FUJIFILM GFX100S, Contax Carl Zeiss Makro Planar T* 100mm F2.8 ©2022 Saw Ichiro.
見果てぬ夢とは聞こえはいいが、ただでさえ手狭なのにこんな巨大な物体がリビングに鎮座していたら家族からのブーイングは免れない。テレビが半分見えなくなった代わりに(^^)、数千万光年彼方の深宇宙が見える。何かに夢中になると、ほどほどの所で賢く手を打てないのは僕の子供の頃からの悪習だ。幾つになっても阿呆は治らないらしい。
せっかく口径12cmツインのAPM120を手にしたばかりで気に入っていたと言うのに、立て続けに今度は20cmの世界だ。
こちらは手軽さが魅力のAPM120SD。ここは乗鞍だっけな?FUJIFILM GFX100S, GF50mm f3.5 R LM WR ©2022 Saw Ichiro.
屈折望遠鏡として20cmというのは、大き過ぎるし重すぎるため普通は求める人など居ないし、少なくとも国内ではどの店を探しても売ってない。各メーカーの最大口径の屈折式は15cmというのがこの世界の常で、それ以上は反射式になる。昔は公共の天文台の主鏡は15cmが主流だったらしい。だからそれ以上のレンズというのは、何でもオーダーメイドを頼めるお金持ちか、ラッキーが重ならない限り手に入れるのは難しい。ましてや2本セットだ。
筋金入りの猛者ならいざ知らず、僕の様ななんちゃって天文ファンにとって、そんな一生に一度?のチャンスは双眼望遠鏡界のマイルス・デイビスがもたらしてくれた。もちろん鳥取のメガネのマツモトさん。世界中の屈折式・双眼望遠鏡の写真には大抵、松本さんが開発したキーパーツ、EMSが装着されている。この20cmF7-BINOは、3年前に制作された彼ご自身の所有物だった。モノは試しに聞いてみるものだ(^^)。
思い返せば2013年にも、やはり松本さん所有の10cm BINOも僕に譲って下さった。松本さんのおふるは全部僕が頂戴している(笑)いつもいつもありがとうございます!
9年前の写真が出てきた。(^^) 2013年、10cmF5-BINOと共に。左はichiro、右は松本さん。確か奥様が撮って下さった。メガネのマツモトより。この時も嬉しかったなあ。
2021年。二人とも少し年をとった(^^) 9年を経て口径が2倍になった訳だが、全体の質量は10倍になるのは何故だろうw。FUJIFILM GFX100S, GF50mm f3.5 R LM WR.
20cm屈折というのは通常一本で30kgとか重量があり、長さも2mとかあったりして、例え一本でも腕を前方に伸ばしたまま顔の高さの架台に乗せるのは、よほどのマッチョでない限り危険を伴う。クルマに乗せるにも助手席も後部座席も寝かせて、タテ一列全部を鏡筒が専有するだろう。それを二本乗せるに耐えうる架台と三脚まで考慮すると、双眼化は現実的では無い。
国立天文台の20cm(左)、札幌市天文台の20cmF13(右)
そこを松本さんの斬新なアイディアで望外の軽量化がなされていて、この20cmF7 BINOは鏡筒二本で33kgを達成している。現場で組み立てるため、各モジュールは重くても8kg程度と腰を痛める心配も無い。
望遠鏡二本を台座に乗せる既存概念を超えて、一枚の中央プレートの前後端に、対物レンズと接眼部を装着し、間の鏡筒は遮光するだけという奇想天外な発想で、限界の軽量化に挑戦している。対物レンズのセル兼ハウジングは、なんと寸胴鍋(超薄アルミ)が使われていて(笑)20cm 2枚玉レンズのヘッドが驚異の一本4.3kg!重厚な3枚玉13cm鏡筒よりも軽いかもしれない。この20cmは夢のポータブルBINOなのだ。
20cmF7のフレーム構造。
とは言え30kgの重量物を乗せる足は、安全性や安定性のために質量が必要だ。架台はPanther TTS-160(16kg)を、松本さんオリジナルの水平回転軸+ピラー(18kg)に乗せる。電源やウェイトも合わせると一般ワゴン車のトランク・スペースだけではどう頑張っても収まらず、後部座席を侵食する。
一つひとつのモジュールの重量は大した事は無いが、合計重量は80kgほどになり部品点数も多いので、車の積み下ろしはお世辞にも楽々とは言えない。氷点下であっても組み立ても撤収も一汗かける(^^) そもそも自家用車で運搬出来る事自体、称賛に値するが、人はすぐに慣れてしまって贅沢になる。
対物レンズ(アルミ蓋付き)5kg x2
メインフレーム 8.6kg
マツモト製3.5インチ・フォーカサー 2kg x2
EMS-UXL 1kg x2
遮光用塩ビ鏡筒 2.8kg x2
前後ウェイト付き操舵ハンドル 1.6kg x2
天地ウェイト 8kg
ポータブル電源(兼ウェイト) 7.8kg
Panther TTS-160 16kg
マツモト製ピラー 18kg
アイピースはイーソス13が2本で約1.2kg、マスヤマ32mm2本が900gある。
このBINOによって、まだ誰も辿り着いていない次の100年を規定する基本概念に、松本さんが「王手」をかけたと僕は勝手に思っている。ドブソニアンの進化がそうだった様に、大口径屈折BINOをトランク一つに全て収めて海外遠征する未来は、もう目前だ。ニュージェネレーションBINOの夜明けだ!
