中判デジタルに人々が期待しているモノは「高い解像度」というのはどうやら世界共通の様で、英語も日本語もどのX1DIIのレビューを見ても、大体いずれも緻密な描写を称賛するものだ。一方、僕の個人的な意見としては解像度を求めるならMでもQでも十分過ぎるし、もはや中判とフルサイズ機との解像差なんてどうでも良いと内心思っている。僕にとって中判の最大の恩恵は「長焦点レンズが標準画角で使える」一点に集約しており、ほとんどそれだけと言ってもいい。(^^)
X1D II 50c – Hasselblad, Sonnar 150mm F4 (ƒ/4.0, 1/60, ISO 3200) ©2020 Saw Ichiro.
ハッセルに限らずLeica Sもしかり、ユーザーの期待に答える様に、またフルサイズ機に対してなんとかして面目を保つかの様に、メーカーから出てくる中判レンズはどれもこれも猛烈にシャープネスが高い。風景の人は最高の時代と思う。僕の場合はシャープネスを何とかして下げたくてw、現代のX1D専用モダンレンズを一つも買わずに、アダプタ+Carl Zeiss製のオールド・ハッセルVレンズ3本のみを新調するという暴挙に出ており、したがって僕の様な世界的に稀有な珍獣が書くこの記事は、多くのカメラ・ファンの方が知りたい事は書かれていないと思う。(^^)
シャープネスを下げたいと書くと語弊があるが、近年の僕は、写真に適度な柔らかさを求める傾向がある。要は「普通」に写って欲しいだけなのだが、現在ではそっちの方が難しい。
という訳で、ずっと気になっていたX1D IIが今、手元にある。Vレンズをデジタルで使ってみたいという昔からの願いも、ようやく現実になった。Hasselblad X1D IIが僕の意図にマッチしたものであったか、ライカユーザーから見たX1D IIは実際どうなのか、まだ数日しか経ってないが今の個人的な正直な見解を書いてみる。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/50, ISO 800) ©2020 Saw Ichiro.
ハッセルVレンズ
数年前に運転免許試験場で測った時には、僕の視力は左0.7、右0.3で、乱視もあった。ギリギリ、メガネに頼らなくて良い判定だった。ファインダーは悪い方の右目で見ている。そしてこの一年でさらに視力が劇的に悪くなった事を実感しており、乱視が極度に悪化し、僕の目はもうダメだ。
そんな僕の目から見えるこの現実世界は、そもそも良く見えない。美しいボケというより、ぼやけてるw。全体的に。少なくとも子供の頃に戻った様な澄み切ったシャープネスは、どこにも無い。だから多分、写真もよく見えない方が自分の中でしっくり来るのではないか?僕はカメラに「自分の目」で見たそれに近い絵を、無意識に期待しているのかも。
よく見えないと言っても、40年前のZeissレンズ群は今も十二分に上質で、僕の目より遥かに優れていた。絵が古い感じになるかな?という心配は無用だった。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/3000, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
だいぶ以前にあるご年配の方が、レンズレビューだったかの作例として、思い切りピントを外している投稿写真を連発しているのを見かけた。僕に言われたくないかもしれないがw、確かにあれではどのレンズでも一緒だし、高級レンズの意味がないと僕も思った。周囲の人たちは親切にも、まずはフォーカスをきちんと合わせるように、とその方をたしなめていた。
でももしかしたら彼が普段見ている世界感からすれば、その見え方が彼にとって正常だったのではないか。だから反対に僕よりもずっと視力の良い人が僕の写真を見たら、ピントが緩すぎると思っておられる可能性が高いw。
X1D II 50c – Hasselblad, Distagon 50mm F4 T* (ƒ/5.6, 1/250, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
僕が適当に長焦点と書いているのは大体、70mm以上の焦点距離レンズをイメージしていて、それらで映る物体の形が僕の目には無理が無く、自然に見えるから高くつくw。35mm判やAPS-Cでも中望遠レンズで多分同じ形に撮れるとは思うのだが、画角が窮屈にならないためにはどうしても被写体との距離が必要になる。
