2018年5月6日 イチロー

Leica M2の洗礼と人間露出

LEICA M2 + ELMARIT-M 90mm F2.8 ©2018 Saw Ichiro.

先日購入したM2はSer.1086304、1963年製の様だ。フィルムを巻く以外、操作方法がMデジタルと全く同じなので、最初の一本目からまるで昔からM2を愛用してきたかの様に自然に扱えるのは、まさにライカの美点だ。

早速フィルム3本の現像が上がってきた。どうせフィルムで撮るなら思い切りフィルムっぽいやつを^_^、という事で以前から気になっていたAdox Color Implosionを求めたが、残念ながら既に世界的に入手困難になっていた。代わりにLomoのトイカメラ用?のColor Negative400&100、モノクロはKodak T-max400から始めてみた。Lomoはちょっと昭和感が残る、ガーリーな仕上がりになる、そして安い。もっと変態的な写りを期待したのだが^_^、予想よりは普通だった。

そしてフィルム4本目にして、お約束のM2のフィルムカウンターリセットを早速忘れた(笑)。現在進行形で今何枚目かさっぱり分からない。

LEICA M2 + Summaron 35mm/f3.5 ©2018 Saw Ichiro.

フィルム3本中10枚程度、この様な露光漏れの現象が見られ、いきなりフィルム・ライカの洗礼を受けた。どうやら一定の条件下にて、シャッター幕に不具合があるらしい。自分より年上のこんな古いライカで本当に写真が撮れた事だけで嬉しかったし(笑)、酒の肴のつもりで買ったので完全動作しなくても触っているだけで楽しいのだが、ちゃんと整備した方がもっと楽しい事は間違いない。

LEICA M2 + Summaron 35mm/f3.5 ©2018 Saw Ichiro.

ライカの先輩諸氏に様々に有り難いアドバイスを頂き、修理店もご紹介頂いたが、まずは正攻法に購入した所に相談する事に決めた。結局、レモンカメラさんに整備部門があるとの事で無償修理して下さる事になった。整備後に現像テストを行うため最大3週間かかるそうだ。気長に待つか。

せっかく貴重な修理店の情報をたくさん教わったのでまとめてみる。全部人伝の情報で実際は直接問い合わせてみないと分からない。

  • 川崎 関東カメラ
    修理オーダーが渋滞しているそうで、ある方がレンズのO/Hを相談したら半年かかると言われたとの事。Usedの販売も行っている。
  • 横浜 大貫カメラ
    横浜の老舗店。修理依頼については別の修理業者さんに依頼する様で、見積の回答には少し時間がかかる場合がある。
  • 横浜 松村カメラサービス
    大貫カメラさんが修理に出す業者さんのひとつで、見積即答かつリーズナブルに対応して下さるそうだ。
  • 文京区 ウメハラカメラ
    土門拳や木村伊兵衛!のカメラをリペアしていた人達がやっているベテランの修理屋さん。ニューヨークから取材にきてたりもして、ライカジャパンで修理不能なオールドレンズも対応してくれるそうだ。
  • 銀座 レモン社
    販売店だが自社で整備工を持っていて、今回も無償修理に対応して下さり、安心して中古ライカを購入出来る。

ちなみにライカ社にお願いすると本国送りになり、3ヶ月はかかるそうだ。

 

クラシックライカを人間露出で使うための考察

内蔵露出計を持たないクラシック・ライカは当然、露出を見る目が要求される。最初の数枚は露出計で確認したが、それ以降は昼間はほぼ全て人間露出計でチャレンジした。結構外したモノも数枚あったが^_^、ネガフィルムの場合はデジタルよりずっとアバウトで行ける。ブレッソンの逸話から考察したf8中心の法則で十分対処出来たという自己満足感はフィルムならではだ^_^。

この3本でフィルムのコツみたいな事もちょっと分かった。ネガはハイライトの白飛びが滅法強く、S-Eなら完全アウトな場面でもネガは全然へっちゃらだ。スキャンしたTIFFの露出を後から落とせば階調は余裕で復活してくれる。その代わり、アンダーに撮ってしまうと後から持ち上げてもノイズしか上がって来ない。


LEICA M2 + Summaron 35mm/f3.5 ©2018 Saw Ichiro.

この特性を利用して、露出に迷う場面では結構ラフにちょっとオーバー目に撮っておけば全然OKと学んだ。実際、f8.0, 1/125sだと屋外では半段〜1段くらいハイキー気味になる場面が多かったのだが、この場合は何の問題も無く後で微調整が出来る。つまり現場ではあまり露出を細かく追い込むより、ライカらしくシャッターチャンス優先で行けばいい。

逆にガッツリ日陰で露出が足りなくなった時には救う手立てがないので、ややハイキーだったとしてもやはりf8, 1/125sを基準で、日陰が占める割合が多ければf5.6、或いはf4.0まで開ける作戦で、しばらくは行ってみる。

(S-Eの場合は、逆に白飛びが異常に弱い。被写体の瞳あたりでオートで中央重点測光してるのに、おデコが白飛ぶ(笑)何度もこの特性にいじめられているので、仕方なく露出補正をマイナス半段入れて使っている。)

LEICA M2 + Summaron 35mm/f3.5 ©2018 Saw Ichiro.