松本さんにとっては、これが愛機とのお別れの日だ。大切に使わせていただきます!
レンズ
対物レンズは今は亡き、所村氏(日本屈折光学)の研磨(遺作)という事で、その世界では有名人だった彼は生前、俺の自信作は鳥取の松本の所にあると周囲に語っていたそうだ。それを15年間もお店の廊下に放置していたらしく(笑)突然松本さんの中で何かひらめいて、3年前に晴れてBINOとして日の目を見ることになった。
ノンコート2枚玉のアクロマートなので当然、現代の日本製SD(ED)レンズを使ったAPM120の方がシャープネスもコントラストも鋭いのだが、大口径の余裕の解像感と、1400mmの焦点距離により無理の無いアイピースで高倍率を出しやすく、思った以上に快適でよく見える。試しに494倍で月面を眺めても見事な景色だった。
Leicaで例えるならAPO-Summicron 50と初代貴婦人Summilux 50の様な違いだ。いや、ブレッソンのエルマー5cm f3.5の方が近いかな(^^) ケタ違いに明るいエルマーという訳だ。
FUJIFILM GFX100S, Contax Carl Zeiss Makro Planar T* 100mm F2.8 ©2022 Saw Ichiro.
清里の標高1500m。1月の新月期でマイナス9°の中、見たいものが多過ぎて朝4時半までねばった(^^) 3時過ぎから雲(霧)に覆われてしまったので写真を撮って遊んでいる。ISO6400、F4.0で20秒開いたから見えているが、本当はカメラをどこに立てたか全く見えない、漆黒の闇。
自分より巨大な物体が、クランプ・フリーで指一本でウルトラ・スムーズに動く様は、文字通り快感だ。この喜びは実際触った人しかピンと来ないかも。望遠鏡の質量が大きいため、アイピースを替えたり少々の事ではバランスが崩れにくく、観望中はかえって小口径よりも扱いやすい事も学んだ。
アイピース
手持ちのアイピースは以下の通り。とっかえひっかえするのが面倒なので、最小セット。以前はいろいろ持っていたがこれだけ残った。イーソスとマスヤマが圧倒的に見やすいので、ほとんどこれしか使わない。たまにもっと倍率が欲しい時は、Explore Scientificの2x or 3xエクステンダーと組み合わせる。このエクステンダーはとても秀逸で拡大しても像質劣化を全然感じない。笠井バローレンズと見比べて余りの違いに度肝を抜かれた。
APM120ではイーソス13で50.8倍(1.97°)が主戦場で、20cmF7は同じアイピースで107.7倍(0.93°)がメインとなる。
20cmF7-BINO
アイピース | 倍率 | 視野角 | 射出瞳径 |
Explore Scientific 8.5mm | 164.7 x | 0.5° | 1.2mm |
Ethos 13 | 107.7 x | 0.93° | 1.9mm |
Masuyama 32 | 43.8 x | 1.94° | 4.6mm |
Ethos 13 + 2xエクステンダー | 215.4 x | 0.46° | 0.9mm |
Ethos 13 + 3xエクステンダー | 323.1 x | 0.31° | 0.6mm |
Explore Scientific 8.5mm + 2xエクステンダー |
329.4 x | 0.25° | 0.6mm |
Explore Scientific 8.5mm + 3xエクステンダー |
494.1 x | 0.17° | 0.4mm |
ちなみにAPM120SDのアイピースの組み合わせはこうなる。
Explore Scientific 8.5mm | 77.6 x | 1.06° | 1.5mm |
Ethos 13 | 50.8 x | 1.97° | 2.4mm |
APM UF18mm | 36.7 x | 1.77° | 3.3mm |
Ethos 13 + 2xエクステンダー | 101.5 x | 0.98° | 1.2mm |
Ethos 13 + 3xエクステンダー | 152.3 x | 0.66° | 0.8mm |
Explore Scientific 8.5mm + 2xエクステンダー | 155.3 x | 0.53° | 0.8mm |
Explore Scientific 8.5mm + 3xエクステンダー | 232.9 x | 0.35° | 0.5mm |
Ethos 13mmによって倍率も視野もコントラストも全てにおいて凌駕してしまうため、APM付属のUF18mmも優秀だが出番は無い。イーソスとエクステンダーの組み合わせだけで全て事足りる。通常は2インチのMasuyama 32mmはAPMでは使えないが、松本さんのMasuyamaをAPMで使える常識破りのアダプターを送って頂いた。市販の双眼鏡で今まで不可能だった超広視界の低倍が現実となる!
