Pentax K10D

アンチ・ライカ

その昔、僕はクルマばっかり撮っていた。というかクルマを撮るためにカメラを買った。当時はカメラ自体に大した興味は無かった。2007年 by ichiro 「それは最高の趣味カメラだね」と言われた。今年の夏、あるプロカメラマンと酒を飲んだ時の話だ。その言葉の裏には、複雑な思いが入り混じってるのを僕は感じた。 実は僕は、アンチ・ライカの人の気持ちが分かる。何もかも価値観が違いすぎて、シンプルの美学なんて言われてもさっぱりピンと来ないと思う。では、あなたはコンピュータは何を使っているだろうか。Macしか使わない!そう豪語する貴方は、一度ライカと深く付き合ってみたら、多分ハマる。人間とカメラとの間に、初体験の親和性を感じるはずだ。 実際には彼はアンチライカでは無く、その時も彼はパナソニック製の小型ライカを携えていた。彼はかつてTVの世界で大いに活躍した人だ。しかし無礼にも、何も知らないアマチュアの僕の方が、ヘラヘラしながらLeica Mの最新鋭、M10をぶら下げていた。誰が見ても構図が反対だ。 Leica M10 + Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/5.6, 1/125, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro. 僕は彼に対する不快感や否定する気持ちは全く無いし、むしろ尊敬に値する人物だ。カメラ談義、特にライカの話で盛り上がった。彼はライカに一種の憧れを持っていた。いやむしろ強い興味があると思った。だからこそプロとしての自尊心を守るために、なんとかしてライカを買わない理由が必要な様に、僕には見えた。 「仕事に使うにはキャノンじゃなきゃダメだよ、多灯ストロボ使用時の肌の色は、キャノンでなければ出せない」「ライカの絵はキャノンを加工すれば得られる」という様な事をおっしゃっていた。一回り上の先輩だし、酒の席だし楽しかったから、僕はなるほど、うんうんと一言も反論せずに聞いていたが、実はそのいずれも反論がある。 言っている意味も気持ちも分かる。しかしライカはマニュアル撮影を楽しむだけの趣味カメラというのは、正しく無い。Leicaの本質は、一切の妥協の無い本気の仕事カメラだからだ。 運動会、レースなら、キャノンの方がいい。全てのシーンを絶対に抑えなければならない結婚式も、ズームレンズ&オートフォーカスの方が無難だろう。プロカメラマンを僕はリスペクトしているし、僕も昔、かっ飛んでくるF1を連写するのに夢中になったが、カメラの仕事はそれだけじゃ無い。 ライカは自らの美学を発信する芸術家の右腕に相応しい、こちらもプロの道具なのだ。 by ichiro。小さい写真なら残っていたので引っ張り出してきた。2007年の富士。この時はPentax K10Dだったかな。ちょうど10年前か、懐かしい。 日常の中から美を切り取るストリート、深く個性を写し込んだアー写、ジャケ写、ポートレート、ルポルタージュ。ライカの強みを発揮する場面は多い。アンチ・ライカの共通点は、ライカを所有した経験がない事だ。出てくる絵は、どうしても僕はルクスやノクチの方がセクシーに見えるのだが、カタログのスペック表だけ眺めてもその優位性に気づけないのは、当然の事だと気が付いた。 僕がクライアントだったら、キャノンを加工してライカっぽくした絵が欲しいんじゃ無い。ライカやハッセル、ローライで勝負している人は、周囲の潮流に抗い、数値化できない何かを信じ求める人だ。何でも無難に撮れる人じゃなく、何か一点に突き抜けてる人。自分の大切な仕事はそういう尖ったフォトグラファーに頼みたいのだ。…