一方で、ジャンルー・シーフの写真集を僕は持っているし、大好きな写真家の一人だ。人様の広角を活かしたダイナミックな構図を見て「かっちょええー♡」と思いながらいつも拝見している訳で、結局、広角レンズは自分ではうまく使えないと言うだけ。そのうち逆に、広角おもろーに変わる可能性も無いとは言えないが。
そんな超マニアックなニーズから、結果的に現状で一番小型で、持ち歩けるサイズの中判デジタル、X1D II+Vレンズの組み合わせに自動的に行き着いた。
X1D II 50c – Hasselblad, Sonnar 150mm F4 (ƒ/4.0, 1/200, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
そんな事情から、中判においても広角レンズは稀に必要になる事はあるかもだが、個人的には今の所ほとんど興味はない。無いが主にムービーや室内撮影も考慮して一応、
Planar 80mm F2.8 T*(465g、最短0.9m)
Distagon 50mm F4 T*(885g、最短0.5m)
Sonnar 150mm F4(710g、最短1.4m)
という、ハッセル500Cベーシック・セットで行ってみる事にした。1970年代後半のほとんど僕と同い年のレンズで、ズミクロンで言えば第3世代が誕生する頃だ。クローズアップ・アダプタも用意した。
中判と言ってもX1D IIは44 x 33mm、Leica Sは、45 x 30mmと、本来の645サイズ(6cm x 4.5cm)とフルサイズの中間の様なイメージになるため、完全な標準画角にはならない。ライカ判35mm換算でそれぞれ大凡62mm、39mm、117mm。縦横比がLeica Sと違うのが面白いが、ハッセルは正方形により近い。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/80, ISO 200) ©2020 Saw Ichiro.
Vレンズ・アダプター
現状X1D IIで使えるレンズアダプターは純正品とKipon製と二種類ある。純正は3万くらい、Kiponは24000円くらいで、Kipon製もしっかりしていて作りは全然問題ない。剛性感は両者互角。でもやっぱり品質とデザインセンスと言うか、デザイン・コンセプトの一貫性で、純正はその差額を埋めるメリットは十分にあると思った。
Kipon製は蛍光ブルー文字で自社ブランド名が真上にデカデカとプリントされている(^^)。レンズを外すボタンも純正は埋め込み丸ボタンで、Kipon製は指が痛くなりそうな細い金属突起がある。Kiponの重量はどこにも記載が無いが、持った感じで純正の方が軽かった気がする。実用上は大差無いが、本体と予備バッテリー購入分のポイントで、ほとんどアダプター代は賄えたので、純正に決定。本体725g+アダプタ227gで、この場合、レンズ無しのBody重量はちょうど1kg程度となる。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/90, ISO 800) ©2020 Saw Ichiro.
電子シャッター
ハッセルVレンズのレンズシャッターはX1DIIでは使えないので、このラインナップで行く限り僕は永久的に電子シャッターのみに頼る事になる。当然だが完全な無音なので撮っている時の喜びは薄い。擬似的なシャッター音を再生するオプションを付けてくれると有り難いのだが。X1DII用のモダンレンズも店頭で試写した限り、カチン!という甲高いシャッター音で、ライカヲタクにとっては不満だろう。
電子シャッターではストロボ撮影が出来ないらしい。どうしても人工灯が必要な場合はつけっぱなしのビデオライトを用意する事になるが、まあそれならそれでいいかなと、テキトーに考えている。
そんな事よりも電子シャッターのローリング現象は、僕の予想以上に深刻だった。シャッタースピードが1/90s辺りでも、被写体が動くと思い切り歪んでしまう。撮り手も被写体も、辛抱強く一秒間ほどフリーズしていなければならない。正確な形を求めるなら、常時三脚で撮るべきかも。
やっぱり純正レンズを使わないという選択は、よっぽど探検家気質の人以外は辞めたほうがいい。(笑)
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/90, ISO 800) ©2020 Saw Ichiro.
