2018年12月31日 ichiro

MS Optics Sonnetar 73mm f1.5(宮崎光学)のレビュー

新宿の街角。Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/250, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

作例もまだほとんど出回って無いし、ろくに調べもしないまま僕は即決したが、宮崎さんのこれまでの趣向から、きっと軟調系レンズである事は想像がついたし、ボディ同様、ぶっちゃけレンズがどんな描写でも、その特徴を活かした使い方をしてみようと思っていた。そもそも、僕の最近の作風からご察しの通り、もはや解像度や性能など大した意味を成さなくなってきている。(笑)

窓。Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/60, ISO 400) ©2018 Saw Ichiro.

その焦点距離から、Leica Hektor 73mm f1.9のオマージュである事は想像できる。ヘクトールは1940年台前半に生産中止された大昔のレンズで、市場で見かけるほとんどのUsedは外見がボロボロだ。

他の70mm台レンズの選択肢としては、

APO-Summicron-M 75mm f/2 ASPH.
Summilux-M 75mm f/1.4
Summarit-M 75mm f/2.4

あとはコシナ製のHeliar Classic、Color Heliarがあるくらいだ。あ、いや、眼中に無さすぎて忘れていたが、最近、Noctilux-M 75mm f1.25 ASPH.‎なんてのも出た。Mレンズ史上最大重量、最高額の1055g、160万円也。使ってみたいなあ。

Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/500, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

Apo Summicronは高解像系で今の僕の趣向とは違うし、本命のズミルックス75は初代の490gならまだしも、第二世代600g、第3世代560gとレンズ重量的にNoctilux 50mm(700g)に迫るもので、個人的にはMの手軽さから来る楽しさが若干スポイルされてしまう。
ズマリットはポートレート用途としてはf値がちょっと足りない。モデルと背景の分離感がもう少し欲しい。特に高感度耐性の弱いM9では、室内や夜間にシャッタースピードといつも相談しながら難儀する事になるだろう。

2am. Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/30, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

そこに来て、以前からその描写が気になっていた宮崎光学から73mmが登場した。2018年11月にようやく流通したという初期ロットを僕は迷わず購入した。だってヘクトールのオマージュでありながら、f1.5まで大口径化し、しかもその重量は驚異の197g!!Summilux 75の3分の1じゃないか^_^。サイズ的にもメーカーの小型化への並々ならぬ意欲を感じる。

レンズは簡単な紙箱に入っている。外見はf2.8のエルマリート90mmとほぼ同じ太さしか無いが(レンズ長はずっと短い)覗き込むと外枠いっぱいに大口径レンズが美しく収まっている。しかも大口径にも関わらずエルマリートよりさらに軽い。

左がエルマリート90mm f2.8と専用フード、右がゾンネタール73mm f1.5と自作フード。

たくさんの羽を使った絞りはほとんどのライカレンズよりも真円に近いが、絞りはクリックが無い連続可変式。絞りを回そうとするとフォーカスリングも回ってしまい、絞りだけを動かすには両手がいる特殊な構造は、限界の小型化とのトレードオフだろう。

Elmarit 28mm F2.8初期型を思わせるボディの「くびれ」がカッコよく、製作者もまたライカ・ファンの一人である事を想像させる。最短1m〜無限遠までフォーカスリングが丁度90°いっぱいで行き来出来るのも、回転途中で握り直す必要がなく速射性に優れる。

簡易印刷された説明書が付属するが、そこには宮崎さんの想いが綴られていて興味深い。

描写性能

ASPHレンズほど鋭く無く、かと言って初代ズミルックスほど甘くも無い。大きなボケと美しいフレアが女性的な優しさを演出してくれる柔らかい質感で、絞ると完璧に現代レンズ然となる。ポートレート用途として僕はすっかり気に入ってしまった。

winter light. Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/3000, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

発色もいいし、ヌケの良い明るさがある。安価なチャイナ製レンズに見られる、レンズ研磨の精度の低さからくる像の歪み、物体の不正確な変形は全然感じない。この辺りがメイドインジャパンの面目だ。

ちなみにThorsten Overgaard氏は最近7 artisansの激安レンズを紹介していたが、僕個人としてはあれはNGだ。望遠鏡の世界でも、値段に負けてチャイナレンズには何度も失敗してきてた苦い経験がある。

世間では収差ばかりが取り沙汰されるが、物体の形の正確性に大きく関わるレンズの研磨精度の方が、僕にとっては重要だ。残念だが光学製品に限っては、日本製、ドイツ製に及ぶ研磨品質を中国産に求めるのは不可能と悟るに至っている。

Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/350, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

73mmは、75mmフレームと50mmフレーム枠の中間くらいの画角になるので、Mのレンジファインダーではかなりアバウトにしか分からない。デジタルライカ用なら最初から75mmで設計してもらった方が使いやすいが、きっとサイズも重量も大幅増になるのだろう。正確に写り込み範囲を確認したい人は、ヘクトール用の73mm外付けファインダーが存在する様だ。

