X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/90, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.
いつもお世話になっているライカの先輩方と共に、ちょっとだけ息抜きに近所に出かけてみた。モデルに協力してくれたのは以前、Leica Sでポートレートを撮らせて頂いたハーモニカ奏者のReiさんだ。ついでにLeica M10モノクローム+Apo Summicron 50Mとの比較実験もやってみた。
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/1500, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.
NDフィルターを入れて、わざとISOを1600以上に上げてみたり、いろいろテストしながら撮っているが、意外とISO100もISO1600もそれほど印象が変わらないのは、流石最新デジタルだ。先日まで先輩にLeica M240をお借りしていたが、M240ではそうはいかない。
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/640, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 200) ©2020 Saw Ichiro.
以前、上野のフェルメール展で最も感動した事は、人肌の「白」が恐ろしく美しい事だった。これはフェルメール本人や、同時代の画家達の作品に共通して言える事だ。想像するに彼らが一番描きたかったものは、肌の「美」そのものであり、それ以外はみんな肌色を彩る装飾とすら思った。残念な事に実物を転写した美術書ではその感動を伝える事は出来ない。
その時の感動と似たものを、僕はハッセルに感じた。もちろんモデルのReiちゃんの白い肌が絹のように美しいのはもちろんだが、X1D IIはその美を完璧なホワイトバランスで再現してくれる。これはLeicaに対しX1Dの最大のアドバンテージかもしれない。
ただし、これはHasselblad付属のPhocusアプリ上でRawファイルを見た時限定であり、PhocusからJPGなりTIFFなりで書き出すと、その発色が興ざめなほどに退色してしまう。つまり、オリジナルのRawファイルをPhocus上で展開した時しか楽しむ事が出来ないw。
ちなみに上の写真は左がRawストレート現像で書き出したJPG、右がPhocus画面のRawを並べてMacでスクショを撮り、そのスクショPNGをJPG変換したものだ。もちろんこの状態も根本的な画質劣化は避けられないが、それでも左右の差は見て取れる。つまり、Phocusのエクスポート機能に問題があるという事だ。発色だけでなくコントラスト低下もはっきり分かる。ここがハッセルのWEB上の作例の多くが、どうも眠い感じになってしまう原因だろう。これは勿体無い!
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/500, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/350, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
ちなみに今回は、ようやく米国から届いたTiffen ブラックプロミスト1/8フィルターを使用している。わずかにコントラストを低下させ、微細な肌のテクスチャーを和らげるとともに、ほのかなフレア感で人物を美しく見せてくれる。解像し過ぎるXCDレンズにピッタリで、全てのショットで付けっぱなしだ。
ハリウッド映画ではこちらが多く使われている様だが、驚くほど高価だ。
両者を比較したサイトがいくつかあるが、個人的にはTiffenで全然OKと思った。
ケンコーからもブラックミストフィルターは販売されているが、こちらも買ってみたが効果が大き過ぎて、あらかさまにソフトフィルター然としてしまう。なんで1/4、1/8を作ってくれないのだろう。日本では効果が分かりやすくないと売れないのかな?
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 400) ©2020 Saw Ichiro.
この辺りから、写真からもらったインスピレーションに任せて、好きにいじってる(^^)
ここで少しX1D II + XCD90とM10M + Apo Summicron 50の比較を載せてみる。ハッセルはPhocusにてモノクロモードをオンにしただけのRawストレート現像。ライカはCapture OneにてRawストレート現像だ。
まずは絞り開放同士、XCD90はf3.2、アポズミはf2.0だ。ISOは全てベース感度を使用。左がX1D II、右がM10Mだ。
左:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/30, ISO 100)
右:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/125, ISO 160)
同じ位置からの撮影だが、開放がf3.2のハッセルの方が被写界深度がずっと薄い事が分かる。
ちなみによりXCD90に画角の近いSummilux 75mm f1.4の描写。
LEICA M10 Monochrom, Summilux 75mm/f1.4 (ƒ/1.4, 1/180, ISO 160)
75mm f1.4となると、中判90mm f3.5よりもボケ量がほんのわずかに多いか?
今度はf8.0同士。
左:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/8.0, 1/6, ISO 100)
右:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/8.0, 1/12, ISO 160)
今度は人物比較。ライカ判68mm相当のXCD90の方が被写体が大きく映る分、アポズミは同じ程度になる様に近づいてみた。
左:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 100)
右:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/2000, ISO 160)※若干露出をプラス補正した。
これらの実験では、X1D IIからNDフィルターもブラックミストも外している(はずw)。ライカ判とは縦横比が異なるため、画面半分を均等に配置するとこうなる。
そして同じ距離からのアポズミ50mmはこんな感じ。
LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/1500, ISO 160)
こちらも若干、Capture Oneで露出をプラス補正している。
ちなみに上のハッセルと近づいたライカの拡大イメージ。
まあ、解像度対決はもはや違いが分からないし、どうでもいっか(笑)ほんのちょっとした事なのだが、ライカ・レンズの方が描写に優しさや潤いを感じさせる辺りが、ライカレンズの美徳だ。解像度的にはもちろんどちらも必要十分で、むしろほんのわずかな手ブレやピンズレの影響の方がずっと大きい。しかしこの比較実験、それぞれ書き出して管理するのが結構大変。
今度はクルマ比較。モデルさんも居たし結構テキトーだが(^^)、一応三脚を立てて同じ場所から撮ってみた。
上:Hasselblad X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/4, ISO 100)
下:LEICA M10 Monochrom, APO-SUMMICRON-M F2/50mm ASPH. (ƒ/2.0, 1/12, ISO 160)
と、こんな結果になった。僕が日頃感じていたライカ判&50mmのパース感は若干感じるものの、これはとてもオタクな意見。なんで中判でクルマを撮るとカッコよく見えるのか、いくら眺めても明確な表現が思いつかない。まあライカでも75mm以上のレンズで同じカタチで撮れるはず。
結論。どっちも最高、どっちでもいい。(笑)それぞれのユーザーは、敢えてもう一方を入手する必要はあまり無いんじゃないかな。カラー派には、M10Mと同じセンサーを搭載するであろう次期カラー機、M11も期待大だ。
XCD90は、Apo Summicron50の半額以下というコスパを考慮に入れなくても、やっぱりとても優秀という事がよく分かった。100万円のライカの究極のレンズに全然引けをとらないのは、凄い事だ。逆にこんなにデカイ中判センサーを搭載するX1D IIに、一歩も譲らない35mm判のM10Mにも拍手を送らなければならない。
貴重な実験をさせて頂き、ありがとうございました!
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/500, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/250, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/60, ISO 400) ©2020 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, XCD 3,2/90 (ƒ/3.2, 1/125, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.