1秒間と書いたのは、露出のためではない。ライカ使いが一番驚くのは恐らく、撮ったあとのブラックアウトの時間が長い事。(電子シャッターだけ?)撮るたびに毎回一秒くらい真っ黒になる。1秒以上あるかも。いくらなんでも長いので、この辺はファームウェアで改善を求めたい。しかもシャッターを押した瞬間を記録している訳ではなさそうで、この1秒間のうちのどこで撮っているのか撮影者には分からない。このタイムラグだけでも解決して頂けないと、本当に風景しか撮れない。
純正レンズ派もそれはそれで、オートフォーカスのスピードに皆苦言を呈している。特に80mm f1.9はレンズがフォーカスするのに一枚撮るたびに10〜15秒も待たされる様だ(^^)中判にf1.9は被写界深度が薄すぎるのもあるのだろう、これでは事実上、マニュアルでしか使えない。
ムービー機能
僕がX1D IIに決めたのはムービーが必要だった事もあったのだが、なんと現在のファームウェアV1.10ではムービー非対応!!いつ対応するかも不明だそうだ。それさ、売る前に明確に公表しないとトラブルになるよ。公式ウェブサイトにもそんな事は一言も書いてない、っていうかよく見たらムービーが撮れるとも書いてないかもwダイヤルにはムービーマークがあるのに。
二週間後に動画を撮りたい仕事があるのに、どうしよう、、、。
開封
開封時にも何度も驚かされた。なんと、バッテリーチャージャーが入っていない。検索したらX1D一号機のPDFマニュアルだけがネットに落ちていて元々は色々用意されていた様で、欠品かと勘違いしてしまった。X1D IIからは本体に直接USB3.0を刺して充電する方式に変わった様だ。それでも何故か充電出来ず困っていたら、絶縁シールを剥がしてからバッテリーを入れ直す儀式が必要だった。
新しい試みはいいのだが、何もかも説明が足りない感じがするのは、日本語の説明書が付属しないから。注意書きのペラ紙が箱の下についていたのは後から気づいた。もうリリースから一年近く立つのかな?未だに日本語説明書が作られない。仕方無いので公式サイトのユーザーエリアで英語マニュアルをダウンロードした。
お陰で箱が意外なほど小さくて、持ち帰りやすかった(^^)
サイズ感
薄くて世界最小の中判という美点は、描写云々以前にLeica Sに対し最大のアドバンテージと言っていい。ただVレンズアダプタ+Vレンズの組み合わせの場合、軽量な80mm f2.8でも結構フロントヘビーで、小型とは言えないサイズ感になるのは止むを得ない。フード無しならLeica Mで使ってたバッグにギリ入るが、Vレンズ自体もLeica Mレンズを見慣れた感覚で居ると、ビビるほどデカい。
特にDistagon 50mm F4 T*の重さは想像以上で、レンズ長も相まって、結構手首に負担が来る。クローズアップ・アダプタを挟もうものなら結局、Leica Sより巨大なシステムになるwストラップで首から下げて一日歩いたら、首の骨が折れるかもしれないw。
高感度
事前の公表では最大高感度はISO25,600となっていたはずだが、実際はISO3200までしか選べないw。これもファームウェアでなんとかする考えだろうか。中判レンズの暗めのf値も相まって、暗い場所ではSummillux+Mという様な感覚では当然使えない。ISO1600が上から二番目になる訳だが、高感度ノイズはLieca同様、そんな嫌な感じはしない。というかノイズらしいノイズがあんまり目立たないのはPhocusの後処理のお陰か?なので積極的に高ISOは使ってみようとは思ってるし、このF値からはそうする以外にない。
ただし、X1DIIの高感度ノイズには問題があって、主にISO800以上で時々明るい面にシマシマ模様が出てしまう。センサーの故障?まだまだシステムは未成熟の状態で、恐らく相当フライング気味にリリースしているのだろう。ファームウェアのアップデートで改善を求めたい。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/80, ISO 1600) ©2020 Saw Ichiro.
