2017年12月1日 イチロー

富士フィルム X-T20のレビューと比較

このブログに現実逃避も出来ないくらい、タイムスケジュールに追われてしまって、個人としての生活に様々な支障が出てきている。ほとんどライカも触れていないし、買って間もないフジは嫁に預けっぱなしだが、今日ようやく時間が取れたので、やりたかった比較実験をしてみた。

プロ・オーディオの世界では、100万円と20万円の機材の間には、超えられない壁がある。20万円の道具でも十分に仕事は出来るが、一度比較してしまうと、個人の好みの問題を超えて、その優劣は誰にとっても明々白々なものだが(民生オーディオは価格と音質が全く比例しない不誠実なモノも多い)カメラも同様の傾向はあるのか?

Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/500, ISO 100) ©2017 Saw Ichiro.
Fujifilm X-T20 + Leica Rigid Summicron 1:2/50 (ƒ/2.0, 1/680, ISO 200) ©2017 M Nishi.

 

この写真はお互いを撮ったもので、ライカM10にはSummilux 50mm f1.4 ASPH.、フジX-T20には固定鏡胴ズミクロン50mm f2.0が付いている。固定鏡胴ズミクロンも、カルティエ・ブレッソンやソールライターも愛用した伝説的な銘玉だが、X-T20に付けると今の所、どうもぱっとしない。M10とX-T20では、まだまだ表現力の差がある様に見える。どこか潤いを感じさせるライカに対し、X-T20は乾いている。これを人はライカの空気感とか呼んだりする。

ただし、これはライカはRawで撮っていて、フジはJPG撮って出しの点で、ライカ有利ではある。しかもこの時はフジのJPG設定を極端にいじっていたかもしれない。

フジをJPGで使いたくなるのは、お得意のフィルム・シミュレーションがJPGにしか活かせない(と思ってた)のと、Lightroom CCではそのままではフジのRawを現像できなかったからだ。

X-T20のRawを扱うには、Camera Rawプラグインをアップデートする必要がある。たった今、アップデートしてみたら、途端に便利になった。今まではJPGしか使えなかったフィルム・シミュレーションが、Rawのカメラプロファイルで後からじっくり選べる。これでJPGにこだわらなくてよくなった。
https://helpx.adobe.com/jp/camera-raw/kb/camera-raw-plug-in-installer.html

この事は今知ったので(^_^)、この記事に載っているX-T20の写真は全てJPG撮って出し、ほとんどPROVIAスタンダードだ。

違うレンズではよく分からないので、同じレンズで全く同じ設定で、ライカM10とFujifilm X-T20がどう違うのか、大きな価格差が絵に現れるのか。そこが一番の関心事だ。

葉山、音羽の森ホテルでお茶しながら何枚か比較してみた。レンズはいつものズミルックス50mm f1.4 ASPH.だ。

Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125, ISO 400) ©2017 Saw Ichiro.
Fujifilm X-T20 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125, ISO 400) ©2017 Saw Ichiro.

 

それぞれズミルックスの最短付近の、いずれもJPG撮って出しだ。撮影者位置はほとんど同じだが、X-T20はAPS-Cサイズのため、周辺がクロップされ拡大して見える。全体的にフジの絵作りはコントラストも彩度も高め。どのフィルムモードも多かれ少なかれ同傾向があり、人為的に後から作り込んだ臭があるとも言える。それがハマる事もあると思うが、これが原因でリアリティを損なう場面もあるだろう。わずかな違いだが、総じてライカの方がやや自然な印象か。

Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125, ISO 400) ©2017 Saw Ichiro.
Fujifilm X-T20 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125, ISO 400) ©2017 Saw Ichiro.

 

こちらはモノクロJPG撮って出しだ。フジのフィルム・シミュレーションはACROSだ。フジは同様にコントラストは強調気味なものの、こっちはライカを同サイズにクロップしたら、言うほど違いは分からないかもしれない。いや、やっぱライカが佇まいが優しいか。

そもそもズミルックスASPHは、6bitコードでレンズ情報が伝わりライカボディで本領を発揮する点で、ここもライカがちょっと有利と言える。

Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125, ISO 400) ©2017 Saw Ichiro.
Fujifilm X-T20 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125, ISO 400) ©2017 Saw Ichiro.