架台
Track The Stars社のTTS-160 Pantherは、僕が今まで見た自動導入架台の中で最もシンプルで美しい。70万円もする高級架台で、分解してみると中も真鍮製の大型の歯車が鎮座していてカッコいい。社長のNielsも親切に相談に乗ってくれて好感度が高い。iPadを通じて目立つ星1個か2個アライメントを取るだけで自動導入、追尾してくれたりして、複数人で同じ対象をシェアするには最適だ。
電動で上下左右に動いてくれるので、ゆっくり月面の地表を直線移動しながら舐め回していると、まるで本当に月面探索機かぐやを上空で操縦している様だ。
しかしちょっと問題もあって、手動の水平回転軸のバックラッシュが酷すぎて、どうやらこれは自動導入専用と製作者は考えているらしい。手軽にクランプを解除も出来ず、架台を分解しないとフリクション・コントロールネジにアクセス出来ない。手動ではiPadの視界と同期せず、再アライメントとなる。
となると手で動かしたい時は氷を滑るがごとく滑らかなマツモト水平回転軸の出番だが、こちらは傾斜センサーのwifiにiPadをつなげ直したり、skysafariの設定変更が必要で、途中変更は煩わしい。逆もまたしかり。観望前に今日は自動で使うか手動で楽しむかを決めた方がいい。
横軸だけでなく垂直回転軸もしばらくバックラッシュに悩まされ、重要箇所のビスの緩みを2箇所発見し、回転軸に高粘度のグリスを塗ったら解決した。このBINOに限らず焦点距離が長い鏡筒は、振動対策がよりシビアになるのは当然だ。ちなみに動画のポータブル・ピラーは合理的で、市場で最も可搬性に優れるピラーじゃないかな?
常に重心がセンターを維持する事で、重量級の鏡筒でも転倒の危険が無く、スーパースムーズな水平回転軸の操作性を得ている訳だが、それは16kgものウェイトという重すぎる代償とのトレードオフだ。一長一短。僕の場合はSkysafari+エンコーダがある。ただ待っているだけの自動導入より自分で動かす方が楽しいし、目的の天体まで自由に移動する間の、無数の宝石の中の「宇宙遊泳」自体が眼視の醍醐味でもある。
TTS-160の代わりに動画のピラーの上に松本さんオリジナルの中軸架台(たったの2.4kg)を乗せたら、ウェイトも外すと30kg以上!のダイエットになるなあ、などと軟弱な妄想が湧いてくる。
遠征!
FUJIFILM GFX100S, GF50mm f3.5 R LM WR ©2021 Saw Ichiro.