問題は、室内と夕方以降だ。ちょっと暗くなってくると僕はもうお手上げで、iPhoneの露出計アプリに頼りきりになってしまう。露出計アプリはいくつか試した中で、Lumu Light Meterが使いやすい。測光アタッチメントを買わなくても無料アプリだけで十分使える。ゴツいセコニックの入射光式より、Lumuの反射光式の方が実際使いやすい場面も多かった。

しかし実際に露出計アプリを使ってみると、一度iPhoneで写真を撮ってから、また同じ写真を今度はライカで撮る様なもので、作業的には実にアホらしい。ゴソゴソとiPhoneを取り出しパスワードを入れてアプリを探してと、無茶苦茶時間もかかる。なんとか全部目測で行けないものか。

M2で愛用しているズマロン35mm f3.5とエルマリート90mm f2.8は、どちらも明るいレンズとは言い難く、夕方以降はISO100は厳しい。取り敢えず基本はISO 400で行くとして、昼間の様な何か基準となるアイディアは無いものか。

LEICA M2 + Summaron 35mm/f3.5 ©2018 Saw Ichiro.

そこで僕が考えた作戦はこうだ。

夜間・室内

本当の真っ暗闇にカメラを向ける事は普通は無く、何かしらの光源がそこにはあるはずと仮定し、それならば人工照明とそれに照らされる直近の周辺の露出を大凡把握するのがまず第一歩だ。

もちろん光源が60wだったり100wだったり、光源と被写体との距離も一定という事はあり得ないので、やや明るめに撮っておくというシンプルな作戦だ。大抵はこの方法で、大外しは防げるのでは無いか。

僕の持論は写真には、一箇所でもちゃんとしたハイライトが入っていれば行き過ぎたアンダーとは感じないと考えているので、光源自体がフレームに入る場合は、開放f3.5 ISO 400で考えると、SSは1/30sで十分な明るさを確保出来そうだ。

光源がフレームに入らない場合は1/30sではやや露出不足を感じるので、1/15sとなる。絶望的に暗ければ、1/8sを試す。f2.8レンズだったとしても明るくなる分にはネガなら後から救える範囲なのでSS値は同じでいいという、乱暴な仮説を立ててみた。

夕刻

太陽が沈む時間帯は5分ごとに露出が大きく変わるので、法則立てはなかなか難しそうだ。昼間の基本であるf8.0, 1/125s(ISO400の場合は1/500s)は日差しと日陰が半々のバランスで成立するので、夕日の直射を浴びていなければ、若干暗くなったと思ったらすぐにf4.0、或いはいきなり開放f3.5で問題無いかも。日が落ちるに合わせ徐々にSSを落として行き、黄昏時で1/30s、そのまま夜間の法則に移行する。

しばらくこの作戦で実験してみる事にする。


LEICA M2 + Summaron 35mm/f3.5 ©2018 Saw Ichiro.

フジカラープラザ逗子店

フジカラープラザ逗子店の店長さんがとても親切で、フィルム現像工程の一部始終をご丁寧な解説付きで、見学させて下さった。36枚フィルム二本まとめて機械に入れられる。実際に現像機が要する時間は14分。現像機では自動露出補正は入れる事は無く、必要ならプリンターで露出補正は入れる事があるそうだ。閉店間際に伺ったのに、すぐにその場で現像、当日持ち帰らせてくれた。

カラーネガのみ各支店で現像可能で、モノクロやポジは調布のフジフィルムの工場への郵送になる。現像コストもモノクロはカラーの倍額。それなら撮影は常にカラーネガを使って、スキャンで取り込んだ後でC1なりLRなりでモノクロに変換する方が安いし早い事に気がついた。その方が黒の濃淡も後から好きにコントロール出来るので自由度も高い。

フジフィルム調布工場

いろいろサービスして下さり感謝が尽きない。今後はいつもフジカラープラザ逗子店にお願いしよう。

デジタルにはノイズを入れて喜んでるのに、フィルムだとノイズリダクションを入れてみたりして^_^、人は無いものをねだる。LEICA M2 + ELMARIT-M 90mm F2.8 ©2018 Saw Ichiro.

僕のELMARIT-M 90mm F2.8はシリアルから1972年製の第一世代。デジタルで使うと彩度、コントラストが淡くほとんど使っていなかったが、フィルムではこのレンズが水を得た魚の様に映える。f8.0でも背景が柔らかくボケてくれるので人を撮る時には重宝する。軽く小さいので持ち歩く負担も少ない。当面は35mmズマロンと90mmエルマリートの二本体制に落ち着きそうだ。


Leica S-E (Typ006) + Leica Summarit-S 70mm f/2.5 ASPH (ƒ/2.5, 1/60s, ISO 100) ©2018 Saw Ichiro.