 

Thorsten von Overgaard氏のX-Pro2レビューによると、フジXは青とオレンジが強く出るという。空の青を強調したかったのか、そういう開発陣のプロファイル作成時の意図的な作為と言ったら失礼か?それがかえってネガティブな要素となり得る。また、全体的にホワイトバランスがフジは青側に寄る傾向がある。

これらの作例を見て、これならフジで全然良いと判断する人も居るだろう。この程度の差に、8倍の価格の価値を見いだせるかどうか。テーブルフォトだけでなく、ポートレートでも比較してみたい所だ。カラーチェッカー・パスポートで独自のカラープロファイルをお互い作成したものも、ぜひ比較してみたい。

その他の点も、簡単に思った事を書いてみる。

サイズ感

フジXの良い所は、なんと言っても軽い。X-T20を握ったあとM10に持ち替えると驚くほど重く感じる。これは普段持ち歩き用として、サブ機として大きなメリットだ。

しかしボディサイズとしては大人がちゃんと握るにはやや厳しい。嫁は握るたびに十字キーの右を押してしまい、変な画面が出ていつも困っていると言う。僕が普通にカメラを手に取る時、指が触れていて、押さない様に気をつけなければならないボタンの数は、右手親指だけで実に10個!

それでなくても右手の中指、薬指がレンズにつかえて、そもそも僕の手のサイズでは手のひら全体でボディを掴む事が出来ないので、今回は軽量、小型を重視したが、本気でカメラと向き合うなら、一回り大きいボディの方がいいかも。

ちなみにライカM10にも似たような位置に十字ボタンがあるのだが、今いろいろ確かめてみたが、どうやっても手の平で誤って押す事が出来ない、絶妙な配置に工夫されている事に気づいた。

マイクロUSB

マイクロUSBを本体に挿して充電出来る点は、本当に有り難い。ライカも真似してもらいたい。クルマのシガーソケットから、移動中ずっと手軽に充電出来る。MacのUSBやiPhoneの充電器からも充電可能。

ただ電源を入れて撮影スタンバイすると、電源供給はストップされる様だ。両立の方法もあるかもしれないが、まだマニュアルを読む時間が取れていない。肝心のマイクロUSBケーブルが付属しないのはご愛嬌か^_^

Fujifilm X-T20 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/60, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.

 

起動時間と諸問題

電源を入れてから被写体が液晶に映るまで一秒以内で、M10がスリープから覚めるよりも早い。優秀だ。ただ、これは光学ファインダーを持たないカメラの宿命で、電源を入れた後は常に液晶LVが生きているので、バッテリー消耗を防ぐため、撮る可能性が低い時には基本的には電源オフで持ち歩く事になる。

つまり、撮る度に電源ボタンをスライドさせてから、起動を待つプロセスが必要になり、常にスリープで携帯し、レリーズに触れるだけでスリープから目覚めるライカの方が、実用上は速いかもしれない。

液晶は起動させずに、ファインダーに覗き込むとEVFが起動するモードもあるのだが、ファインダーを覗いてからEVFの起動まで0.5秒ほどあり、当然、覗いた瞬間は真っ暗闇。ファインダーはチャンスが見えてから覗くものなので、見た瞬間に何も見えないのは予想以上に辛い。

しかもこのモードではメニューやISO変更なども背面液晶はブラックアウトしたまま、ファインダー内で行わなければならず、何かと使いにくい。うーん、どうするのが一番自分にとって使いやすいのだろう。

液晶とファインダー

X-T20は液晶がチルトするので、仕事で使ったムービー撮影時に、さっそく何度も役に立った。高い位置からのアングルでも、無理なく液晶を確認出来た。ライカなら脚立が居る場面だ。反面、可動式の液晶が常に数mmの遊びがあり、握り直す度にカタカタと歪んだりズレたりする感触があり、ここがどうしても剛性感を低く感じさせるのは仕方ないか。

ファインダーの視度補正ダイヤルは日本製カメラには当たり前だ。最初ライカを買った時、わざわざ自分の視力に合った視度補正レンズを購入する行為に、非合理性を感じたのだが、今回は少し意見が変わった。

ファインダー横についてるダイヤルが携帯時にどこかに触れてしまい、時々ズレてしまうのだ。まずは視度補正を適正に戻してから撮影に入るという、ライカでは絶対に起きない面倒がある。これは一長一短と思った。

ちなみにファインダーLVは、物凄く青みがかっていて、液晶と全く色の見え方が違う。カメラのLVとしては致命的に色がおかしい。シャッターを押した後、背面液晶で確認して、色味の違いにいつも驚く。

なんか、総合的に見て僕は光学ファインダーを持つX-Pro2の方が、やはり合っていたかもと気づき始めてはいるが(笑)、基本は嫁用なので大事なのは嫁に合うかだ。

Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/60, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.