背面メニュー
まだ使い方をほとんど把握出来ていないので断定的な事は言えないが、スマホスタイルのアイコンメニューは使いやすそうに見えて、何がどこに入ってるのか整理整頓がイマイチ直感的とは言い難い。探しているものをようやく見つけて、もう一度そこに戻ろうとしてもまた迷子になる感じ。
例えば電子シャッターON/OFFはなぜか「メディア露出」という項目の中に入っていて、これを探し出すのにお店の人と二人がかりで5分くらい探し回った。メディアと聞けばSDカード周りの話かと思えば、ストレージという項目が別にある。そもそもメディア露出という言葉自体の意味が分からない。「レンズー最大絞りー標準」も何の事かさっぱり分からないし、オートISOは「機器構成」の中で探し当てたが絞り優先モードでシャッタースピードの下限を指定する場所がどうしてもみつからない。もしかしたら設定出来ない?
ミラーレス機の宿命で、スタンバイ状態でも背面液晶にライブビューがずっと表示され続ける。バッテリーを無駄に消耗するのを防ぐためと思われる「EVFのみでライブビュー」という機能はあるのだが、この項目も「ディスプレイ」や「電力」の中にあると思いきや、「設定」アイコン内の「ライブビュー」に入っていた。
しかもこれを設定するとこの警告が常時表示されたままになる。
違うだろー!w 邪魔!!ずっと顔の眼の前でエラーメッセージを眺めながら使う人に気持ちになって欲しい。背面液晶の電源を切るか、コントロール・スクリーンを維持してくれればいい。
多分このプログラマーは写真をやらない人だと思う。iPhoneの様な考えつくされたインターフェイスを期待し過ぎない方がいい。
Phocus
5000万画素センサーの書き出しファイルサイズは8272 x 6200 pxで、人生で一度も大伸ばしプリントが必要になった事がない僕にとっては不必要にデカイ。RAWファイル一枚につき大凡70〜80MBとなる様で、500枚程度で40GB近くドライブを専有してしまう。ノートブックユーザーはまめにバックアップドライブに退避するなどの対策が必要だ。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/80, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
このブログもFacebookの投稿も、僕は全て長辺2048 pxのjpgで書き出しているので、オリジナルデータの24%しか使わない事になる。2048という数字は、Facebookで投稿出来る最大サイズが2048pxでそれ 以上は勝手にリサイズされる。品質がベストとは言えないフェイスブック・自動コンバーターの介入を防ぐために、出来れば2048pxジャストで書き出したい事に依る。
ところがPhocusは「長辺」2048pxという指定する事が出来ず、縦長と横長と混在した複数写真を一括で書き出せない。なので苦肉の策として、オリジナルのファイルサイズの24.758221%で書き出しする事でピッタリ2048pxに出来た。もちろん、クロップ編集したファイルの場合は個別に書き出さなければならない。
最初に感じたのは、お店で試写した背面液晶を見る限りもっと地味かと思っていたら、発色が素晴らしい。特にPhocusによる現像の場合、Capture Oneを思わせる色の分離感があり、自然かつ十分に鮮やかだった。
Lightroomとの比較。左がPhocusで右がLightroom Classic CCだ。Lightroomは赤と青を強調するのはM9などでも同様だ。
両方少しレタッチしていて、同じ数値にしても同じ印象にはならず、完全に正確な比較では無い。画角がなんでズレるのかもよく分からない。同じタイミングで何枚か撮ったので違う一枚かも(^^)。同じ写真を選びにくくしているのは、なぜかPhocusはインポート時にファイル名を付け直している様で、ファイル名が異なり訳が分からなくなる。
PhocusはCapture Oneといい勝負をすると想像しているが、手元にあるCapture One 11では残念ながらX1D IIのRAWファイルは開けなかった。またツールをいちから覚えるの嫌だなあ(^^)
ただし、ファイルサイズがデカイという事もあるが、それにしてもPhocusの動作パフォーマンスは遅い。読み込みも書き出しも、隣の写真に移動するのも、何をするのも時間がかかる。Appが固まったかと何度か疑った。やはりその辺はLightroomやCapture Oneに一日の長がある。
どうでも良い事だが、Phocusというアプリ名なのにアイコンが「H」となっていて、まだアプリ名を記憶していなかったために頭文字がHの所をいくら探してもアプリがみつからずに戸惑ったw。App名をHasselblad Phocusにした方がいいと思うよ(^^) それと最新バージョンをダウンロードしたらSystem Requirementは満たしてるはずなのに、僕のMacbook Pro 15(Mac OS Sierra)ではエラーで起動出来なかった。アーカイブから一つ前のバージョンを落としたら無事動いた。