こちらは山梨の乙女高原。同じく標高1500mでマイナス7°だった。普段は望遠鏡が立ち並ぶこの広場も、流石にこの時期は人っ子一人いない。しばらくしたら車の中に置いてあったドリンクが完全に凍ってしまって喉を潤す事が出来ない。そのためにエンジンを回しっぱなしにするか、落ちてる雪でも食うしかない(笑)もちろんトイレも流せないので4月頃まで利用不可だ。この気温でよくiPadが動くと関心するが、Appleペンシル(第二世代)が真っ先に失神して機能しなくなった。
こんな所で一晩中遊ぶのだから、誰も付き合ってくれないし正気の沙汰では無い事は一応自覚しているw。
いや、この日は上の娘が付き合ってくれたが、これを最後に来てくれなくなった(笑)撤収の際もピラー台座が地面に凍りついてしまって、剥がすのに苦労した。
この時期は過酷なので遠征などご無沙汰になるのが常だが、北斗七星、りょうけん座、かみのけ座〜おとめ、しし座などが天頂付近の高仰角エリアに集中し、大口径向けのdeep galaxyの見どころが満載だったりする。山梨県の山奥と言えど光害と無縁では無く、やはり深夜の天頂付近の見え方が最も素晴らしい。最近は割と暇してるし(^^)、じっとしていられるはずもない。
小口径で空に浮かぶシミを確認するだけで終わっていた対象が、20cmBINOでは実に面白い(^^)。M51子持ち銀河の腕の詳細構造を初めて堪能したし、M3球状星団の余りの迫力に思わず声を上げてしまった。りょうけん座のダブル・ダブル銀河のNGC4631,4656のぶつかりあった銀河同士の重力の影響で形が歪んでしまっている様子とか、いつ見てもつまらなかったM101回転花火銀河が想像よりもずっと大きく腕を広げている様など、ドブソニアン(大口径反射式)の対象がバッチリ射程圏内に入ってくる。
本当は、まだほとんど稼働していないAPM120とサイドバイ・サイドで見比べたりしたいのだが、両方を運ぶ気力が無い。
M51子持ち銀河。これはハッブル宇宙望遠鏡が長時間露光で捉えた写真であって、眼視では絶対こんな風には見えない(^^)。それでも光の速さで2300万年もかかる遠方の物体を、直接自分の目で見れるなんて、望遠鏡って凄すぎ!
周囲に大型の獣の足音が頻繁に聞こえる。(多分シカ。)近くにシカがうろうろしているという事は、ヤバい肉食獣は居ないはずと信じて放置して星に集中する(^^)。流石にクマは出ないだろうが、イノシシも割と凶暴らしい。
ある時など一人で観望していると、向こうの林から大型動物の群れがこちらにドカドカと向かってきて、僕の車を挟んで反対側を走り去った。真っ暗闇なので相手が何かも分からず、かなり焦った事がある。シカも雄は立派な角を持っており、目の前に対峙すると見上げるほどデカイ。草食動物とは言え、まともに戦ったら大怪我しかねない。武器でも携帯するか(^^) クマならまだしも、シカに襲われて死んだなんて、前代未聞のカッコ悪さだ(笑)
NGC4631,4656。歪んだ銀河で有名だ。
M3。この日はM3が天頂付近だった事もあり、球状星団の王様M13より凄かった。見えている星は太陽と同じ恒星だ。一つひとつに地球の様な惑星が周回していると考えると恐ろしい密度だ。この中心部の惑星に引っ越したら、恐らく空は太陽だらけで常に昼間だったりするんじゃないかな?(^^)
他にもたくさん見た。この日はりょうけん座、おおぐま辺りをじっくり見ていたら、途中で曇ってきてしまい楽しみにしていたしし座、乙女座がお預けとなってしまった。
M81, M82, M108, M97, M101, M102, NGC5907, M92, M13, M3, M53, M64, NGC4173, NGC4656, NGC4631, M94, M63, NGC5907, NGC2362 etc… Skysafariで観望記録を取っているので、何を見たのかすぐに出る(^^)。
20cmF7-BINOの便利グッズ達
ポータブル電源はリン酸鉄リチウム電池 537.6Wh/168,000mAhを選んだ。サイクル寿命が長く、マイナス20°まで動作するらしい。7.8kgの重量でこのモデルを選んだが、8kgウェイト2本のうち1本を外して、松本さんにバッテリーステーを作成して頂き、ウェイトとして兼用する作戦だ。架台に装着する事で、一晩中好き放題望遠鏡を振り回してもケーブルが絡まったり巻き付いたりしない。暗闇ではこういう些細な事でトラブルになりやすい。