 

今回はズミルックスで比較したが、マニュアルフォーカス・レンズを使う場合には、ライカのレンジファインダーが圧倒的に速く、使いやすい。使い慣れてる事もあるが、フジのEVFはそのままでは精密なピント合わせが難しく、いちいち拡大ボタンを押してピントをあわせて、もう一度押して構図を整えてシャッターを押す流れ。一枚撮るのにモタモタと時間を要する。やはりフジは純正のオートフォーカス・レンズで使うべきか。

ちなみにライカの別売EVFは、ピントフォーカスをいじると自動的に拡大され、レリーズ半押しで元に戻るので、この様な面倒を感じなかった。僕が知らないだけで、フジにも同様のオプションはあるのかな?

X-T20の描写まとめ

十分にシャープだし、フィルム・シミュレーションはなかなか面白いし、良い写真を量産するポテンシャルを感じる。だからライカの代わりにフジで良いか?という問には、今のところ僕はNoだ。ほんの少しの違いとも言えるが、そこが僕にとっては結構大きい。

面白いのは、ズマロン35mm f3.5をフジに装着すると、単なる性能の悪い50mmレンズにしか見えない事だ。ライカで見るズマロンの味わいの、一切が失われる感じがした。ズマロンの個性は、APS-C機でクロップされる周辺減光だけなのか?

一方、ズミルックス50mmはズミルックス的な物体のあり方、シャープネスと柔らかさの共存は十分楽しめる。

僕は以前、ただの白いカップとソーサーをライカM240で撮った白黒写真を見て、息を呑んだことがある。ただ、カップの白から黒に至る陰影が写っているだけなのだが、その描写が余りにも緻密で美しく思えた。

そういう日常が芸術に昇華してしまう様な驚きを、まだフジでは体験していない。まあ僕の作風としてはコントラストを強める傾向にあるので、僕の写真からはこういう感覚は無いのだが、いずれにせよこれらは、数値化出来ないマニアックな話。

多くの人にとってどうでも良い、些細な表現を話題にしているに過ぎないのであって、普通は全く問題ないと思う。そもそも相手はクラス最高峰の豊かな階調と表現力を持つLeica M10だ。10万円を切るプライスで、並べて比較に耐える事自体、凄い事だ。小うるさいライカユーザーの批評など無視して良い(笑)

Fujifilm X-T20 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/125, ISO 200) ©2017 Saw Ichiro.

 

メニューの考え方

一番問題なのはフジのメニューシステムに対する考え方だと思う。メニューの階層が多い所では4階層以上だったかな。探せば必ず誰でも見つけられる様、メニューの第一階層に、例外なく全てのプリファレンスを置くべきだ。「例外が無い」事が最重要だ。

Qボタン(Quick menuの略だろう)の存在はまだ分かるが、十字キーを好きな方向に自由に機能を割り当てられるというのも、親切そうで、とても不器用と思う。どれがどれだか訳が分からず、暗記しなければならない事だらけだ。しかも登録はDisp/Backボタンを一秒以上長押し。(笑)論理性を欠いていて、マニュアルを読まなければ絶対に辿り着けない仕組みが散見される。

フジは人間工学、ユーザーインターフェイス作りのエキスパートを米国から呼び寄せて、1から真剣に再考しなければならないと思った。

ちなみにライカM10は、Menuの一階層目がクイックメニューに該当し、他の全てのデジタル領域のプリファレンスは、二階層目のMain Menuに必ずある。だからメニューボタンはボディに一つしか無い。例外が無いので人間の記憶力に頼らずとも、ここを探せば必ず解決する。

Leica M10 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/1.4, 1/60, ISO 800) ©2017 Saw Ichiro.

まとめ

FUJIFILMは、上位のX-Pro2、X-T2と、廉価のX-E3、X-T20に、敢えて画質の差をつけなかった。このポリシーが、僕がこのメーカーを好きになるきっかけだった。誰に対しても画質だけは落すべきでは無い。写真を愛する者として、カメラメーカーとして、当たり前の様でこの英断を下せる企業は少ない。

だからかえって僕は、少し勘違いしていたのかもしれない。上位機種と同じ画質だからと、ハイアマ、プロも満たせるはずと勝手に思い込んだ。

例えば三脚穴が光軸とズレているのは、ツメが甘かったのでは無く、小型化のためにプライオリティを下げたのだろう。そうか、そもそもこのカメラは、三脚に立ててガチで仕事する事を主眼としていないのだ。もっと手軽に、コンデジからのステップアップ機でいて、高画質。ライカと比較していじめても意味が無いし、僕の様なオタクなどは最初から想定外なのだ。

妥協を許さないと肩肘はらずに、妥協する所は器用に妥協しつつ、思いつく限りのアイディアを詰め込む。その意味ではFUJIの大人のビジネス戦略は、100点満点で成功していると思った。

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