Leica SとHasselblad X1D IIの比較
2018年にLeica S-E(CCD)で撮った同じ場所に、今度はX1D IIを持って訪れた。構図も季節も時間も何もかも違うし、いずれも軽いレタッチが入っている。いつものごとく超テキトーなので目安程度にしかならないが(^^)、いろいろ特徴が違って興味深い。
LeicaのレンズはSummarit-S 70mm f/2.5 ASPHで、現代非球面レンズの代表選手とも言うべき優れたレンズだ。一方X1D IIに装着していったのはオールドVレンズのC Planar 80mm。ハッセルブラッドの地位を不動のモノにした銘レンズだ。優劣というよりは、撮り手により好みが分かれる部分だろう。
ぱっと見でX1D IIが地味に見えるのは、オールドレンズのコントラストが低めな事ももちろんだが、センサーにしてもやや黒が浅め。派手さよりもRAWデータとして出来るだけ快調を残しておこうとする意思が感じられ、レタッチの自由度が高いとも言える。撮った時点で絵がVividに完成しているLeicaと対象的だ。(ここでは僕が心地よいと思えるまで黒を締めているので、それほど差は無く見えるかも。)
Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/45, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/60, ISO 200) ©2020 Saw Ichiro.
Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/60, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/80, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
このショットはいずれも彩度は触っていない。Leica S-E + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/125, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/100, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
ハッセルブラッドの実情
X1D IIの極めて高品位なアルミ削り出しボディデザインは見れば見るほど美しく、細部に至るまで一点のスキも無い。このコンセプトは今後の新時代カメラの到来を予感させるものだし、レンズシャッターという特性を活かし、他社ではちょっと真似が出来ないほど薄くて小型な中判カメラに仕上がっているのは確かだ。
ここまでは文句のつけどころが無かった。でも現在のハッセルブラッドは歴史的な栄光のイメージの裏に、ちょっとした問題を抱えている。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/750, ISO 100) ©2020 Saw Ichiro.
僕は昨年末に、ハッセル公式WEBサイトでX1D IIのレンタルを申し込んだ。しかし待てど暮せど遂に返信は来なかった。先日ハッセルブラッド・ジャパンにCFV II 50Cの生産状況が知りたくて電話をしてみた。出てきたのは恐らく比較的若いお兄さんだが、その応対は人類が初めて月面に持ち込んだカメラブランドとは思えないほど、品質の低いものだった。
僕個人もとても褒められたものではなくw、大変に社会的に問題がある人間と自覚している。だからこそ、電話や初対面の方に対しては、俺は客だぞ、などという気持ちはあってはならず、自分が出来る限界まで丁寧に振る舞おうとする努力が欠かせない。
ハッセルブラッドはHシリーズという上位機種のラインナップがある。HASSELBLAD H6Dというモデルは、600万円オーバーというとても自由な価格設定をしていて、一部の特殊な業界でのみ用いられていると思われる。だから恐らく電話のお兄さんは、X1D IIやCFV IIなどの100万円以下のコンシューマー機に関心のある素人なんか、ほとんど興味が無いのだろう。必要最低限の回答はして下さったが、彼の気持ちは言葉の節々から現れていた。最後に僕が一応お礼の言葉を伝えると、彼はそのまま無言で電話を切ってしまった。
X1D II 50c – Hasselblad, Planar 80mm F2.8 T* (ƒ/2.8, 1/100, ISO 400) ©2020 Saw Ichiro.
