶対手放さないのだが。

僕はM9は短期間しか所有しておらず、多くを語る事は出来ないし、時間が経って脳内で妙に美化されている感は否めないが、M10を手に入れても尚、長い間M9に恋い焦がれていた。いや、M10の超高解像&高性能機を経験したからこそ、M9の価値を再認識したとも言える。僕はM9P所有当時、線の滲みは単に後継機に劣っていると捉えていた。

赤、青、黄が不自然に飛び出してくる濃厚な発色は、真面目に受け止めれば十分問題だが、アイキャッチ度は最高に高い。(よくこんなふざけ、、いや素敵なカラープロファイルを採用してくれたものだw。)全体的にややアンダー寄りの露出の出方と相まって、写真としてなんとも魅力的な方向に勝手に転がってくれる事がある。画集で知ってる絵を美術館で見た時に、実物はこんなに鮮やかだったのか!と驚くのに似ていると書いたら褒め過ぎか?子供の唇が、ドギツイ口紅を付けたようになってしまうのはご愛嬌。

M9のみ1800万画素でクロップの自由度は他の2400万画素シリーズより低い。撮って出しjpgのクオリティも低いので、基本はRAWで使う。黒が真っ黒にならなかったり絵自体にちょっと古さを感じる瞬間は間々あるが、ハマった時に得られるM9の力強い絵は代えがたいものだ。M240はそもそも目指している方向が違う気がするし、M9に似せたと言われるM10ともまた一味違った大味なエネルギー感がそこにはある。

Mとしては唯一無二の描写と言えるが、カラープロファイルはやや異なるものの、Leica S Typ006でも同様のニュアンスが得られるのは意外と盲点だ。


Leica M9 + Leica Summilux-M 1st 1:1.4/50 (ƒ/4.0, 1/350, ISO 160) ©2017 Saw Ichiro.

今の視点で正直に言えば、液晶のクオリティはかなり厳しい。こんなの撮れたよ!とモデルさんに液晶を見せたらきっと、今日の撮影結果は期待出来ないとやる気を失わせるに違いない。^_^動作パフォーマンスも至る所で旧式感は覆い難く、ちょっと連続してシャッターを切ろうモノなら、その後一分間くらいシャッターを受け付けなくなり、ひたすら書き込みに待たされる。SDカードも16GBまでしか認識しないし(32GBも実際には使えるらしい)、2018年において正直、これらの問題はしっかり覚悟しておかないと、新規ライカ参入者をがっかりさせるかもしれない。

しかしそれらパフォーマンス面などは、フィルム時代を思えばどうでも良い悩みで、液晶などは見なければいい(笑)カメラに新機能など不要、優れた写真に必要な要素は、M9は全て揃っていると知るに至った写真家にとって、永遠のファーストチョイスだ。貴方がこの世を去る日まで、ずっと貴方の傍らに置いておけるだろう。


Leica M9 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/250, ISO 160) ©2017 Saw Ichiro.

ベースISO 160というのは、ISO160のフィルムを使い慣れたベテランなら困らないかもしれないが、他のカメラと2台持ちなどは計算がややこしくて仕方がない。ちなみにM240のベース感度は200、M10とS-Eはシンプルに100で分かりやすい。ISO100はシャッタースピード1/4000sで、f2.0でも日中白飛びを防げるが、ISO200の場合はちょっと絞るか、開放で使う場合はNDフィルターが必要になる。

ISOノイズはフィルムライクで僕にとってはISO800以上もウェルカムだが、解像感が欲しい場面ではISO400以上は上げたくないかもしれない。同じCCDのLeica S Typ 006と比較して、画素数に対する相対的なISOノイズの粒子サイズは異なるが、基本的には同じ条件となる。

それから僕は広角レンズを使わないから分からないが、35mm以下のレンズでは色被りの問題があってM9は使いにくいらしい。M10で劇的に改善されたそうだ。

スリープからの起動はMデジタル中、最速。また最軽量なのも大きな美点だ。持った瞬間、軽さを実感できる。(もちろん普通の日本のカメラよりは金属の塊感はあるが)


Leica M9 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/9.5, 1/1500, ISO 160) ©2017 Saw Ichiro.

ブライトフレームもM240からLEDとなったが、M9は昔ながらの採光窓で、電源を切っている時でもフレームが見れる。この採光窓が外見的にクラシックな佇まいに貢献していて、個人的にはM9-Pのデザインが一番カッコよく見える。シャッター音もフィルムを巻く様なジーという音が残り、触っているだけでクラシックカメラで撮っている喜びに溢れる。

中古価格帯もM9は随分下がっていて、ヤフオクなどでは30万円台前半で推移している様だ。かたくなにM9から動かないドイツ人のフォトグラファーの友人が居るのだが、彼らは新しいモデルに全く目移りしないので、M9を愛するもう一つのメリットは、将来ボディに散財せずに済む事だろう。その分レンズにつぎ込むだけだが。^_^

今後も各社、シャープネスに向かって突き進むと思われ、そんな時代だからこそM9の絵のあり方が再評価されていくに違いない。


ISOノイズの出方はLeica S-Eと同じと言っていいかも。Leica M9 + Leica Summilux-M 1st 1:1.4/50 (ƒ/1.4, 1/125, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.