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問題は、構図だ!
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Leicaのススメ

ライカを買いたくない人は、読まない方がいいやつ

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Leicaオーナーになるということ

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ピーチ先生の構図の添削

ピーチ先生にichiroの構図のダメさをボコボコに指摘されまくるシリーズ。電子書籍も販売中(^^)

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ご報告:ピーチ先生の「構図の添削」が電子書籍になりました^_^

皆様、お元気ですか?実に5ヶ月ぶりに記事を書いてみている。この間、写真遊びを若干控え、ちょっと仕事なんかしていたが^_^、その中でもいろんな事があった。愛機のLeica S-Eに小さなCCDトラブルがあり、ドイツ行きになり3ヶ月間フジXで頑張っていた事、仕事の関係で久しぶりに渡米し、NYで少し写真を撮った事、そしてマッハ新書から、ピーチ先生の「構図の添削」を出版させて頂いた事だ。

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構図の添削3

JLUGで普段からお世話になっている小山 裕之さんが、ピーチ先生の構図の添削を受けてみたいと謙虚に仰って下さった^_^。3枚の素敵なお写真をお預かりしたので、御本人の許可を頂きこちらで一緒に考えてみたい。

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構図の添削2

前回のピーチ先生の構図の添削が思いのほか好評で^_^、むしろベテラン勢の面々が面白がって下さる様だ。敬愛する先輩諸氏から続編をやれと仰せつかったので、今日は一枚に絞って書いてみる。この一枚を改善するとしたら、貴方ならどう処理してOKとするだろうか。

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構図の添削

先日、構図改善大作戦でちょっと紹介したが、最近の僕の写真が現役デザイナーにどの様に指摘されたか、いくつか例題を出してみる^_^。まずは写真を貼って、その次に構図の添削付きを順番に並べるので、答えを見る前にどこを改善すべきか、是非貴方も僕の駄作を添削してみて欲しい。

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日本のライカオヤジ

最近買った写真集。”One Mind’s Eye” Arnold Newman。これが、無茶苦茶良かった。ムッチャクチャ良かった!!ブレッソンが構図の「面白さ」としたら、ニューマンは構図の「カッコよさ」だと思う。よく見れば気が付くのではなく、見た瞬間に、ひと目でカッコイイのだ。

Leica M型の使い方

オーナーは教えてくれない、ライカは実は超カンタンな件

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現代デジタル・ライカで速射性を考える

クラシック・ライカの速射性は以前、アンリ・カルティエ・ブレッソンの「晴れた日はシャッタースピード1/125s、絞りf8、距離は10feet(5m)に固定」していた逸話から考察してみたが、露出計が内蔵されている現代のデジタル・ライカで、最も合理的な方法とは何かを考えてみた。

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カルティエ・ブレッソンの教えをM10でやってみる

いよいよ仕事が忙しくなってきたので、またこのブログに現実逃避することにする(笑)この秋に手放したHASSELBLAD 50周年記念 500C & Makro Planar CF 120mm F4 T*で撮った最後のフィルムの現像が上がって来た。現像に出そうと思いながら数ヶ月間、使用済みフィルムをバックに入れたまますっかり忘れて持ち歩いていたら、カビが生えてしまった(笑)。それだけM10が面白かったとも言える。汚らしいのでアンダーにして誤魔化す。

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ライカの内蔵露出計

「だってマニュアルだしなあ」とライカに興味はあっても使いこなす自信が持てない人のために、是非ここで紹介してみたいと思っていた。実は、ライカのマニュアル露出は「超」カンタンなのだ。ライカの優れた内蔵露出計がマニュアル操作性を著しく簡単に、便利にしてくれている。

写真に向き合う人のための登竜門

いろんな人からイイこと聞いたり実験したりしたのでシェア

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写真は「滅びの美学」

以前、友人が教えてくれた「貴方は何のために写真を撮るのか」の中に多くのヒントがあったのだが、それでも僕の足りない頭では未だモヤモヤしていた。ところがある日、美輪明宏さんの美しいお言葉の中に、僕の知りたかった答えの全てがあったので是非ここでご紹介したい。

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世界に羽ばたけ!LFI、Leica Meet(最終回)

何かのセレクションに入選したり、いいねを頂いたりするのはとても嬉しいし、光栄な事だ。しかしいいねを獲得する事自体が、写真を撮る目的になってはならないと僕は思っている。クライアントが喜ぶ作品が求められる商業写真家と違って、我々写真愛好家は、自分のためだけに写真を楽しんでいい特権がある。

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貴方は何のために写真を撮るのか

「何のために写真を撮るのか?」「何を撮りたいのか?」
貴方はこの問いに、なんと答えるだろうか。
今日は僕にとって、また写真愛好家にとってとても大事な事を教わったので、是非ともここで共有したい。

カメラ機種別・記事まとめ

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Sigma fpL

L1020739

Hasselblad X1D II

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Leica S

M9-P

Leica M9

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Leica M Typ240

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Leica M10

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道具編

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天体観測

Capture Oneの現像はイイのか?
問題は、構図だ!