ライカ・プロフェッショナルストア東京に初めて訪れた時には、まだ何も買ってもいない僕の様な下民に対し、まるでVIP待遇かの様な振る舞いをして下さった。ライカでなくても、葉山のスターバックスのお姉さんなんか、行くたびに神!と感動するし、ほんの一瞬のやり取りだが、その日一日を清々しい気持ちで過ごさせてもらえる。
これは電話のお兄さん一人の問題では恐らく無く、ハッセルジャパン全体の社風とすれば簡単に改善出来る物ではない。面倒なのは分かるが、日本語マニュアルなんて情熱があれば一週間で作れるはず。鼻血が出そうになりながら買ったのに、いろいろツッコミどころが多すぎて本当にファームウェア・アップデートしてくれるのか不安でいっぱいだw。やっぱ大人しくライカかGFXにすれば良かったかなと若干思わなくもない(^^)
ちなみに一年前に発表されたCFV II 50Cのリリース時期は、今も何も分からないという回答だった。ハッセルさん、お願いしますよ!
(2020年2月26日:追記)
MFアシスト機能
MFアシスト機能はいくつかあるのだが、フォーカス・ピーキングは判定が甘すぎて、全然合ってない部分も色が付いてしまい、当てにならない。判定の厳しさを調節する事は出来ない。仕方ないのでオートズームを使うしか無いが、これもレンズアダプタ経由でVレンズを使う限り、まともに正しく作動しないので結局ズームボタンを毎回押して確認する事になる。
EVF自体の反応は速いし十分見やすい。光学ファインダーしか無いSよりも拡大出来るだけ個人的には有り難い。でもやっぱりLieca M型のレンジファインダーのピント合わせからすれば、20倍くらい時間はかかってしまう。
Phocus Mobile2
一応、X1DIIの英文マニュアルは全部読んだ。僕はコンピューターには弱い方では無いし、英語に対する耐性も一般的な日本人よりはあると思うが、どちらも苦手な方がこのカメラを買ったらキレると思う(笑)不具合や疑問を何度も自力で乗り越える忍耐力と調査力が不可欠だ。試しに僕のiPad ProでPhocus Mobile2のWifiテザリングをやってみたが案の定、惜しい所まで行っても一度もまともに接続出来なかったw。どうやらWifiが頻繁に途切れてしまう事が原因だが、この手の最新機能、、、でもないが、wそういうのはLeicaも最初は不安定だった。まあ別に使わないからいいけど。
それより残念な事は、Capture OneはX1Dシステムには完全非対応で、今後も対応する見込みが無い事が分かってしまった。購入前には、そこまで頭が回らなかった。しかも、なんとGFXには対応していた!
X1D IIをなんとかうまく運用する方法を模索しているが、まだ一週間経っていないし悲しいけど、この最初のレビューが最後のレビューとなる事もマジで考え初めている。Fujifilm GFXに行った方たちの幸せそうな声を聞くにつけ、自分は何故こんなに苦労してハッセルにこだわっているのか分からなくなってきた。ベースセンサーは全く同じモノだ。
僕は美しい道具を身の回りに置いておきたい気持ちが強い。昔アルファロメオをこよなく愛していた事からも(アルファばかり3台乗り継いだ)、他の百難には目をつむっても美しさには勝てない性格は確かにあるw。アルファロメオもよく窓が閉まらなくなったり、雨が降ってきたのに屋根を閉じれなくなったりしたが(笑)それが面白かった。毎週何かしら修理が必要になったとしても、エンジンとデザインは代えがたい魅力があった。
ハッセルの名誉のために、この苦労の半分はVレンズだけで行こうとした僕の無謀な作戦による。残り半分は僕のせいじゃないが。w
Fujifilm GFX 50Rが次のバージョンに進化し、ボタンだらけの旧式スタイルからX-Pro3と同様のシンプリシティの追求に向かったなら、すぐにFujifilmな人になる決心はほぼ固まっているw。