2017年11月4日 イチロー

ライカの内蔵露出計


ドイツベルリン。宿泊していたお宅で、ママが僕のライカを見て素敵なコレクションを引っ張り出してきてくれた。Leica M + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/2.4, 1/90, ISO 640) ©2017 Saw Ichiro.

「だってマニュアルだしなあ」とライカに興味はあっても使いこなす自信が持てない人のために、是非ここで紹介してみたいと思っていた。実は、ライカのマニュアル露出は「超」カンタンなのだ。ライカの優れた内蔵露出計がマニュアル操作性を著しく簡単に、便利にしてくれている。


M10のファインダーをiPhoneで撮ってみた。

ファインダーを覗くと、ゴチャゴチャとした文字は一切ない。シンプルなフレームと、その下に▶︎ ● ◀︎の赤いアナログなマークが浮かんでいるだけ。

▶︎ 一段以上、露出アンダー。絞りかシャッタースピードダイヤルを、になるまで右に回す。

▶︎ ● 半段アンダー

適正露出

● ◀︎ 半段オーバー

◀︎ 一段以上オーバー。になるまで左に回す。

(露出計の測光範囲を下回る場合は、警告として点滅する。)

絞りもSSダイヤルも同じ方向性に工夫されているので、好きな方を▶︎ ◀︎の向きに回すだけ。もちろんM10で新設されたISOダイヤルも同じ理論に従っている。つまり、ファインダーから目を離すことなく、f値などの数値を意識する事もなく、極めて直感的に操作出来る。

物凄いシンプルなシステムだが、これ以上に優れた方法が他にあるだろうか。覚えなきゃいけない事は何も無い。一度理解してしまえば小学生でも扱えるカメラなのだ。いや重さが無理かな。
(Leica M6以前は露出計が無いためSSダイヤルの方向性は逆だった。)

ただ、絞りの場合は回し切ると止まるので、それでも適正露出に満たない場合はISOに手を伸ばす事が出来るが、SSダイヤルは無限に回る。当然、気持ちよくクルクルやっていると気づかないうちに1/2sとか1sとかに至って、ノイズリダクション処理が始まり完全にシャッターチャンスをロストする(笑)

それでもここは芸が細かいライカで、ダイヤル最後のAと1/4000sの間はクリックが若干硬くなり、一周して1/4000sに至る事故を防ぐ気配りがなされている。反対回しの場合には、今度は最後のAとB(バルブ)の間で軽いストッパーがかかる。(要は境界点であるAから外に出る時にのみ反発力が増すカラクリ)こんなマニュアルにも書いてない部分にまで、人知れず手間とコストをかけているライカに拍手を送りたい。

その前にB(バルブ)に至ると▶︎ ◀︎マークが消失して気づける様にもなっているので、よほど慌ててない限り、ここを誤って突き進む人はいない。いずれにせよSSダイヤルで露出をコントロールする際には、予め適切なISOを設定しておく事が大切になってくる。

SSダイヤルをA(オート)にすると、▶︎ ◀︎マークがシャッタースピードの数字に変わる。古典的な時限爆弾みたいな赤い数字が、なんとも味わい深い(笑)


表参道の窓。Leica M typ 240 + Leica Summaron 35mm/f3.5 (ƒ/3.5, 1/60, ISO 1600) ©2017 Saw Ichiro.

ライカユーザーは、ライカが簡単だとは普通言わない。何故ならみんながライカは難しいと思ってくれている方が、自分のミスを「ほら、ライカは難しいから!」とカメラのせいに出来る。(笑)

M6以前は内蔵露出計が無いので、ここからは確かに敷居は上がる。(その代わり電池不要!)オールド・ライカファンは皆さん様々な工夫をしているようだ。

アンリ・カルティエ=ブレッソンは構図と瞬間のタイミングのみに集中するために、晴れた日はシャッタースピード1/125s、絞りf8、距離は10feet(5m)に固定していた逸話は有名だ。他にもsunny 16 rule(晴れた日は感度分のF16)などこの手の覚え方は色々ある。

せっかくの明るいレンズをF8まで絞って使う理由は、パンフォーカス気味にしてシャッターチャンスに備えるためと説明されるが、彼がF16では無くF8をスタートポイントにするのには、別の理由があるのかなと思い始めた。


Watercolor – Leica M typ 240 + Leica Summilux-M 1:1.4/50 ASPH. (ƒ/6.8, 1/90, ISO 200) ©2017 Saw Ichiro.

ライカの場合、SSダイヤルを操作するには一旦レリーズから指を離す必要があるため、絞りリングを回す方が速い。しかし開放付近、もしくはf16付近からスタートしてしまうと、片側にしか絞りが回せず、反対方向の修正が求められた際に速写性が失われるのだ。

カルティエブレッソンは、Elmar 5cmを愛用していた。エルマーの開放f値はf3.5。つまり、f8は彼のレンズの丁度真ん中で、オーバー側にもアンダー側にも2段づつマージンを確保できるという訳だ。

本人に確認した訳では無いし、僕が勝手に脳内で考察してるだけだが、ライカのスナップ・シューティングの基本は、手動のシャッタースピード優先という事か。この理屈を現在のズミクロン等で考えるならば、f5.6をスタートポイントとしてもいいかもしれない。


近所の葉っぱ – Leica M typ 240 + Leica Summicron-M 1:2/50 現行 (ƒ/2.0, 1/180, ISO 200) ©2017 Saw Ichiro.

これらはISO100の話で、M10ではそのまま当てはめれば良いがベース感度ISO200のM240、ISO160のM9では、適当に補正して考える必要がある。

僕の場合は昼間は絞り開放、SSはAutoが基本だし、ストリート・スナップはすっかり自信を無くしてしまったので(笑)、あまりこの手の手法は意識してない。それでもお出かけ前にカルティエブレッソンの設定でしまっておけば、いつでも速写スタンバイ完了だ。

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