クラシックな質感を残しつつも総じて現代的な品質の高さを感じるが、逆光にはめっぽう弱い。Summilux 35mm 2ndほどでは無いがゴースト、フレアがしっかり出る。ほどよいフレア感はポートレートレンズに必要だが、レンズフード内で反射した太陽光により、画面下側のコントラストが極端に低下し、下側だけ露出が1段近く明るくなったりする。これは深刻な問題で、全体的に一様にコントラストが落ちるならまだしも、画面内で色ムラ、露出ムラが激しいのだ。これはなんとかしなければならない。

そこでフードを新調する作戦に出た。フィルター径は一般的な49mmだが、なんとレンズ側のネジ山が通常とは反対についている!NDフィルターは裏返しにして装着できるものの、社外フードを装着するには特殊な49mmのメスーメスアダプターが必要だ。

真ん中のリングがメスーメスアダプター。

純正フード長(写真左)は約1cm。現行ライカレンズのフード内蔵タイプと同様、デザイン重視で申し訳程度の効果しか望めない。どうせならフード長4cmくらいを目指して、早速アマゾンに注文した。(写真右)最初は良さそうに感じたが、フィルターを挟んだり、状況により思い切り蹴られる事が判明。

Long hair. Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/60, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

僕はレンズに保護フィルターもキャップも何も付けない派だが、特にこのレンズは開放で使ってこそなので、日中のNDフィルターは必須だ。そこで先端径を大きくしたり、フード長を短くして2個連結したり、先端をカットしたり(笑)フード口径を最小化しつつ、かつフード長の最も長いベストな組み合わせを探して、いろいろ試したがなかなか難しい。

持つべきものは、その場で何でもやってくれる、気さくな金属加工屋さんの知り合い^_^ お代も受け取られないので一升瓶をお土産に。レンズフードを数mmカットしてもらった。Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/60, ISO 200) ©2018 Saw Ichiro.

どうやらf16で無限遠いっぱいにしないとケラレは正しく確認出来ないと後から分かり、結局、手元には49mmの社外フードの山になった(笑)つまらないモノに散財してしまったが、アマゾン商品は詳細説明が全然不足してる。

あ〜あ、やはり素人がテキトーに目見当でこういう事をやると、いつもこうなるw。Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/125, ISO 320) ©2018 Saw Ichiro.

僕が最終的に辿り着いた、フィルターを挟んでも絶対に蹴られない、最もフード長の長い組み合わせはこの2パターンだった。(金属加工なし)

ラバーフードはフード長が5cmあって、最も直射を防げるが、どうにもカッコ悪い(笑)それにレンジファインダーで見ると75mmフレーム枠の1/5くらいレンズフードで覆われて、すこぶる見にくいw。

とりあえず後者を採用。こちらはファインダー用の隙間がフードに開けられているライカタイプを選択、先端の口径自体もラバーフードより小さいので、長さは4cm以上あるがファインダー視界への干渉が小さい。以下2点の連結だ。

ケンコーの49mmの方がスリムだが、先端部でケラれてしまう。ハクバ49mmは先端径が58mmで今回の条件に合致した。

連結には今度は58mm径が必要で、先端径が広いこちらのノーブランドを選択。もちろん金属製で作りも全然問題ない。

しかしSonnetarはフォーカスが回転ヘリコイドでレンズ全体が回るため、フードの隙間がちょうど良くファインダー視野位置に来るとは限らない。直進タイプと比較して、回転ヘリコイドの方が構造がシンプルで軽量だからという、製作者の英断だろう。そのためフォーカシングによりやや見えにくい状況が発生するのはこのレンズの宿命だ。

しかしフード内の照り返しは金属フードでもラバーフードでも防げず、フード長をどんなに長くしても晴天時の画面下側のコントラスト低下は免れない。

最後に到達した連結フードと純正フードの長さの違い。Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/60, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

僕はほとんど逆光か半逆光の写真しか撮らないので(笑)この問題はどうしてもクリアしなければならない。今度はレンズ内側に植毛紙を貼りめぐらし、これでようやく僕の理想に到達した。1.25xのファインダー・マグニファイアーも新調し、やっと戦闘準備が整った。やれやれ、世話のやけるレンズだが、カスタマイズの分だけ愛着が湧くというものか^_^。

描写的にもサイズ的にも、このレンズの特徴はレンズ自身の自己主張が控えめな所だ。優しくも繊細な描写が素晴らしいのに、「ほら、スゲー解像度だろ!」とかレンズが言って来ない感じが、今の僕には心地よい。

今の所、まだ昼間まともに撮影に出かける時間を得られていないが、次のポートレート撮影のチャンスを楽しみに待つことにしよう。

Leica M9-P, MS Optics Sonnetar 73mm f1.5 (ƒ/1.5, 1/500, ISO 160) ©2018 Saw Ichiro.

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