夜露防止レンズ・ヒーターx3、自動導入架台の電源や小物に使用するが、この使い方だと2晩持つ。実は最初は別の電源を購入したのだが、数回の使用で壊れてしまい返品となった。
しかしこの手のポータブル電源は、揃いも揃ってみんな画面やボタンをあちこち青く光らせる。特に理由なくエコっぽい?単なるガンダム世代?の未来的イメージでそうしているのだろうが、ドイツ車のインパネが何故、一件地味な赤系で統一されているかご存知だろうか。夜間の運転中に人間の瞳孔を狭めないための科学的配慮がそこにはあるからだ。
特に人間の目の限界に挑戦する天体用途では一発アウトだ。詳細情報が表示されるのは有り難いが、仕方なく赤色の塩ビシートを何箇所も貼りまくる羽目になった。(それでもまだ眩しいけど。)
最高のiPadホルダを見つけた。ガッチリと保持してタップ等してもiPadが揺れず、剛性感が高い。何ならMacBook Airもホールド出来る。iPadを望遠鏡の天面に乗せると、覗き込む度に鼻息でアイピースが曇ってしまうので、サイドのハンドル付近に低めの位置でホールドした。頻繁にタップしやすいし重いアイピースで天側に偏るバランス・キャンセラーとしても一役を担う。
でもしっかりクランプを閉めないと、一回テキトーに装着してiPadごと落下させてしまった。幸い画面が割れる被害は免れた。外れて落ちても大丈夫な命綱を引っ掛けておくと安心だ。
左は自動導入架台付属のコントローラー。電動の微動装置として使えて便利。こちらはマグネット脱着。ベランダでバランスをテストしているだけで星は見ていないのだが、Skysafariにも赤目モードがある。最高の暗い環境ではそれでも眩しいのでiPadディスプレイ全体に赤塩ビシートを貼って使っている。
この椅子イイ!アイディア商品。最低高6cm〜45cmまで高さを変えられる。何より軽いし車に乗せるのに折りたたんで場所を取らないのがイイ。低めのポジションのBINOにうってつけ。手がかじかんでるとなかなか引き延ばせない事もある。
最も重要な対物レンズの運搬用に、スピーカーケースがピッタリだった。いやちょっとはみ出すけど。音楽をやっていてよかった(^^)。このサイズのケースの中に、20cm鏡筒2本(巻きつけフードと巻きつけハーフ鏡筒も)を収納出来てしまうなんて!今までの様に望遠鏡丸ごと持ち運ぶのがアホらしくなりそうだ。
EMSとフォーカサーの収納に、このケースを選んだ。最近は安価でよいものが手軽に揃えられて本当に有り難い。
中のクッションを自由にくり抜ける。これが届くまでいちいちダンボールにプチプチで梱包していた。小型BINOケースとしても良さそうだ。
凍りついたモノを放り込むのは気が引けるが。
TTS160架台とNexus2を繋いで、iPadでWifi経由で自動導入する際にこのケーブルでうまく行った。そんなマニアックな情報は誰もいらんかw。
この時期は防寒具を充実させないと凍死する(^^)。幸い、USBバッテリーから電源を取るヒーター付きベストなどのラインナップが豊富だ。これらで武装すれば風さえ吹かなければ、マイナス9度でも余裕だった。
ついでにアルミ磨きクリームと、電動ドライバ用の研磨バフを買ってみた。松本さんオリジナルピラーは、15年も前に15cm BINO用に制作した在庫の最後の一台だったそうで、恐らく15年間一度も清掃されていない外見だった(^^)。やっぱりお洒落は足元から!息を吹き返す様にピッカピカになり、お陰で足に触っても手が汚れなくなった。(^^)
右がオリジナル、左がポリッシュ後。握力が疲れたので一回磨きで妥協した(^^)
遮光のためだけに存在する鏡筒が、何より大きくてトランクを専有する。視界からレンズ外の光を遮断さえすれば、眼視の場合は鏡筒など無くても暗い場所ならほとんど違いが無い事が分かった。そのためホームセンターで買ってきた2mm厚の発泡PPシートで遮光環を制作し、0.75mm厚のPPクラフトシートでハーフ・鏡筒を自作して巻きつける作戦だ。これで少しでも荷物を減らせると有り難い。
遮光環をいくつか作った。アマゾンで円形カッターを一つ買ったら、この手の工作が綺麗に出来て楽しい。(^^) 植毛紙もバッチリ貼り付けて我ながら上出来。剛性も十分だ。それにしても、20cm BINOから実に多くを学んでいる。
FUJIFILM GFX100S, GF50mm f3.5 R LM WR ©2022 Saw Ichiro.