 

まとめ。さてどれを選ぼう

三者三様、全然違う特徴を持つライカM・デジタル。こんな面白いブランドは他に無い。どのモデルでも楽しい事は間違いないが、明確なビジョンがある場合は、どのモデルが自分の求める表現に近いかをしっかり見極める必要がある。

貴方がデジタル世代で、もし自分の撮りたい絵をこれからライカと共に模索する場合は、M10から入る事をオススメしたい。きっとライカの底力に驚嘆するし、常に新しいモデルに目移りしながらでは、今のカメラを本気で愛せない。最初から最高の性能を体験して、それからじっくり優位な見地から見極めていくのが良いと思う。(M10は新しいのでリセールバリューも最も高い^_^)問題は、もうすぐM10-Pが出るので悩ましい日々が続く。

サラ・ムーンソールライターの様な、フィルム時代の柔らかいアートを好む人は、M9、或いはM240+オールド・ズミルックス、ノクチルックス2ndなどの組み合わせがシックリ行くと思う。ザ・4K、5Kみたいな現代的なルポルタージュ、ストリートはやっぱりM10、そこにライカ的アートの風合い、情緒的階調美を求めるならM240がハマると思う。

学生には、ツベコベ言わずにボロいM9を中古で買って、ズミクロン一本で3年使えと言いたい^_^。良くも悪くも、日本のカメラとはこんなに違うのか!と多分驚くし、出て来る絵は本当に凄い。最新機種を自慢するオジサマ達がひっくり返るような素晴らしい作品をM9一本で撮りまくる若造。これが一番クールかも。^_^

また過去を振り返らず、フィルムに憧れる様な懐古的な作品作りを意図的に避け、あくまで最新鋭の道具で今しか撮れない写真を持って、自分の実力を世に問う選択もまた、最先端を模索するアーティストの姿とも思う。

色味の事をいろいろと書いたが、これは実はアドビLightroomのカラープロファイルのさじ加減で一喜一憂しているに過ぎない事が分かってきて、Capture Oneでは全然違ったキャラになる。従ってこれらの話はもしかしたら突き詰めればどうでも良い話かもしれない。

 

 

番外編
Leica S(Typ006。2012〜、S-Eは2014〜)
M9〜M10のいいとこ取り。異次元のライカ中判

基本的にはMと並べて比較は出来ないが、超高解像度も、クラシックアート的な質感も、ISOコントロールで意外と幅広く楽しめる。手ブレが異常にシビアだしAFも連写も激遅だが、工夫次第でいずれも乗り切れる


woman in the rain. Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/11, 1/125s, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

中判のメリットは解像度や画素数も然ることながら、特筆すべきは物体の形の正確性だ。LFI(ライカフォトグラフィー・インターナショナル)という雑誌で、SとSLの絵が混在する号があるのだが、Sで撮ったものか、SLで撮ったものか、答えを見なくても僕は全部言い当てられる。一度違いに気付いてしまうと、もう気になって仕方なくなる様な、そんな絵のあり方の違いが、実際ある。(だからと言って35mm版が劣るという意味では無い。ほとんどの人にとってはどうでもいい違いと思うし、35mm版の方が美味しい場面も多々ある。)

どんなにクロップしても全然OKという構図の自由度が残されるのも、僕にとっては有り難いポイントだ。だからやっぱり、ストロボを炊いて大切な絵を残す場面では、僕はSを選ぶと思う。ちょっとだけ絵が別格なのだ。


woman in the rain. Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/11, 1/125s, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

その代わりデメリットは山ほどある(笑)。そもそもクソ重いのでMとは活躍の場が異なる。僕はまだ無理して持ち歩いているが、いつまで頑張れるか分からない。S用レンズも多くはf2.5なので、ズミルックス、ノクチルックス的な大きなボケは期待出来ないし、柔らかい絵が欲しくてもそのレンズの選択肢がそもそも存在しない。僕にとってはここが一番辛い。

通常の構え方では1/125sでも手ブレの危険を伴うので、僕は特殊な構え方に行き着いたが、そのためにSではオートフォーカスレンズしか使いたくない。ホワイトバランスの精度も過去の産物で、M10から入るとビビる。


Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/60s, ISO 1600) ©2018 Saw Ichiro.

M9と同等のコダックCCDのTyp006の、ISO1600が個人的に大好きで、まるでブローニーフィルムの様な風合いになる点で、006を積極的に選ぶ理由は十分にある。一方、S Typ007は実にあらゆる点で進化していて、よほど思いつめない限り普通はそっちが安全と思う。(僕の様な変態寄りの人にとっては、逆に007では超高解像の綺麗な絵しか撮れないという見方もある。)Typ007の4kムービーも僕が知るカメラの中で一番素晴らしいと思った。

僕は最初、大事なのはレンズであってボディは関係ないと思っていた。間違ってライカに興味を持ってしまったお陰で随分散財したが^_^、こういうお馬鹿も居た方が面白いと自分に言い聞かせているし、実際とても勉強になった。

大変長文になってしまったが、この記事が誰かのお役に立つことを願っています。

, , , ,