ハーフ鏡筒作戦。フードも含めペナペナのシートを巻いてベルクロで止めているだけ。でもこれでレンズの外の視界は真っ黒だし風が吹いてもビクともしない。これだけで上モノを5kg軽量化出来る。これ、世界最軽量の20cmツインじゃないかな?(^^)
でも先日は現地で組み立ててから一時間ほど星像が肥大してしまい、まともに観望出来ない状況に陥った。レンズはヒーターが効いていてクリアそのものだ。時間が経ったら徐々に改善して行ったが、もしかしたら夜露によるクモリがEMSの銀ミラーにも発生して、氷点下の順応に時間がかかってしまった可能性がある。次回はその真偽を確かめるために、片方の鏡筒だけ塩ビ鏡筒を装備して実験してみる。トラス式ドブソニアンの様に、鏡筒部を布で覆うシュラウド方式も検討中。
毎度の事ながら、購入後の松本さんの手厚いサポートは100の謝辞でも言い尽くせない。このBINOのさらなる洗練、ブラッシュアップのために未だに新たな部品を制作し送って下さっている。まるで恋人の様に(笑)毎日毎日チャットで僕の下らないアイディアやお喋りに付き合って下さっていて流石にご迷惑も甚だしい。このBINOと同じくらい、松本さんから学んだやりとり全てが僕の宝だ。この場を借りて心から感謝申し上げます。
FUJIFILM GFX100S, GF50mm f3.5 R LM WR ©2021 Saw Ichiro.
あれほど大きいと思っていたAPM120が、子供の様だ。(真ん中)右は5cmのCarl Zeiss f10.8。20cmのファインダー用に一緒に譲って下さったが、Skysafariアプリがあればファインダーは全く不要だし架台に対してやや過積載な事もあり、単体で遊ぶ事にした。
我が家は狭い。望遠鏡は、使っていない時の置いておく場所が常に問題になる。20cmF7を購入するにあたり、うっかりAPM120を手放す妻の条件を飲んでしまった。物凄く残念だし、遥かにお手軽で見え方素晴らしいし、後悔する事は分かりきっているが約束は約束だ。12cmツインの集光力も半端では無く、M33の様な大きな対象は低倍でより射出瞳が稼げるAPMの方がよく見えたりして、小型も中型も、それぞれやっぱり適材適所で必要なのだ。(^^)
まだ新品の香りのするAPM120SDを、どなたか引き継いで下さる方いらっしゃいますか?APMでも使える様に短縮改造したイーソス13もお付けします。出来れば一緒に見に行きませんか?(^^)
FUJIFILM GFX100S, GF50mm f3.5 R LM WR ©2021 Saw Ichiro.
何故かは分からないが、これが僕の手元に来る未来が、購入を決める前からなんとなく見えた気がした。このBINOは僕が引き継ぐべきだし、そうなる運命と勝手に確信していた。僕は時々そういう感覚になる事があって、不思議なものでそうなった時はどういう訳か、様々なヘルプで神様が僕の背中をプッシュしてくれる。(^^) 最初から決まっていたかの如く、自動的にイメージが現実となったりする。
それは宝物を独り占めするというよりは、これを自分が所有する事によって、今まで天文に関心の無かった誰かに感動をシェアしてあげる管理係を任された、みたいな感覚だ。
我々は自分たちを「個人」と信じて疑わないが、実はアリと同様、人間も社会的な集合体としての生命だったりして、僕がBINOを持っていようと、仲間が持っていようと本当は同じ事で大した違いは無い。その時間を共有する全員がその喜びを享受する訳で、つまりご縁とは、生命をシェアする事そのものでは無いかとすら思ったりもする。
FUJIFILM GFX100S, Contax Carl Zeiss Makro Planar T* 100mm F2.8 ©2022 Saw Ichiro.
このBINOはまさに、兵(つわもの)どもの夢の跡に、僕には見える。プロフェッショナル達の英知と努力、全力で走り続けた証が詰まっている。ただ「見えないもの」を見たい一心で。それって、物凄くピュアな神聖領域と思うのだ。だから僕も先人の足を引っ張らない様、その準備を一生懸命やっている。今はたまたま僕が管理人だが、やがて僕の手からも後世の誰かにバトンが渡されるはずで、それでいいよね。自然の摂理。日本の文化遺産。
素人がモノを語る恥ずかしさに、いつも後ろめたい気持ちになるのだが、このBINOの事はなるべく詳しく紹介しなければならないと思った。余生は山に籠もって星でも眺めてダラダラ暮らすのが夢だが、今後このブログはカメラの話はやめて、望遠鏡のブログになるかもしれない。(笑)